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47.こちらの勝利です、殿下

殿下の指示で30人はいるであろう兵士たちが一斉に突っ込んできた。基本的には歩兵ばかりだ。


「ふはははは!! 後悔するといい!! 今日連れてきたのは兵の中でも屈強な者たちばかり!! お前は剣筋さえ見ることは出来ずに敗北するのだ!! くひひひひひひ!!!!」


「ただの元聖女の私ごときにやりすぎですよ、殿下」


「ふはははははは!!!」


殿下の哄笑が響く。


それ自体は油断に他ならないが、指示自体は集団で私を倒せというものだ。


全力で少数を叩くというのは、戦術として極めて正しく、少数のこちらは勝利出来ない条件とも言える。


「勝てないまでも善戦はしたいところですねっ……!」


私は呟く。


と、同時に私はリリちゃんとミューズさんへ指示を出す。なお、リリちゃんは大結界を超えるために魔力はゼロの状態にしてあるので、元魔王の力は使用できない。


「全速で出来るだけ後退してください!」


「! 分かったのじゃ」


「了解です、師匠!」


お二人は異議を差し挟まず指示を聞いてくれる。


「『活力のイフリート』」


私は脚力を強化して、追撃してくる兵士たちから出来るだけ離れた。


「馬鹿が! 逃げきれんぞ!!」


その通り。これは逃げるための戦術ではない。


「よし!」


「師匠!?」


お二人が後退している中、私は強化した脚力によって、無理やり反転する。すなわち全力で前進したのだ。そして、


「うごあ!??!」「うぎえ!?」「げふう!??!」


人体の急所であるところの顎を的確に強化した拳で打つ! 


兵士たちは鼻血を吹き出しながら、もんどりうって倒れ、失神した。


「な、なにい!?」


カイル殿下が驚愕の声を上げて目をみはっていた。追って来ていた兵士たちも意外な反撃に警戒態勢を取る。


一方の私は。


(ラッキーでしたね)


と内心の汗を拭っていた。


殿下が油断していたから、兵士たちにそれが伝染していたのだ。おかげで、熟練の兵士が油断してバラバラの速度で追撃を仕掛けてきてくれた。そのうちの、功に焦って突っ込みがちになっていた兵士たちの不意をまんまとついたのである。


とはいえ、まだ3人で、しかも相手も本気を出して来ることだろう。今のようなラッキーはもう起きないと見るべきだ。


「何をしている! そんな小娘ごときに!!」


「はっ!!」


曲りなりにも戦闘のプロたちはすぐに態勢を整える。


今のような無策な突撃ではなく、こちらを包み込み包囲する陣形を作り、素早く間合いを詰めて来た。


(ですよね~)


呑気に考えている暇もない。


素人ながら常々思うのは、この取り囲んでタコ殴りというのが、戦術としては最強ということだ。


だから、基本的に囲まれてはいけないが……。


「ミューズさん! リズムを頂けますか!!」


「へ!? あっ、はい!! 師匠!! 風の精霊シルフよ。その大気の鳴動にて風韻のかなでを聞かせよ『風の音色(精霊のバラッド)』!」


どこからともなく、風にのって不思議な音色が聞こえて来た。その音は一定のリズムを刻む。


トン――――


「こんな時に音楽とはな! 狂ったか! 行け、一斉攻撃だ!!」


トントン――――


「ははっ! 行くぞ! 悪く思うなよ!!」


まず一撃目!


「はぁ!」


これはギリギリ躱す。これは予定通り。


だけど、


「仕留めた!!!!!!!!!!!!!!!」


熟練の兵士たちにとっても想定の範囲内っ……! 見えない二撃目が迫っている!


でも。


トトトン・トン!!


「ふぅ!!」


見えなくても問題ない!


ミューズさんの『風の音色(精霊のバラッド)』は、精霊の歌声によって無意識にそのリズムにのって身体が動いてしまうという魔法だ。


だからこそ。


私でも。


「躱せる!」


「なぁ!?」


私は飛び上がって、地面をまったく同一のタイミングで突き刺した剣を躱していた。


同時に、しかも攻撃の来るタイミングさえそろっているなら、躱すことは出来る!


そして、


「ミューズさん!」


「風の精霊シルフよ。その大地を削る風刃の槍にて我が前の敵を彼方へと葬れ『風竜刃(トルネード・ショット)』」


「ぐ、ぐへあ!?」「ぎえええ!?」「ぐはああ!!」「うああああああ!!!」


風竜刃(トルネード・ショット)』は範囲魔法で、貫通力を備えている。


この機会を狙っていた。


なぜなら、個別に倒しても兵士たちが十分に残っていれば、その兵士に追いつかれて負けてしまうから。


勝利には絶対に、彼女の範囲魔法で、ほとんどの兵士を倒す必要があったのだ。


そして、さすがミューズさんの魔法は別格だった。


私に群がっていた兵士たちは、見事なまでに全員が魔法に撃ち抜かれ、その場で失神していたのだから。


「…………は?」


「ふ~、ありがとうございました。さあ、殿下」


私は額の汗をぬぐってカイル殿下に申し上げた。


「降参してくださいますね?」


「…………ばか……な……」


殿下は現実が受け入れられないのか、全滅して地面に倒れ伏した兵士たちを見て、青ざめた顔で口をパクパクとするだけだった。

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 「面白かった!」

 「続きが気になる、読みたい!」

 「セラたちはこの後一体どうなるの!?」


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[気になる点] >人体の急所であるところの顎を的確に強化した拳で打つ!  >兵士たちは鼻血を吹き出しながら、もんどりうって倒れ、失神した。 顎を打ってるのに鼻血が出るのか? >「降参してくださいます…
2023/01/23 21:33 通りすがり
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