45.お二人で問題は解決してくださいね
「聞いているのか、平民聖女! 貴様を拘束し王都へと移送する。嬉しいだろう、また僕の役に立つことが出来るんだからね! もし、お前が望むのならば愛人にしてやってもいい! 卑しい平民のことだ、これほどの褒美を与えられれば、断ることなど考えもつかぬであろう」
カイル殿下は馬上からそのようにおっしゃった。
ただ、一方の私は首を傾げながら、
「? 今のお話の中に何か魅力的な点が一つでもありましたでしょうか?」
と、本当に理解できなかったので、怪訝な表情で普通に聞き返す。
「な、なんだとお!? は、ははは! 強がりを言うな! それになんだ、そこの奴らは、どうやら角がある方は魔族で、耳の長いのはエルフか! 僕に相手にされないからと言って、魔族やエルフに縋るとはな!」
カイル殿下は唇を歪めて嗤われる。
ただ、何か皮肉を言われているような予感はあるのだが、そのあたりもよく理解できない。
なので、やはり普通に返事をすることにする。
「はい、こちらは元魔王のリリちゃん。そしてエルフの元王女のミューズさんです」
「は、はぁ!? 魔王!? エルフの王女だと!?」
「え、あ、はい。そうですが……」
「嘘をつくな! い、いや。たとえ本当であったとしてもだ! 結局僕に相手にされないから仕方なくそんな奴らと付き合っていることに変わりはない!」
「あ、はい。その節は本当にありがとうございました」
「……は?」
私の言葉の意味が分からなかったのか、殿下がぽかんとした表情をする。
「おかげで人もエルフも、村も里も街も、癒すことが出来ました。おかげで次は魔王国に行って、魔族さんたちを癒す旅をしようと思っているんですよ!」
「は、はああああああああああああ!? 貴様、一体何を言っているんだ!? 魔族を癒すだと!?!?!?」
「はい。そうですけど」
「やはり頭がおかしいようだな! 魔族を癒すなどとは!! 奴らは人間に劣る畜生どもだぞ!!」
その言葉に私は微笑む。
「そんなことはありませんよ。少なくともリリちゃんは良い魔王さんでした。これからもずっと一緒にいようねと先ほど約束しましたから。ね?」
「う、うむ」
なぜか照れた顔をしますが、続ける。
「それにグランハイム王国のことはイゾルテさんに任せましたから、私としてはもう次の新天地での癒しの旅をすることが決定しているんです。申し訳ないのですが、カイル殿下のご命令は聞けません」
「お、愚かな! 僕は第一王子だぞ!? 後悔することになるぞ!? 人間を裏切るのか!?」
「?」
私は首を傾げてから、
「裏切るも裏切らないもありません。傷ついていたら癒すだけです。ただ、そのためにはビュネイ公爵からちゃんとした神聖聖女の肩書きをもらったり、グランハイム王国以外の人間国で活動したりする方が、たくさん癒せるんです」
そう言ってから、
「グランハイム王国はお二人にお任せします。私は別の国の人々も、別の種族の方々も癒す神聖聖女として今後は活動をしますので」
私はそう言って、くるりと踵を返した。
殿下の言葉に対して、回答はしたと思うので、あとはお二人で解決するべきことだからだ。
しかし、
「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「で、殿下!?!?」
絶叫するような声をカイル殿下が上げるとともに、近くにいたイゾルテさんがその様子を見て驚きの声を上げるのだった。
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