60.私が凄い訳ではないと思います
オーク一体を、彼らが挑発した通り、パンチ一発で塵へと還したリリちゃんは、
「どうじゃ、セラの力は。我がパーティーのリーダーは凄いじゃろう」
と言ってくれた。
……が、
「いえ、リリちゃんの魔力を満タンにしただけなんですが」
と、正直に申し出る。
別に、リリちゃんの今の暴力的な攻撃力を導いた訳ではないのだ。
しかし、
「いや、それって凄いから! 儂、元魔王じゃから!」
「そうですよ! 師匠以外、誰もそんなことできませんってば!」
うーん、そうかなぁ。
私は首を傾げた。
そんな実感はないのだ。
「大結界の魔力を満たしていた時も、別に何も言われませんでしたけど……」
今、リリちゃんに譲渡した魔力はそのほんの数十倍程度のものである。
「お、おい! ふかしてんじゃねえぞ!!」
と、なぜかオークさんが突っかかってきた。
「あの大結界を! 魔王様が全力を出しても穴一つ開けられなかったっていう、あの大結界が、お前一人で張られていただと!?」
「し、信じられるか! そんな話!」
「まぁ、実際私一人の力じゃありませんよ」
私は淡々と言う。
その言葉にオークは少しホッとしたような気配を示す、が。
「魔力を補充した後に、魔力不足になるケースがなきにしもあらずです。なので、何かあった時のために待機する聖女は常にいましたから。ね? ちゃんとみんなで大結界を維持していたでしょう?」
「いや~、それって」
「逆に、やっぱり師匠だけの力なんじゃ……」
「違いますってば~」
誤解は解けないようだ。
この二人は善人なので、私を買いかぶる癖があるので少し戸惑ってしまう。ただ、認めてもらること自体は嬉しいのだが。
それはともかく、
「さあ、まだやりますか? オークどもよ。儂が全員塵に返してやろうか?」
その言葉に、オークの一人は悔しそうにしながらも、私たちを見回す。そして、
「そこのエルフの女ぁ! そいつと勝負させろ! サシの勝負だ! そこの自分が魔王とかほざく訳の分からねえ奴は後回しにしておいてやる!!」
そんな挑発に乗る必要は全然ない。
でも、
「では、師匠。特訓していたアレ。お願いできますか?」
ミューズさんはやる気満々で前に出た。
「命大事にですよ。ミューズさん。それに私を買いかぶりですって。大した支援魔法は出来ませんよ?」
「了解です、師匠!!」
聞いてないらしい。
「まぁ、いざとなったらリリちゃんがフォローしてくれるでしょう」
私はそう言いつつも、詠唱を開始する。
ミューズさんと、オークとの戦いの火蓋が切って落とされる。
「ま、フォローが必要ならしてやるわい。必要なら、な」
そんなリリちゃんの呟きとともに。
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