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第3章 帝国議会

第三章 帝国議会

 

第三十三条 帝国議会ハ貴族院衆議院ノ両院ヲ以テ成立ス

 

第三十四条 貴族院ハ貴族院令ノ定ムル所ニ依リ皇族華族及勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス

 

第三十五条 衆議院ハ選挙法ノ定ムル所ニ依リ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス

 

第三十六条 何人モ同時ニ両議院ノ議員タルコトヲ得ス

 

第三十七条 凡テ法律ハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要ス

 

第三十八条 両議院ハ政府ノ提出スル法律案ヲ議決シ及各々法律案ヲ提出スルコトヲ得

 

第三十九条 両議院ノ一ニ於テ否決シタル法律案ハ同会期中ニ於テ再ヒ提出スルコトヲ得ス

 

第四十条 両議院ハ法律又ハ其ノ他ノ事件ニ付各々其ノ意見ヲ政府ニ建議スルコトヲ得但シ其ノ採納ヲ得サルモノハ同会期中ニ於テ再ヒ建議スルコトヲ得ス

 

第四十一条 帝国議会ハ毎年之ヲ召集ス

 

第四十二条 帝国議会ハ3箇月ヲ以テ会期トス必要アル場合ニ於テハ勅命ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ

 

第四十三条 臨時緊急ノ必要アル場合ニ於テ常会ノ外臨時会ヲ召集スヘシ

2 臨時会ノ会期ヲ定ムルハ勅命ニ依ル

 

第四十四条 帝国議会ノ開会閉会会期ノ延長及停会ハ両院同時ニ之ヲ行フヘシ

2 衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ貴族院ハ同時ニ停会セラルヘシ

 

第四十五条 衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ勅命ヲ以テ新ニ議員ヲ選挙セシメ解散ノ日ヨリ5箇月以内ニ之ヲ召集スヘシ

 

第四十六条 両議院ハ各々其ノ総議員3分ノ1以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開キ議決ヲ為スコトヲ得ス

 

第四十七条 両議院ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル

 

第四十八条 両議院ノ会議ハ公開ス但シ政府ノ要求又ハ其ノ院ノ決議ニ依リ秘密会ト為スコトヲ得

 

第四十九条 両議院ハ各々天皇ニ上奏スルコトヲ得

 

第五十条 両議院ハ臣民ヨリ呈出スル請願書ヲ受クルコトヲ得

 

第五十一条 両議院ハ此ノ憲法及議院法ニ掲クルモノヽ外内部ノ整理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得

 

第五十二条 両議院ノ議員ハ議院ニ於テ発言シタル意見及表決ニ付院外ニ於テ責ヲ負フコトナシ但シ議員自ラ其ノ言論ヲ演説刊行筆記又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ公布シタルトキハ一般ノ法律ニ依リ処分セラルヘシ

 

第五十三条 両議院ノ議員ハ現行犯罪又ハ内乱外患ニ関ル罪ヲ除ク外会期中其ノ院ノ許諾ナクシテ逮捕セラルヽコトナシ

 

第五十四条 国務大臣及政府委員ハ何時タリトモ各議院ニ出席シ及発言スルコトヲ得



伊野上に桃子がかき氷のお代わりを渡した時、伊野上が桃子に問題を出した。

「さて、問題だ。国政における議会の役割は?」

「そんなこと聞かれてもわかるわけないじゃない。専門的な教育を受けた人たちでも分からないような質問じゃない」

「答えはその通りなんだ。いまだに意見が分かれているものの一つなんだよ」

桃子が少し怒り気味になっている横で、伊野上が軽い感覚で答えた。

「で、今回はその議会についてなの?」

「そういうこと。大日本帝国憲法第3章に書かれているのは、当時帝国議会と呼ばれた国会についてなんだ」

そう言ってから、いつものように伊野上は始めた。

「第33条

帝国議会ハ貴族院衆議院ノ両院ヲもっテ成立ス

第34条

貴族院ハ貴族院令ノ定ムル所ニ依リ皇族こうぞく華族かぞくおよび勅任ちょくにんセラレタル議員ヲもっテ組織ス

第35条

衆議院ハ選挙法ノ定ムル所ニ依リ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス

第36条

何人なんぴとモ同時ニ両議院ノ議員タルコトヲ得ス

第37条

すべてテ法律ハ帝国議会ノ協賛きょうさんルヲ要ス

第38条

両議院ハ政府ノ提出スル法律案ヲ議決シ及各々法律案ヲ提出スルコトヲ得

第39条

両議院ノいつおいテ否決シタル法律案ハ同会期中ニおいテ再ヒ提出スルコトヲ

第40条

両議院ハ法律又ハノ他ノ事件ニ付各々(おのおの)ノ意見ヲ政府ニ建議けんぎスルコトヲ ただ採納さいのうサルモノハ同会期中ニ於テふたたびヒ建議スルコトヲ

第41条

帝国議会ハ毎年之ヲ召集ス

第42条

帝国議会ハ3箇月ヲ以テ会期トス必要アル場合ニ於テハ勅命ちょくめいもっこれヲ延長スルコトアルヘシ

第43条

① 臨時緊急ノ必要アル場合ニ於テ常会じょうかいノ外臨時会ヲ召集スヘシ

② 臨時会ノ会期ヲ定ムルハ勅命ちょくめい

第44条

① 帝国議会ノ開会閉会会期ノ延長及停会ハ両院同時ニ之ヲ行フヘシ

② 衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ貴族院ハ同時ニ停会セラルヘシ

第45条

衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ勅命ちょくめいヲ以テ新ニ議員ヲ選挙セシメ解散ノ日ヨリ5箇月以内ニ之ヲ召集スヘシ

第46条

両議院ハ各々其ノ総議員3分ノ1以上出席スルニあらサレハ議事ヲ開キ議決ヲ為スコトヲ

第47条

両議院ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ

第48条

両議院ノ会議ハ公開ス ただシ政府ノ要求又ハノ院ノ決議ニリ秘密会トスコトヲ

第49条

両議院ハ各々(おのおの)天皇ニ上奏じょうそうスルコトヲ

第50条

両議院ハ臣民しんみんヨリ呈出ていしゅつスル請願書ヲ受クルコトヲ

第51条

両議院ハノ憲法及議院法ニかかクルモノヽ外内部ノ整理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ

第52条

両議院ノ議員ハ議院ニおいテ発言シタル意見及表決ニつき院外ニおいせめヲ負フコトナシ ただシ議員みずかラ其ノ言論ヲ演説刊行かんこう筆記又ハノ他ノ方法ヲもっテ公布シタルトキハ一般ノ法律ニリ処分セラルヘシ

第53条

両議院ノ議員ハ現行犯罪又ハ内乱ないらん外患がいかんかかル罪ヲ除クほか会期中其ノ院ノ許諾きょだくナクシテ逮捕セラルヽコトナシ

第54条

国務大臣及政府委員ハ何時なんどきタリトモ各議院ニ出席シ及発言スルコトヲ得」

桃子は、何となく意味をつかん手でいるところもあるが、分からないところもあるようだった。

「次もいつも通りに。

第三十三条、帝国議会は貴族院と衆議院から成る。

第三十四条、貴族院は、貴族院令に定められている通りに皇族、華族や勅任される議員によって組織される。

第三十五条、衆議院は、選挙法によって決められている方法で当選した議員によって組織される。

第三十六条、誰であろうと同時に両院の議員になることはできない。

第三十七条、全ての法律は帝国議会の協賛を必要とする。

第三十八条、両議院は政府が提出した法律案を議決したり両議院の議員が法律案を提出することができる。

第三十九条、どちらかの議院で否決された法律案については、同じ会期中に提出することはできない。

第四十条、両議院は法律案やさまざまな事案に関して、その意見を政府に建議することができる。ただし、政府の採納が得られなかったものについては、同じ会期中に再び建議することができない。

第四十一条、帝国議会は毎年召集する。

第四十二条、帝国議会は3カ月を会期とする。必要によっては勅命によって会期を延長することができる。

第四十三条、臨時緊急の必要がある場合は、常会以外に臨時会を召集する。

 2、臨時会の会期は勅命に従うものとする。

第四十四条、帝国議会の開会、閉会、会期の延長及び停会は両議院同時に行う。

 2、衆議院の解散が命じられた時は貴族院も同時に停会する。

第四十五条、衆議院の解散を命じられた時は勅命で新しい議員を選挙し、解散した日から5カ月以内に召集する。

第四十六条、両議院は3分の1以上の出席者がいなければ、議事を開き議決することができない。

第四十七条、両議院の議事は過半数とする。もしも可否同数となった場合は議長が決する。

第四十八条、両議院の会議は公開するものとする。ただし、政府かそれぞれの議院の決議によって秘密会とすることができる。

第四十九条、両議院はそれぞれ天皇に上奏することができる。

第五十条、両議院は臣民から提出された請願書を受け取ることができる。

第五十一条、両議院はこの憲法と議院法に掲げてあるもの以外の院内の整理で必要な諸規則を決めることができる。

第五十二条、両議院の議員は、議院で行った発言について意見や評決について院外で責任を問われることはない。ただし、議員自身が院外で言論を演説、刊行、筆記やその他の方法で公にした時は、一般の法律によって処分される。

第五十三条、両議院の議員は現行犯罪か内乱罪、外患罪以外に会期中に議員が所属する議院の許可がない場合は逮捕することができない。

第五十四条、国務大臣と政府委員はいつでもそれぞれの議院へ出席し、発言することができる」

「現行犯罪っていうのは分かるけど、内乱罪、外患罪って?」

「内乱罪は、今の刑法では『国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法に定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした』人たちに対する罪としているよ。詳しくは刑法77条~80条を参考してね。で、外患罪は、『外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた』人に適応するということになってるよ。正確には外患誘致罪っていうんだけどね。第81条~89条に詳しく載ってるよ」

[作者注:外患罪に関する章において、2009年12月31日現在、第89条は削除されています]

桃子はふんふんとうなづきながらメモを取っていた。

「皇族は天皇ご一家のことで、華族は貴族のことだったよね」

「そういうニュアンスでもかまわないと思うね」

「請願書って?」

「公的な機関に対して要望を言う時に提出する書類のことだよ。請願以外にも嘆願や陳情という方法があるよ」

「上奏は?」

「天皇陛下に意見や事情を申し上げることを上奏っていうんだ。逆に陛下が意見を仰ることを"お言葉"っていったりするね」

「政府委員って聞きなれないんだけど……」

「今で言う『政府参考人』のことだね。明治当時の政府委員っていうのは、政府から指名されて議会で行政分野の発表をする人のことだよ」

「んー…聞きたいのはこれだけかな?」

「じゃ、次はこれの後かな?」

伊野上は半分ほど残っているかき氷の容器を桃子に見せながら言った。

「そうだね」

すでに溶けかかっているから、すぐに食べなければならなかった。

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