53.癒すの楽しい!
結界柱の境界を越えてから馬車で1週間程度。
「まぁ、あれがビュネイ公爵のいらっしゃる公爵首都マーニャスですか。とても大きくて立派な都市ですね」
「うむ。検問を通れば晴れてマーニャス入りじゃの。色々あったが、まぁ大したトラブルもなくここまで来れて」
良かったのじゃ、と続けようとした時、
「大変だ! けが人が大量に出た!」
「早く中へ運び込め! 衛兵たちは回復魔法と道具をありったけもってこい!」
「しかしもう在庫や人員が不足しております!」
「分かっている! だがやるしかない!!」
様々な種族の魔族さんたちが、けが人を大量に中に運び込んでいった。
「これは私の出番ですね!」
「ああ、師匠! まだ検問のチェックが終わってませんよ!?」
「セラー、って行ってしもうたわ。門番も緊急事態にスルーのようじゃな。まぁ儂らも行くかのう」
「い、いいんですかね~?」
「良くないじゃろ。じゃが、まぁ……あそこで駆け出すのは、あやつっぽいのじゃ」
「なるほど」
背後で微かにお二人が何か言っているのが聞こえたような気がしましたが、私の意識は既に目の前の傷病人へと向かっていた。
「こんにちは。お邪魔します。けが人はここですね?」
検問をくぐり、けが人たちが運び込まれていったのは、大きな平屋の建物だった。そこに粗末な布がしかれてけが人が寝かされていた。
傷の程度は色々で、ケガではなく、他の原因で倒れている者も多数いるように見える。
数は100人くらいだろうか。
「な、なんだお前は!? ん? しかも人間とは珍しい? 帰れ! 今は取り込み中だ!!」
「ふむふむ。この方は落石による骨折ですね」
「な、なに!? 分かるのか!?」
「元聖女なので」
「む! そうなのか!!」
その方の種族は獣人族でしょうか? 白虎のようないかめしい容貌をしている。ここでは一番偉い方のようだ。
「俺の名はギースだ。今は猫の手でも借りたい。元聖女でもかまわん。手を貸してくれ!」
「承知しました。個人的な生きがいの名のもとに全力を尽くしましょう」
「う、うむ? まぁなんでもかまわん。何人ぐらいなら癒せる? 10人くらいは……」
「1万人くらいは何とか」
「は?」
ピシリとギースさんが固まったように思えたが、癒しは時間との勝負だ。なので、早速癒しへ取り掛かる。ケガの程度や種類が様々なので個別対応が良いだろう。
「水の精霊ウィンディーネよ、彼 の者の病をいやしたまえ。『生命の水 』」
ウィンディーネが顕現し、重症者の傷を癒す。
「よし、うまくいきましたね」
「は、早い! 詠唱から回復まで1秒くらいしかかかっておらんぞ!?」
「これくらいは普通ですよ?」
「本当か! では次を頼む! ああ、その前に名前を教えてくれるか、大聖女よ」
「いえ、元聖女ですが。セラと申します」
「うむうむ。大聖女セラ殿か! 魔族は回復が苦手な者が多くて常に人員不足なのだ。セラ殿は素晴らしい!」
「だから色々違いますし、普通ですから」
そんなやりとりをしつつ、次の傷病人へと進む。
「ポーションと薬草が使用できる薬師のアルラウネのピオピオを連れてきました!」
「お待たせしました~。って、おやおや~。結構回復が進んでるじゃないですか~」
ピオピオさんと呼ばれてやってきたのは、おっととした雰囲気のお姉さんだった。青い長い髪と美しいアンバー色の瞳がその美貌を引き立たせている。
花の魔族アルラウネは、ポーションや薬草作りなどが得意な魔族である。
「うむ! そこの大聖女セラ殿のおかげで、凄いペースで回復がで来ておるのだ!」
「まぁそうなのセラちゃん。私はピオピオと言います。よろしくね~。あ、この子ちょっと毒にも冒されてるわね~」
「傷は回復させおわってます」
「じゃあ、協力しましょう。はい、毒去りのポーションよ~、頑張ってぐびぐび―」
「まぁ、素晴らしいですね。癒しがはかどります!」
「いえーい♪」
ニョロニョロとピオピオさんからツタのようなものが伸びてくる。どうやら握手らしい。
「いやぁ、すごくいいペースで癒せて嬉しいですね。こうやってると昔を思い出します」
私とピオピオさんは癒し続けながら会話も行う。
「あら~。こんな風に協力しながら聖女のお仕事をされていたの~」
ニコニコとしながらお姉さん魔族は聞く。
私も微笑みながら、
「いえ、全然逆でして――――――――」
そう言いながら首を横に振った。
【応援よろしくお願いします!】
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「セラとピオピオさんはこの後一体どうなるの?」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。