46.それが殿下の真の実力ですよ
「うおおおおおおおおおおおおおお!!! お前のせいで! お前のせいで僕が今まで築いてきた地位も名誉もズタズタだあああああああああああああああああああああ!!!」
なぜかカイル殿下は泣きながら絶叫していた。
私のせいとはどういうことだろう?
「どうかされたんですか?」
「お前がいなくなったせいで、近衛兵たちからは馬鹿にされ、城の者からも陰口を言われて嘲笑される! 僕が王位につくと見込んでくれていた貴族たちも最近は冷遇してくる! よりにもよって第2王子にすり寄ってやがる! 今までは散々僕のことを褒めちぎって来たくせにいいいい!!!」
「でもそこは実力や努力の成果ではないでしょうか? 第2王子、けっこう頑張ってましたし」
「うぎいいいいいいいいいいいいい!! なんだと貴様あああああああああああああああ!! 僕が実力のない張りぼてだったとでもいうのかあああああああああ!!」
「いえいえ。それを決めるのは私ではなく、周囲の方々でしょうし。何より殿下自身だと思いますので」
「ああああああああああああああああああああ!!!」
また絶叫した。
「おかしいですね。普段の殿下はもっと余裕のある方だったのに。何だか今日はいつもと雰囲気が違う様子です」
私は訝しんだ。
「セラ、そなた時々えっぐいのじゃ……」
「そうですよ……。それに本質が出ただけってなると、師匠の癒しでもどうにもならないですし、どうしようもないってことじゃないですか」
なぜかお二人は若干呆れた様子で言った。
「大結界の件もそうだ! 貴様が魔力を注入していただと!? そんなことは聞いていないぞ!!」
「毎週レポートは出していたのですが、読まれていなかったのですか? 私、殿下はもっと真面目な方かと思っていましたが、怠け者なのですね」
「なあ!?」
「そういうところが人心が離れていく原因かもしれません。将来は王位につかれる方なのですから、このままではいけませんね」
私は普通のことを言う。
「き、貴様あああああああああああああああああああ!! 無礼だろうがああああああああああああああああああ!!」
「あの、そういうところですよ、そういうところ。殿下には実力が不足されていた。張りぼてだと分かった。ならこれから努力すればいいじゃないですか。大丈夫です。人生長いですから」
私は少しガッツポーズを見せる。
「僕が今までためた私財で世界中の聖女を集めて大結界を維持しているんだ!! おかげで僕は一気に貧乏になってしまった!! 今までの優雅な生活を返せええええ!!」
「何か産業を興したり、貿易に力を入れたりすればいいのではないでしょうか? グランハイム王国は海洋に面していますし、基本的な他国へのルートは海洋です。そういう努力が国を富ますのではないかと僭越ながら愚考しますけど……。もちろん、この程度のことはお考えかと思いますけど」
「ぅ!?」
「ね? 今がダメでも何とかなります。で、すみません、殿下。私はもう行かないといけません。神聖聖女として癒しの旅に出ますので。そちらはそちらでどうか努力して頑張ってみてくださいね。私よりよほど優秀な宮廷聖女のイゾルテさんもいらっしゃるわけですし」
「そ、そうですよ、殿下。正気に戻ってください。私ならばきっと頑張って、この生意気な平民聖女など忘れさせてご覧にいれます!!」
イゾルテさんはさすが最優の聖女さんだ!
すごく前向きである。
しかし。
「だ……だめだぁ……」
「で、殿下?」
「そこの聖女を連れ帰る……。そして拘束して僕の意のままに動く道具にする……。僕に逆らうような奴は意思を持つ人間は必要なぁい……」
「ひ、ひい!?」
地獄から漏れるような声に、イゾルテさんも悲鳴を上げる。
「く、くひひひひひ!! 貴様ら突撃だ! 魔族とエルフはどうなっても構わぬ! だが、あの聖女は生け捕りにしろお! だが多少ケガをさせても構わん!!」
気勢を上げて、兵士たちに命じた。その目は勝利を確信した、喜悦に歪んだものだ。しかし。
「人を暴力で支配しようとするのは、最低の人間の証拠ですよ、殿下さん?」
私は反対に微笑みながら、殿下にそのように申し上げたのだった。
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