兄妹と兄弟
士郎は高校一年生。優希は中学二年生だ。
眠れなかったが学校に行く準備をしなければいけない。学生の本分は勉強だから。
学生服に着替えて一通りの朝の日課をこなす。歯を磨いて朝食を取ろうと食堂に行ったなら優希が先にいた。
「お兄ちゃん顔色悪いね」
「お前のせいで眠れなかったんだよ」
「そうなんだ」
心なしか優希が楽しそうに見えた。それを士郎は指摘する。
「お前なんか嬉しそうだな」
「だってお兄ちゃんの頭の中わたしでいっぱいにできたんだから。それは嬉しいもん」
こいつ頭大丈夫か? 今までこんな妹とは知らなかった。
「お兄ちゃん私もう行くよ。ご飯食べたから」
その時の会話はそれで終わった。
士郎も高校に向かうために出かけた。
「……そういう事があってさ」
授業が終わって放課後士郎は友人の古橋拓也に愚痴っていた。
昨日あった事を報告していたのだ。
拓也は驚いたようだった。
「へえ、そんな昼ドラみたいな話本当にあるのか」
と、変な感心をする。
「でも優希さんって会った事あるけどすごくかわいいじゃないか。かわいい女の子に好かれて気持ちよくないのか」
「かわいい? 優希が?」
実の妹だと思っていた優希の顔を客観的に分析した事がないので拓也の言い分が理解できない。
「だって妹だからな。顔は関係ないよ」
「そうか。俺んちは男三人兄弟だから、仲よくなくてさあ。仲がいいお前たちが羨ましいけどな」
「仲がいいのにも限度があるだろ。好きと言われても困るんだよな」
また士郎はため息をついた。もう何度目のため息だろうか。
「でも心配しなくていいよ。優希さんの方から言い寄られてるんだろ」
「ああ」
「じゃあ主導権はお前にあるって事だろ。だから大丈夫だよ」
「そうか。そうだな」
士郎は安堵した。拓也の言う通りかもしれない。よし、家に帰ったら優希にちゃんと断ろう。
もう学校から帰る時間になったので、家に行こう。