31.里中の呪い、祓っときますね
「この度はご迷惑をおかけして申しわけありませんでした。聖女様。改めてお詫び申し上げます。今回のことで目が覚めました。ミスティカについては厳重に牢屋に入れております」
翌朝、特別に用意してもらった家を訪ねて来た族長は、開口一番そう言った。
「何だかスッキリした顔をしていますね」
「はい。不思議なことに、昨日までは心に靄がかかっていたような気がしています。それにどこか怒りっぽくなっていたとも。理由は分からないのですが」
リリちゃんが口を開いた。
「闇の魔法を司るものが近くにいると、少なからず精神に変調をきたすのじゃ。いや、精神だけではなく、例えば農作物が育たない。病が蔓延しやすい。牛や豚が死にやすい、などもあるの」
「! そうなのです! 実はそれがエルフ族でもそうした病魔の蔓延が死活問題となっておりまして……。広大な土地ですが実はどこも農作物がまともに育たなくなっているのです……。畜産もまったくだめで……。だが、それもすべてミスティカが病根だったのですね。一度呪われた土地はなかなか穢れが落ちないと聞きます。ああ、一体どうしたものか。このままではエルフは全滅してしまいますっ……!」
ザーザさんは悔しそうな表情になる。
私はあっさりと言った。
「あ、それじゃあ、旅立つ前に、大地の浄化をしていきましょうか?」
「……はい?」
ザーザさんは目を点にした。聞こえなかったかな?
「いえ。なので、大地の浄化をしていきましょうか? エルフの里全域の呪いを解けばいいんですよね?」
違うのかな?
見当違いなことを言っていたら恥ずかしいので、私はもう一度しっかりと聞く。
でも、どうやら聞こえていなかったわけではなかったらしく、
「そ、そんなことが出来るのですか!? えっ!? 里全体って……。一体どれほどの広さがあるか……」
「ミリゲット村の100倍くらいですかね? ちょっと大変かもしれませんね」
私は想像して真面目な顔になる。
「そ、そうです。いかな聖女様といえども……」
「結構頑張らないと、隅々まで魔法が届かないかもしれないですね。注意しますね!」
漏れがあったら大変だし。
「え、ええええええええええ!? ちゅ、注意したら解決できる程度のレベルなんですか!? えっ!? エルフの里全域の呪いを解く話ですよね? えっ、これ私がおかしいのか? えっ えっ?」
ずっと混乱しているザーザ族長をよそに、一緒に座っていたリリちゃんとミューズさんは、生温かい目線をしていたのだった。
「ち、ちなみに何日くらいで……」
「え? 1時間もあれば大丈夫だと思いますよ?」
「そ、そんな!? たった1時間で里中の呪いを祓うのですか!?」
「あ、違います」
「あ、ああ」
彼はちょっとホッとした表情をした。
「そ、そうですよね。さすがにそこまでは……」
「準備も含めて1時間ですね。里の中心からやるのが一番効率がいいので、そこまでの移動時間もありますし、終わったら戻って来る時間もあります。なので、浄化魔法を使う時間自体は5分くらいだと思います」
「はあああああああああああああああああ!?」
今度こそ、ザーザ族長の驚愕の声が家屋に響き渡るのであった。
「セラよ。ちょっとは加減してやれ」
「そうですよ、師匠……。少しは自覚をもってください……」
「え? え?」
なぜか責められてしまう私なのだった。
ともかく、こうして私はこのエルフの里の最後の治療として、里に蔓延した呪いという名の病魔の退散に取り組むことになったのだった。
これほど強力かつ広大な呪いを祓う機会はそうそうない。
癒し中毒者の私には実にぴったりの癒し対象だな、と思った。
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「聖女セラ、先代魔王リリ、エルフ族ミューズ達はこの後一体どうなるのっ……!?」
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