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お兄ちゃん好き
リビングのソファーで寝ていた風間士郎は、頬に柔らかい物が触れる感触で目を覚ました。
「何やってんだよお前」
「お、お兄ちゃん起きてたの」
どうやら妹の優希の唇が押し当てられていたらしい。幼い頃はこんな愛情表現は珍しくなかったので士郎は別段どうにも思わなかった。
「もう子供じゃないんだからやめろよなこういう事」
「そうもう子供じゃないよ私は」
優希が士郎の手を取り、自分の胸に触れさせた。
士郎の思考が凍結する。
「何やってんだよ、お前。離せよ」
ふりほどこうとする士郎の手を優希が離さない。
「お兄ちゃん、好きだよ」
士郎の顔が青ざめる。実の兄に告白するなんてお前普通じゃなかったのか?
「やっぱり知らないかお兄ちゃんは」
「知らないって何をだよ」
「私たち血は繋がってないんだよ」
「はあ? 何言ってんだよお前」
そんな事は生まれて初めて聞いた。にわかには信じられなかった。
「本当なんだから。お母さんに聞いてみてよ」
そう言って優希はリビングから出ていった。士郎はソファーの上に座りつくした。