57.大したことない私の魔法
「とっても良い方でしたね。公爵様」
私がそう言うと、リリちゃんは不機嫌そうに言った。
「奴とは二人きりで会うの禁止な」
「え!? ど、どうしてですか?」
というか、
「そもそもリリちゃんが推薦先に選んでくれた方だから、信頼出来る方のはずではないのですか?」
「うっさいわい。ニブチン。だめっつーたらダメなのじゃ! なおミューズも同意見なのじゃ。のう?」
「はい」
「ええー!? どうしてなんですかー!?」
「で、なーんで儂ら薬草採取なんかしとるんじゃ? いや、別に嫌いじゃないんじゃけどね。こういうの」
「エルフなので私はむしろ好き、まであります」
そんな声を上げながら、私たちは薬草の採取に精を出していた。
ビュネイ公爵領首都マーニャスを少し離れれば草原や森に事欠かない。そしてここは森に少し入った辺りだ。
「そうですね~」
私は頬に指を当てて答えた。
「私自身は魔法で癒すことが出来ますが、他の方はそうではない方が多いでしょう? 特に魔族の方々は不得意な分野かと思うんですよね~」
だから、
「やはり薬草は重要かなと。やはり道具、というのは誰でも手順さえ踏めば同じ結果が得られるという点で、私の能力なんて大したことないと思うわけです」
「いやいやいや! 凄いのじゃ! なーんか後半から話のくだりがおかしくなったのじゃ!」
「師匠……。自己認識を改めた方がいいですよ?」
「ええー!?」
なぜか窘められてしまった。
「二人とも優しいですからね。私のようなクビになった女をこうやって持ち上げてくださるんですから」
「じゃから~」
「なんといえば通じるのでしょうか」
二人は肩をすくめた後、大きな声で笑った。私もつられて笑い出す。
いやぁ、こうやって過ごす時間と言うのもいいものだ。
宮廷に居た時は、友達はもちろん、心を許せる方も見つけることはできなかった。
癒しをすればかえってくるのは、時間がかかりすぎだ、という罵倒だった。
声を立てれば因縁をつけられることもしばしば。
でも今はこうしてお友達も出来て、大きな声で笑いあえる。
幸せだなぁ。
そんな風に私がニコニコとしていた時だった。
「きゃあああああああああああああああああ!!!」
森の中から悲鳴が聞こえて来たのである。
「行きましょう、リリちゃん、ミューズさん!」
私は駆け出す。
「やれやれなのじゃ。まぁこれがセラのやりたいことなんじゃし、文句はないのじゃ」
「師匠と出会ってから退屈とはすっかり無縁になりました」
そんな声が背後から聞こえてきたのである。
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