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第1章 天皇

第一章 天皇


第一条 大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス


第二条 皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ継承ス


第三条 天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス


第四条 天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ


第五条 天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ


第六条 天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス


第七条 天皇ハ帝国議会ヲ召集シ其ノ開会閉会停会及衆議院ノ解散ヲ命ス


第八条 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ由リ帝国議会閉会ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ発ス

2 此ノ勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スヘシ若議会ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ


第九条 天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ公共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ増進スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ変更スルコトヲ得ス


第十条 天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ条項ニ依ル


第十一条 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス


第十二条 天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム


第十三条 天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス


第十四条 天皇ハ戒厳ヲ宣告ス

2 戒厳ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム


第十五条 天皇ハ爵位勲章及其ノ他ノ栄典ヲ授与ス


第十六条 天皇ハ大赦特赦減刑及復権ヲ命ス


第十七条 摂政ヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所ニ依ル

2 摂政ハ天皇ノ名ニ於テ大権ヲ行フ



翌日、夏になると動くのもおっくうになるが、起きるのが太陽に合わせて早くなる人もいる。

伊野上がそんな人の一人だった。

「ももこー!起きたかー!」

家の外で誰もいないことを知っているからこそ、大声をあげることができた。

「起きたよ…その声でね」

玄関にパジャマのままで、桃子は出てきた。

「着替えてる間に中に入ってね」

ふらふらとしている桃子の後ろを、伊野上はついて彼女の家の中に入った。


顔を洗って着替え終わった桃子は、準備が終わった伊野上の横に座った。

「第1章、からだったね」

桃子が伊野上に聞いたが、パソコン画面にはすでに条文が書いてあった。

「読みはいるかな?」

「念のためね。私が読めないモノだけでいいや」

「第1条

大日本帝国ハ万世一系ばんせいいっけいノ天皇これ統治とうち

第2条

皇位こうい皇室典範こうしつてんぱんノ定ムル所ニ依リ皇男子孫こうだんしそん之ヲ継承けいしょう

第3条

天皇ハ神聖しんせいニシテおかスヘカラス

第4条

天皇ハ国ノ元首げんしゅニシテ統治権とうちけん総攬そうらんこのノ憲法ノ条規じょうきこれヲ行フ

第5条

天皇ハ帝国議会ノ協賛きょうさんもってテ立法権ヲ行フ

第6条

天皇ハ法律ヲ裁可さいかその公布こうふおよび執行しっこうヲ命ス

第7条

天皇ハ帝国議会ヲ召集シその開会かいかい閉会へいかい停会ていかい衆議院しゅうぎん解散かいさんヲ命ス

第8条

① 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シまたハ其ノ災厄さいやくヲ避クルため緊急ノ必要ニリ帝国議会閉会ノ場合ニおいテ法律ニ代ルヘキ勅令ちょくれいヲ発ス

② ノ勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スヘシもし議会ニ於テ承諾しょうだくセサルトキハ政府ハ将来ニむかっテ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ

第9条

天皇ハ法律ヲ執行しっこうスル為ニ又ハ公共ノ安寧あんねい秩序ちつじょヲ保持シ及臣民しんみんノ幸福ヲ増進スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム ただシ命令ヲテ法律ヲ変更スルコトヲ

第10条

天皇ハ行政各部ぎょうせいかくぶ官制かんせい文武官ぶんぶかん俸給ほうきゅうヲ定メ及文武官ぶんぶかん任免にんめんス ただノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲかかケタルモノハ各々(おのおの)ノ条項ニ依ル

第11条

天皇ハ陸海軍りくかいぐん統帥とうすい

第12条

天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額じょうびへいがくヲ定ム

第13条

天皇ハたたかいせんシ和ヲこうシ及諸般しょはんノ条約ヲ締結ていけつ

第14条

① 天皇ハ戒厳かいげんヲ宣告ス

② 戒厳かいげんノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

第15条

天皇ハ爵位しゃくい勲章くんしょう及其ノ他ノ栄典えいてん授与じゅよ

第16条

天皇ハ大赦たいしゃ特赦とくしゃ減刑げんけい復権ふっけんヲ命ス

第17条

① 摂政せっしょうヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所ニ依ル

② 摂政ハ天皇ノ名ニ於テ大権たいけんヲ行フ」

「古語調だと、やっぱり意味が分かりづらいね…」

桃子が画面を見回しながら言った。

「意味は今から取っていこう。日本国憲法と同じように進んでいくよ。質問は最後にまとめてっていうことで」

「分かった」

伊野上は桃子に確認を取ってから進めた。

「第一条、大日本帝国は万世一系の天皇によって統治される。

第二条、皇位は皇室典範で決められている通りの順によって皇室の男の子孫によって継承される。

第三条、天皇は神聖にして侵してはならない。

第四条、天皇は大日本帝国の元首であり、統治権を総攬し、この憲法に決められている条文に従って統治権を行使する。

第五条、天皇は帝国議会の協賛を受け、立法権を行使する。

第六条、天皇は法律を裁可し、法律を公布し、執行を命ずる。

第七条、天皇は帝国議会を召集し、開会、閉会、停会及び衆議院の解散を命ずる。

第八条、天皇は公共の安全を保持し、公共の災厄を避けるために緊急の必要が認められ帝国議会が閉会している時のみ、法律に代わる緊急勅令を布告する。

 2、前項の勅令は布告直後の帝国議会の会期において、帝国議会に緊急勅令を法律案として提出しなければならない。もしも議会が前段のことを承諾しなければ、政府は緊急勅令が以降一切の効力を持たないことを布告しなければならない。

第九条、天皇は法律を執行するため、公共の安寧秩序を守るため、臣民の幸福を増進させるために必要だと思われる命令を発し、発せさせることができる。ただし、命令で法律を変えることはできない。

第十条、天皇は行政各部の官制、文武官の給料について定め、文武官を任免する。ただし、この憲法や法律で別個に特例として定められているものは、それらの定められている通りに行うものとする。

第十一条、天皇は陸海軍を統帥する。

第十二条、天皇は陸海軍の編制や常備軍の兵力を決める。

第十三条、天皇は宣戦布告や講和を行い、諸般の条約を締結する。

第十四条、天皇は戒厳を宣告する。

 2、戒厳を行うための要件や効力は法律に定める。

第十五条、天皇は爵位、勲章やその他の栄典を授与する。

第十六条、天皇は大赦、特赦、減刑や復権を命することができる。

第十七条、摂政を置く場合は皇室典範に定められている方法で行う。

 2、摂政は天皇の名で大権を行使する」

伊野上は桃子を見た。

「えっと…」

「聞いてもいい?」

「どうぞ。単語の意味がわからないとかだったら」

「皇室典範って、今もなかったっけ?」

「あるよ」

桃子が聞いてきたことに、すぐに答える。

「さすが桃子だね。皇室典範っていうのは、明治22年2月11日に裁定された通称『旧皇室典範』と、昭和22年1月16日法律第3号として制定された皇室典範の2つがあるんだ。この憲法がさしている皇室典範は前者の方で、制定された時点で大日本帝国憲法と同格とみなされたんだ。皇室の家憲だという人もいるね」

「裁定?」

「善いか悪いかを判断して、決定すること。今では年金の問題で出てくることもあるね」

伊野上がネットで調べながら、よどみなく桃子に言う。

「さすが、私も学校でのことはよく知ってるけど、専門性はないからね」

「俺も専門的ではないさ」

そういいながら、目で他に質問があるかを聴いているようだった。

「神聖っていうのは、神様だったっていう話そのもののこと?」

「そういうことでもあるけど、他の意味合いも込められてるんだ。天地がわかれて以来、ずっと一つの系統で続いてきた天皇という君主は、法律を敬重するという義務がある。これは立憲君主制を敷くためには必要不可欠なことなんだけど、一方で法律によって縛ることができないという考えも同時に出てくる。責任追及は、法律によって君主に対して行うことができないっていうことだね。それらをひっくるめて神聖っていう言葉で表してるって考えたらいいと思うよ」

「…余計ややこしいけど、つまりは、君主たる天皇は法律を敬う必要があるけど、その法律によっては責任を負うことはないっていうこと?」

「まあ、そう言った感じ。詳しくは自分で調べた方がいいと思うな。学者によっても色々な意見があるところだし」

「分かった」

桃子は、自分のメモ帳に簡単にメモをしてから、続きを聞いた。

「それで……」

「まとめて質問した方が便利かもね」

「じゃ、まとめて。統治権、総攬、帝国議会、協賛、勅令、官制、文武官、戒厳、爵位、勲章、大赦、特赦、減刑、復権ぐらいかな?」

「順番にこたえるよ。統治権はその国を統治する権限のことで、総攬というのが自分の意のままに操るっていう感じの意味。合わせて、自分が国を統治するっていう感覚になるね。統治は国家を治めることだから、天皇が国家を治めるっていう意味だね。帝国議会は後で出てくるからそこで詳しく。協賛は同意するっていうこと。勅令は議会を通さない法律のこと。大権に通じるものが多いね。官制は行政組織のこと、文武官は文民と武官、つまり一般人と軍人の意味になるかな。戒厳は非常事態の際、特定の地域に対して立法・行政・司法の全権又は一部の権限を軍に移管すること。爵位は貴族の身分、勲章は勲功・功労に対して国から与えられる記章。大赦・特赦・減刑・復権は、『恩赦法』という法律に決められていることで、裁判で有罪とされた者たちに対して、大赦は判決をなかったことにし公訴中の人は免訴とする。特赦は判決をなかったことにする。減刑は判決で執行される刑を減らす。復権は資格喪失や資格停止された者達に対して、それらを取り消すということだね」

伊野上が読み上げて行く横で、桃子がものすごい勢いでメモを取る。

「これで第1章は終わりだね」

メモを取り終わった桃子が顔をあげて伊野上に聞く。

「一気に第2章に行く?」

「その前に、喉渇いちゃったからかき氷食べる?」

伊野上に答えを聞く前に、すぐに立ち上がって冷凍庫へ向かった。

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