54.この役立たずめ
~回想~
「おい! 宮廷聖女だっていうのに、来るのが遅いぞ!! 何時間かかっている!! 私が侯爵家のものと知ってのことか!!」
「すみません、他の患者さんもいらっしゃったので……」
「それはお前がノロマなだけだろうが!!」
あれ以上速度を上げると、無詠唱ということになる。
「あれ以上速度を上げるのはちょっとリスクですね……」
出来るのだが、発動の確実性や効果が落ちるのだ。そうなると二度手間三度手間になる。やはりしっかり手順を遵守することが幾ら手慣れても欠かしてはいけない最高のコツであると思う。
そう正直に申し上げると、
「は! 今回の宮廷聖女はまるでダメだな! この平民風情が! 大方、良い暮らしをさせてもらって、おごり高ぶっているんだろう! まったく呆れた卑しい品性だ!!」
三食食べるのがやっとで、毎日ろくに寝ていないのだが。
とはいえ、癒すこと自体に喜びはある。
「とりあえず患者の方へ」
「さっさとしろ!!」
やれやれ。私はおおむねいつも通りのやりとりに若干嘆息しながら寝室へと入っていく。そこには公爵令息がいらっしゃった。
うん、どうやらただの風邪のようだ。
「すぐに治しましょう」
私はそう言って、すぐに回復魔法をかけた。
「ふう。治りましたよ」
「ほらみろ、すぐに治ったじゃないか! お前がもっと早くくれば、この程度の病気、すぐに治せたのだ! それを無駄に長引かせおってからに! このことは正式に王子に抗議するからな!!」
「はぁ」
「それにさっさと出て行け、もう用はない! それとも金でも欲しいのか!」
「ああ、それは後ほど国庫にお納めください」
「やはり卑しい奴だな!」
「いえ、ただの足代なのでそこは頂かないとどうにも」
「不愉快だ! さっさと帰れ! 大したこともしてないくせに!」
~以上、回想終了~
「みたいな感じでしたね。協力どころか罵詈雑言をよく浴びてました」
「よ、よくそれで続けてたわね~」
「まぁ役には立っていたのと、好きな仕事でしたので。結局最後はクビになってしまったのですが……」
「ええ~~~~~~~~~~!? あなたをクビにするなんて、意味が分からないんだけど~~~~~~~~~~!?」
「いえいえ。私の代わりなんて幾らでもいますから」
「それって多分認識が間違ってる気がするけども~。ま、でもぉ」
ピオピオは笑顔で言った。
「あなたがマーニャスに来てくれて本当に助かったわ~。回復魔法だけじゃなくて、呪いも、やけども、毒消しもぜーんぶ出来るんだもの~。すごいわ~」
「大したことないですよ。はい、次行きましょう」
「大したことあるんだけどなぁ~。ちょっと~、聞いてるの~?」
色々と褒めてくれて嬉しい。
ただ、私なんてどこにでもいる聖女の一人にすぎない。
これくらい普通だろう。
むしろ、こうして力を発揮できるのは、人間を当然のように受け入れて、癒し行為に協力してくれるピオピオさんをはじめ、ギースさんたちのおかげだ。
「……やりがいがあります」
「何か言った?」
「いえいえ。なんでも」
私は初めて誰かに認められ、なおかつ協力しながら癒しを行うという体験をしたのだった。
それは思いのほか、楽しくて、満たされるものだったのである。
こうして二人でどんどん傷病人を癒して行き、1時間もしないうちに、100人はいた患者たちは皆、スースーと穏やかな寝息を立てはじめたのであった。
よし。
癒し行為完了である。
私とピオピオさんはもう一度、手と枝で握手めいたことをしたのだった。
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