33.一方その頃、王国は守護結界を失う
~一方その頃。第1王子カイル視点~
「ぜー、ぜー……」
「お、お疲れ様です。殿下。はぁはぁ……」
「あ、ああ……。イゾルテも、な。は、ははは……」
お互い作り物のような笑みを交わす。
「無事に今日も任務をこなせたな。さすがイゾルテだ」
「はい。これくらいなんでもありません。先日は少し不慣れなために不格好な様子を見せてしまいましたが」
「はっはっは。気にすることはないさ」
余裕をもった笑顔を見せる。
……今日も一日が終わった。
あの平民聖女を追放し、真の聖女であり、真実の愛を育むべき相手であるこのイゾルテを宮廷聖女へ据えた。
だが、先日、近衛兵の治癒に当たったイゾルテは、そのあと寝込んでしまい1週間まともに仕事にあたることができなかった。
治癒を再開したのはここ最近のことだ。
だが、先日の疲労が抜けきっておらず、十分な癒しの務めはまだ難しい。
また、僕自身も彼女に魔力を吸収された結果、自分の体液でどろどろな状態という屈辱的な恰好で、衆人環視の中倒れて運搬される様子を見られるという、あってはならない失態を演じてしまった。
だが、
「一度の失敗ならば問題ない。だが、これ以上失態を晒すわけにはいかない。何せ僕は王になる存在で、君は王妃なのだからね。これ以上の失策は足元をすくわれかねない」
「ええ、分かっていますわ、殿下。今後は治療する人数も事前に把握し、制限を設けるようにしましょう」
「ああ。そもそも貴重な宮廷聖女をそう気楽に稼働させるべきではないんだ。平民ならばいざ知らず、君は公爵令嬢でもあり、僕の真実の愛の相手でもあるんだからね」
「ああ、殿下ありがとうございます」
僕は気を取り直していた。
確かに多少の失敗はあったかもしれないが、よく考えればイゾルテに無制限に治療させるようなことさえさせなければ良い。そしてその理由は僕の専属聖女であるという理由を強弁すれば足りるはずだ。
「ふ、災い転じて福となすとはこのことだ。僕たちの前に何ら障害はない」
「はい、その通りですわ、私のでん……」
「大変でございます!!」
イゾルテの甘い言葉をつむがれようとした時、慌てた様子で乱暴にドアが開かれた。
「何事か! ここは私の私室だぞ! 戦時でもなければ必ず執事を通して伝令するようにとっ……」
だが、僕の怒りの声はすぐになりを潜めることになった。
それどころか、直後、顔面を蒼白にしていたのである。
「王国を守っていた結界が一部消失しました!! このままでは魔族の侵入を許してしまいます!!」
「はあああああああああああああああ!?!??! な、なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!!」
僕のパニックの声が王城中に響き渡ったのであった。
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