第2章 臣民権利義務
第二章 臣民権利義務
第十八条 日本臣民タルノ要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第十九条 日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ応シ均ク文武官ニ任セラレ及其ノ他ノ公務ニ就クコトヲ得
第二十条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ兵役ノ義務ヲ有ス
第二十一条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ納税ノ義務ヲ有ス
第二十二条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス
第二十三条 日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮捕監禁審問処罰ヲ受クルコトナシ
第二十四条 日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権ヲ奪ハルヽコトナシ
第二十五条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外其ノ許諾ナクシテ住所ニ侵入セラレ及捜索セラルヽコトナシ
第二十六条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルヽコトナシ
第二十七条 日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルヽコトナシ
2 公益ノ為必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第二十八条 日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
第二十九条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス
第三十条 日本臣民ハ相当ノ敬礼ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ従ヒ請願ヲ為スコトヲ得
第三十一条 本章ニ掲ケタル条規ハ戦時又ハ国家事変ノ場合ニ於テ天皇大権ノ施行ヲ妨クルコトナシ
第三十二条 本章ニ掲ケタル条規ハ陸海軍ノ法令又ハ紀律ニ牴触セサルモノニ限リ軍人ニ準行ス
かき氷と横に置き、たまに食べながら伊野上と桃子は第2章へと入った。
「第2章は臣民権利義務だね。大日本帝国憲法下では国民のことを臣民と呼んでいたんだ。彼らに対する権利や義務について書かれてるよ」
伊野上が大まかな説明を入れる。
「早速行ってみよう!まずは読み方から」
そんなことを気にせずに桃子が元気よく言った。
「第18条
日本臣民タルノ要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第19条
日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ応シ均ク文武官ニ任セラレ及其ノ他ノ公務ニ就クコトヲ得
第20条
日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ兵役ノ義務ヲ有ス
第21条
日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ納税ノ義務ヲ有ス
第22条
日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス
第23条
日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮捕監禁審問処罰ヲ受クルコトナシ
第24条
日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権ヲ奪ハルルコトナシ
第25条
日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外其ノ許諾ナクシテ住所ニ侵入セラレ及捜索セラルルコトナシ
第26条
日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルルコトナシ
第27条
① 日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルルコトナシ
② 公益ノ為必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第28条
日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
第29条
日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス
第30条
日本臣民ハ相当ノ敬礼ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ従ヒ請願ヲ為スコトヲ得
第31条
本章ニ掲ケタル条規ハ戦時又ハ国家事変ノ場合ニ於テ天皇大権ノ施行ヲ妨クルコトナシ
第32条
本章ニ掲ケタル条規ハ陸海軍ノ法令又ハ紀律ニ牴触セサルモノニ限リ軍人ニ準行ス」
伊野上が、かき氷を一口食べてさらに続ける。
「で、これが現代語訳。
第十八条、日本臣民であるための要件は法律に定めるところによるものとする。
第十九条、日本臣民は法律や命令で定められている通りの資格に応じて、均等に文武官に任命されたり他の公務員として就職することができる。
第二十条、日本臣民は、法律で決められている通りに兵役に就く義務がある。
第二十一条、日本臣民は法律で決められている通りに納税する義務がある。
第二十二条、日本臣民は法律の範囲内に限り居住、移転の自由がある。
第二十三条、日本臣民は法律に書かれていなければ逮捕、監禁、審問や処罰を受けることはない。
第二十四条、日本臣民は法律に決められている裁判官による裁判を受ける権利を奪われることはない。
第二十五条、日本臣民は法律で定められている以外に、住人の許諾を得ずに住居へ侵入され、捜索されることはない。
第二十六条、日本臣民は法律で定められている場合を除いて信書の秘密を侵されることはない。
第二十七条、日本臣民は各個の所有権が侵されることはない。
2、公益のために必要な処分については法律定めるように行う。
第二十八条、日本臣民は安寧秩序を妨げず、臣民の義務にそむかない限り信教の自由がある。
第二十九条、日本臣民は法律の範囲内のみ言論、著作、印行、集会や結社の自由がある。
第三十条、日本臣民は一般的に敬い礼を守り、別に定める規定に従って請願することができる。
第三十一条、本章に書かれている条文については、戦時や国家事変の場合の時でも天皇大権を妨げることはない。
第三十二条、本章に書かれている条文については、陸海軍に関する法令や紀律に抵触することがない限り、軍人に対しても準行する」
「少し聞いてもいいよね」
「もちろん」
桃子は伊野上に、一気に聞いた。
「審問、信書、印行、抵触、紀律、準行ってなに?紀律は規律っていうことだったらアレだけど……」
「紀律は風紀の規律っていう感じだね。規律が団体などの規則だっていうのに対して、紀律は風紀の規則だと思えばいいよ。じゃあ、後はいつも通り順々に答えて行くね。審問は事情などを詳しく聞いたりすることのことだよ。簡単に言えば裁判と思えばいいね。信書は手紙のこと、印行は印刷して世の中に出すこと。抵触は規則などに違反することで、準行は法律や前例などに従うっていうことだね」
「へぇ……」
桃子は、口から空気が漏れるような音を発しながら、そのすべてをメモしていた。
「これで第2章まで終わりっていうことで」
「第3章は…」
「とりあえず、かき氷のお代わりをもらっていいかな?」
空になった容器を桃子に渡しながら、伊野上は聞いた。
「分かった、じゃあその後で」
桃子は立ち上がり、再び冷凍庫へ向かった。