7.聖女は襲われている少女に遭遇する
「密猟者ですか」
「はい、女神様」
「女神はやめてください!せめて聖女でお願いします」
私は村人にお願いしながら、アフタヌーンティーをすすりながら頭を巡らせた。
とりあえず結界をカーバンクルちゃんに張ってもらったので、当面は大丈夫。
ただ、原因を特定して、それを解決しなければ、根本的な治療とはならない。
病魔は撲滅してなんぼである。
「密猟者が頻繁に出るようになり、野生動物が随分と乱獲されました。ただ、それと今回の病の蔓延が関係あるとは思えないのですが……」
いま行っているのは、漏魔病の原因を探るための聞き込み調査だ。
すると、どうやら1か月ほど前から密猟者が出現するようになったらしい。
確かに、病気とは関係なさそうだ。ただ、病気の蔓延の時期と奇妙に一致する。
「では調査に行きますか」
「し、しかし森の中は危険ですよ!? おやめになった方が……」
「虎穴に入らずんば虎子を得ずですから」
「な、ならば我々もお供します!!」
複数の村人たちから声が上がるが、私は首を横に振る。
「結界の外に出ると、また病気が再発するかもしれません。ここは私一人で行こうかと思います」
そう言って微笑む。
「し、しかし……」
まだ心配そうな村人たちに、私はウインクをしながら、
「それに、私、護身術くらいなら使えますので」
そう言って微笑んだのであった。
「さてさて、森に来たのは良いものの、やっぱり聖衣では歩きづらいですね」
雑草をかきわけ、木々をくぐりぬけて奥地へ進む。
と、その時だ。
『ガサガサガサガサ!!!』
茂みの奥で、ひときわ大きな物音が鳴ったのが聞こえるとともに、
「くそ、野蛮な人間どもめ……。せめて静かな死を迎えることすら許さぬとは」
「げへへへ。密猟目的だったが、なぜか知らんがこんな上玉がいるんだ。この1か月逃げ回られたが、とうとう捕まえたぜえ」
そこには、剣や弓で武装した10数人はいる男達が、一人のボロボロの憔悴しきった少女を追い詰めている光景があった。
「しかも種族は魔族かなんかか? 魔大陸から出てこねえ奴らがこんなところにいるとは運がいいぜ! 高値で売れる!!」
「違いねえ!!」
「ひゃーっはっはっは!!」
男たちはそう言って、少女に近づくと、
「くっ、この先代××の儂ともあろう者が……」
よく聞こえないが、
「よし、痛めつけろ! 最悪死ななけりゃ売りものになる!!」
とりあえず---
「けが人をいたぶるとは、何たることですかー!!!!!」
「ぐはあああああああああああああああ!?!??」
私の全力疾走からのドロップキックが、今まさにとびかかろうとしていた密猟者の一人の頭を吹っ飛ばした。
そして、短剣を取り出して、呆気に取られている密猟者さん達に対して言う。
「度し難い! 人を傷つけるなど理解できません! そんな人達はこのシスター・セラがお仕置きをして差し上げましょう!!」
「な、なんだお前は!?」
「お、女だぁ!? なんでこんな所に!?」
「は、ははは! だが獲物が増えたと思えばいいだけだ。そこの女と一緒に売りさばいてやる。どっちにしろ、顔を見られたからには、このまんま帰す訳にはいかねえからなあ」
密猟者さんたちは好き勝手言う。
でも、私は言った。
「それはこちらのセリフです。腐っても平民から宮廷聖女にまで上り詰めた者、癒しだけで生き残れるほど甘いものではなかったことを教えてあげましょう」