56.溺愛
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ--------
ピシャーン!
雷鳴がなぜか突然轟き、大雨が降り始めた。
さっきまで晴天だったはずなのだが。
お城の中も何だかズゴゴゴゴゴ……という謎の鳴動が聞こえてくる。
そして、
「面をあげてください」
「は、はい!」
私は初対面でも余り緊張しすぎる方ではない。
ただ、今回は緊張していた。なぜか。
魔王国のビュネイ公爵が目の前にいた……というのもあるが、目上の方なのに敬語を話すタイプなのだ。
こういうタイプが一番怖い。
絶対に怒らせてはいけない。
ちなみに、ビュネイ公爵の種族は雪女とゴルゴーンの混血の魔族であり、その肌、髪の色は全て美しい白銀である。その白皙の中にあり煌々と光る金色の瞳がなお美しい。
ちなみに、その髪の毛は地面まで届き、先端は蛇である。
年齢は見た目で言えば少し年上で、ピオピオさんのような大人なお姉さんではあるが、雰囲気は彼女ほど柔らかくはない。むしろめちゃくちゃ固い。
「知らせによれば、元聖女セラ、あなたはビュネイ公爵領に無断で侵入したようですね。これは本当ですか?」
彼女は金色の瞳で私を見る。
私はと言えば、やってしまったか!? と内心うろたえる。
こういう判断は一事が万事なので、むしろ融通が効かない方が当然である。
なので、私は素直に話す。
「はい。手続きを踏まずに侵入しました」
「それはなぜでしょうか?」
彼女がカチャリと音を立てて、玉座から立ち上がり、こちらに歩いてきた。
大人の女性公爵は迫力も凄い!
彼女がその気になれば、パクリ!であろう。
「いえ、その……」
「けが人が大勢いると思われて、急いだからでしょうか?」
多分、一番無難な答えがそれなのだが、実はあの時点ではどれくらいのけが人がいるのかなどは把握していなかった。あと、私は嘘が普通に苦手である。なので、
「いえ、そういう中毒者なのです」
「……え?」
ビュネイ公爵はぽかんとする。
「癒すのが好きなだけです。規模は大きければ嬉しいですが、本質的にはどうでもいいです。も、もちろん珍しければそれなりにテンションが上がるのですが……」
そう正直に言ったのであった。
すると、
「ふ、ふむ。それは、それは。ふざけた、か、回答ですね。ふ……」
公爵の纏う蛇たちが一斉に私を飲み込むようにした。そして、
「ふふふふ!! だめだ、お腹が痛い!! 気に入りました!! よし、私と一緒に今の魔王をやっつけましょう!! 聖女セラ!! ではなくて、今からあなたは神聖聖女セラです!! 我が公爵家の筆頭聖女という役職です。あなたのために作っておきましたので」
「怒ったりしないんですか?」
「怒る? なぜに?」
ピタリと、ニコニコしている白蛇たちの顔もポカンとなった。
「私の可愛い部下たちを助けてくれた聖女様に怒るわけないじゃないですか。むしろ、逆です。その正直で真摯な態度、そして面白い性格。どうですか、今夜ディナーでも一緒に。あとその後は褥で」
「ストーーーーーーップ!!!!」
と、そこで後ろに控えていた元魔王リリちゃんが大きな声で遮った。
「ビュネイ公爵よ。ほどほどにしておくのじゃな。そやつは儂専用なのじゃ」
「いえ、違います。私専用師匠です」
ミューズさんも口をはさむ。
「そうですか。残念です。ですが気に入ったのは本当です。その気になったらいつでも訪ねてきてくださいね。セラ。通行証を後ほど届けます」
「はい」
「返事も良いですね。私のことをもっと怖がるかと思いましたが」
「もちろん怖がっていますが、蛇ちゃんたちはいい人たちそうなので大丈夫ですよ」
「ふ、ふふふ。そうですか」
彼女はニコリと笑う。
「本当に気に入りましたよ。ゆっくりしていってください。ようこそ、我がビュネイ公爵領へ」
こうして、私とビュネイ公爵様との初顔合わせは、いちおうなんとか無事?に終わったのである。
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