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遠きヒーロー

作者: 猫橋わたる

突然ですが今、地球はピンチです。


謎の異星生命体【トヒノソヨ】が地球を侵略を始めて、世界各地で戦闘が起きています。


各国が精鋭部隊を結成して、トヒノソヨを討伐しています。


アタシの名前は洋子。職業はトヒノソヨ相手の戦隊のイエローを任されています。武器は弓です。


高校時代は、ちょっとだけ元気なタイプで、男女混合素手喧嘩ステゴロ最強がモットーでした。


そんなアタシもおばあちゃんの影響で、子どもの頃から弓道を習っていて、それなりに自慢できる腕前を持っていました。


で、高校卒業後は体育関係の大学に通って、就職先として自衛隊に応募したのですが、高校時代の素行が原因で不合格。


そんな時にトヒノソヨが攻めて来ました。自衛隊の銃火器が通用しない為、ごく少数しか生産できない武器を、対抗する特殊戦隊持たせて戦っています。


で、その戦隊にアタシの弓の腕が買われたという事なのです。


やり甲斐も、使命も、職務の重要性も理解していますが「弓」って援護射撃キャラで、スゴく地味です。


願わくば、私もレッドのように剣で戦ったり、ブルーのように槍で薙ぎ払ったりしたいです。


でも「弓」なので、今日も戦うみんなの後ろからチピチピとトヒノソヨを射っています。


そして地球同様にアタシも、今ピンチです。


“くっくっく…戦隊は集まって戦うから強いのであって、ひとりひとり撃破すれば大したコトないのだよ。”


まさか、銭湯帰りを敵の大幹部と兵隊たちに狙われるとは思ってもいなかった…


とりあえず、大切にしているケヨロンの洗面器とお風呂セットを脇に置いて…『変身!!』


「天をつんざく金色の稲妻!テンペストイエロー!」


まずは変身して名乗り、続いて必殺技!


「くらえ!ライデンアロー!!」


大幹部はシールドで防御しているが、兵隊達には効いているようで、約半分の敵を倒した。


…が、多勢に無勢。


やられた兵隊達を盾にして、距離を詰めてくる兵士達に捕まり、メッタ打ちにされる。


変身が解けて、ボロボロになって膝をつくアタシに大幹部が近寄り、頭を踏んづけて口を開く


“あははは!!狙い通り過ぎて呆れてしまうよ!”


更に頭をグリグリ踏みしだきながら


“誰を最初に潰すかと考えた時、真っ先にお前が浮かんだよ!”


“仲間の後ろから弓を射る事しか出来ない腰抜けだからね!”


“想像通りのザコっぷりだったよ!!”


と、満面の笑みで踏みつけながら言われたので


…キレてしまいました。


無言で、踏みつける足の足首を掴み、掴んだ逆の手で股間に目掛けてアッパーカットをお見舞いした。


“!?ゔんがぁ…”


大幹部の口から、声にならない呻き声が漏れる。


前に崩れ落ちる大幹部のコメカミに右フックを入れる。


その後アタシは立ち上がり、大幹部の顔面にストンピングとして2〜3回蹴りを入れたら、大幹部は動かなくなった。


突然の出来事にひるむ戦闘員たちに、さらに無言で襲いかかり飛び蹴り・金的・壁への顔面叩きつけetc…


戦闘には見事勝利した。


…変身が解けた姿で


…街場の喧嘩殺法で


戦隊の中でのジョークで


「銃火器のようなスピードや火力のあるものは『武器』として判定されてヤツらのシールドで弾かれるらしい。


で、素手の攻撃は『コミュニケーション』として認識されて、シールドが展開されないらしい。


だから、トレンディドラマでよくある『別れ話のビンタ』は成立するらしいよ!」などと与太話をしていたが、あながちハズレでないらしい。


アタシは大きく息を吸い込み


「いきなり待ち伏せして、大勢で襲ってきて、誰が雑魚だって!?」


「変身さえしていなければ、あんた達なんてアタシ一人で全員血の海に沈めてやるよ!」


「ざまあみろっってんだぁ!!!」


と高校時代を思い出して、気持ち良く一気にまくしたてた。


そこに、


『………ぶ、無事で安心したよ。』と、


同じ戦隊の仲間たちが、駆けつけてくれていて、死屍累々のトヒノソヨ達を前にドン引きしていた。


どうやら、まくしたてる迄の一連の出来事をバッチリ見られたようだ。


「あ…ありがとう」


気まずさが最高潮である。


「じゃ…じゃあ、湯冷めしちゃうから帰るね。ありがとう。バイバイ」


と伝えてケヨロン桶の入浴セットを回収して、そそくさと家路についた。


その晩は人生で一番悩んで、考えて、眠れない。長い夜でした。


一晩考えた結果「やっぱり、あの姿を見られたのはマズいよね。除隊を申し出よう…」


と、考えて出勤した朝イチで司令に除隊を申し出だ。


「突然のお話で申し訳ございません。一身上の都合で除隊させて頂きたいのですが…」


それを受けて司令は


『もしかして、昨日の件かな?事情は聞いているよ』


「!?…で、あれば察して頂けるかと…」


『私や組織としては、全く問題とは思わないのだが』


「すみません。私の気持ちの問題と、仲間に気を遣わせてしまうのが想像できるので、やはり除隊させて頂きたいです。」


『そうか。ではイエローは別の人員を補充するように手配するよ。』


「ありがとうございます。」


『で、ものは相談なのだか…』


「??」


ーーーしばらくの時間が過ぎたある日。


“新しいメンバーとの連携が全然取れていないね!こちらとしては有難い限りだよ!あの前のイエローはどうしたんだい?クビになったのかい!!”


大幹部は復帰して、相変わらず物凄い軍勢の人海戦術で戦隊を追い詰めていた。


『く!貴様の奇襲が原因だろう!許さんぞ!』


レッドが大幹部の罵倒に応酬する。


“何にしても、結果として脱落する弱者が悪いんだよ!!今からお前らにも、いやってほど教え…ぐでべっ!!”


大幹部の後ろから、股間を思いっきり蹴り上げる人影が語る。


「戦場でベラベラ喋っているから悪いんだよ」


「悪をすり潰す白金の拳!」


「シルバーフィスト!!推して参る!」


「趣味は仕事後のお風呂!これから宜しくね!」

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