42.もはや王国の命運は私には関係ありません
「いやぁ、今日は大漁でした! 素晴らしい!」
「セラよ。そなたが癒し中毒なのは知っておったが、やっぱりそなたが一番やばい!」
「魔王様に完全に同意です! めっちゃ笑ってましたよ、師匠! 今日一日!」
リリちゃんとミューズさんの呆れたような声が宿の一室に響く。
ちなみに、とりあえず今日一日駆け回って、急患については全て癒しを施した。残りは明日で問題ない。
「いや、はしたないです。いえ、そうなんですよね。そもそもが傷病人がいることを喜ぶこと自体が不謹慎なのは分かってはいるんですよ? でも、癒せる喜びを抑えきれないんですよね……」
「まぁ、いいんじゃけどね。厳粛にして病魔が祓えるのなら良いけど、そんな甘っちょろいもんじゃないからのう」
「実際、1万件の家を個別訪問できる聖女なんて、絶対他にいませんもんね」
「じゃけど、宮廷聖女の身分は剥奪されて、城から追放されたんじゃろ? 人間の貴族というのは馬鹿なのじゃ?」
「ですよね。それにちょっと落ち着いたので魔王様にもお聞きしたいんですけど、普通人間の国は大結界に守られていて上級魔族は入れないはずじゃないですか? でも」
「うん、あの魔貴族は入っておったな。一瞬結界が緩んだといっておったが……」
「確か、あれも師匠が維持されてたんですよね? 師匠がいないと王国ってダメダメなんじゃないですか?」
二人は神妙そうな表情で言う。
でも私は微笑みながら、
「大丈夫ですよ。ちゃんと引継書も渡しておきましたし、それも見た上で、私を追放したんですから。全く問題ないはずです」
「本当に読んだのじゃ?」
「ふふふ、リリちゃんは心配症なんですね。引継書を読まないなんてことあるわけないじゃないですか!」
私はおかしくなって笑う。そんなことがあったら、
今頃王国は大変なことになっているだろう。
「割とあるあるのような気がするんじゃがなぁ」
「ですよね。なんか腹いせに、とか。気分を悪くされたら申し訳ないですけど、平民出身と馬鹿にしていたみたいですから、それで読む価値がないとか言って、捨ててしまったとか、いかにも人間種族にはありそうなんですが」
「もう、そんな訳ありませんよ。もっと人を信じて下さい」
「追放された本人に諭されるってどうなのこれ?」
「これ以上、言える言葉はないですね」
やっぱり二人は心配性さんのようだ。
私などいなくても、あの新しい宮廷聖女のイゾルテさんが万事うまくやってくれているだろう。
「それに彼女の方が聖女としての格が上と言われて追放されたんですよ? 私が心配する必要なんてどこにもないじゃないですか?」
私がうまく出来なかった部分も、きっと上手にこなしてくれているに違いない。
大結界の一時的な不調はあったが、その後は機能を回復しているのだ。
即追放されたので、現場での引継ぎをしたいと言っても、許可されず出来なかった。それにも関わらず、既に運用は通常運転になっている。
「もはや私が出る幕ではありませんね。きっとうまくいきますよ」
私は微笑みながら、テーブルに用意された果実汁を口に含むのだった。
「さあ、明日も癒しまくりで忙しいですよ! 楽しいですね!」
「「やれやれ」」
少女二人は私の言葉に、肩をすくめたのだった。
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