30.詫びをいれなさい
「これは一体何の騒ぎなんだ!?」
という怒鳴り声とともに、この地下牢へとやってきたのは、族長であり、ミューズさん、ミスティカさんのお父様であるザーザ族長だった。
「呼び出したと思えば、ここは一体! それに、ミ、ミスティカ! 大丈夫なのか!? おのれ! 我が娘に何をした、ミューズ!! やはり族長の地位が欲しくなって、自分より優れたミスティカを殺そうとしたか!!!!」
とんでもない誤解をしていた。
時間はかかりそうですが、説明しましょうか。
そう思って口を開こうと思いましたが。
「そんなくだらないものに興味はありません。お父様。いいえ、ザーザ族長」
「な、なに!?」
ザーザ族長は目を丸くした後、馬鹿にしように、
「は、はははは! 何を言うかと思えば! お前の実力が足りないから族長にそもそもなれないのだ! それなのに、悔し紛れに『興味はない』とはな!」
そう言って嗤う。
だが、そんな父親の姿を、ミューズさんはむしろ冷静な瞳で見ていた。
「別に私がどう思われようが勝手です。それに、あなたや妹とは、もう家族でもなんでもありません。縁は切らせてもらいます」
「な、なんだと!? え、縁を切るだと!? そんなことをすれば永久に里に戻ることは出来なくっ……」
「構いません。言ったでしょう。この里に興味はないと。むしろ」
彼女はそう言うと、チラリとこちらに見てから、
「聖女セラ様への謝罪を求めます。エルフを代表し、公式にお詫びをしてください。族長の娘ミスティカによる殺人未遂の現行犯です」
「な!? わ、詫びだと!? エルフである私が!?」
エルフは気位の高い種族なので、そりゃ抵抗があるだろう。
「当然です。それに先代魔王リリ様にも同様の危害を加えようとした。これはあなたの責任問題なのですよ、ザーザ族長。土下座でもなんでもして、許しを得なければ、あなたは当然族長の身分を剥奪。それとは別に相応の損害賠償をしなければならない。さっさとその工面に奔走すべきでしょうね」
「ば、馬鹿な!! そんな馬鹿なことがあるものか!? それにミスティカがやったという証拠もまだっ……」
「証拠ですか。高位なる精霊たちよ。名前を聞いてよいですか?」
「我が名はエアリエルです。ミューズ様」
「私はシルフィードと申します。主様」
「ありがとうございます。二大精霊たるお二人に聞きます。私の証言に嘘偽りがありましたか?」
その言葉に、エアリエルとシルフィードは答える。
「いいえ、全て真実です。ミューズ様」
「はい。闇に堕落したミスティカがその呪いの力によって、主様やその仲間たちを殺そうと致しました」
「じょ、上位精霊様がた!? ど、どうして、ミューズごときに召喚されてっ……!?」
その言葉は最大の失言であった。
「貴様、我らが主に何たる口のききかたか!」
「痴れ者め。分をわきまえよ」
「ぐ、ぐえええええええええええええええええええええええええええ!??! だ、だずげろ! お前だぢいいいいいいいい!!!!」
精霊が片手を上げるだけで、局所的に竜巻が生じる。それに巻き込まれたザーザ族長は逆さづりにされるとともに、息ができないのか目をむいてもがく。そして、連れて来たエルフの兵士たちに助けを求める、が。
「ひ、ひい!? ぞ、族長が!? た、助けないと!?」
「だ、だが精霊様の御意思だぞ」
「う、うむ。ここは様子を見よう」
「き、貴様らああああああああああああああ!!! ぐ、ぐえええ……」
何だか失神してしまいそうだ。
聖女として助け舟を出す。
「あの、謝ってくれるのでしたら、水に流しますので、そのへんで……」
すると、すぐに竜巻はおさまり、どさり!とザーザ族長は地面に落ちた。
「に、人間の言うことをどうして風の上位精霊が聞くんだ!?」
そうエルフたちは驚く。
「私の師匠がセラ様ですから当然です。エアリエルもシルフィードもよく覚えておいてください。私の指示より、師匠の指示が優先ですからね!」
「「かしこまりました」」
「それより、ザーザ族長。これまでのセラ様やリリ様への非礼、そして娘であり次期族長ミスティカの犯した犯罪について心からの謝罪をしなさい」
その言葉に、顔面を蒼白にして、ぜーぜーと息をしながら、ザーザ族長は頭を下げた。
腰が抜けて立ち上がれないようで、土下座みたいになる。
「も、申し訳ございませんでした。聖女様、魔王様」
「おお……」
「族長が罪を認め、土下座で謝罪をしたぞ……」
「ぐ、ぐぎぎぎぎ!」
私は別に土下座までしてもらうつもりはなかったのですが……。
「儂としてはセラを侮辱した罪は重いので、極刑の方が良さげじゃと思うんじゃけど?」
リリちゃんは慣れてるみたいだ。さすが元魔王様。
こういう時にドキドキしてしまう私とは雲泥の差だ。
私はと言えば、
「いえいえ、気にしてませんから大丈夫ですよ。エルフ族を許します」
と、笑ってごまかすくらいしかできない。
「もっと言ってやったら良いのに。命を狙われたのに、セラは寛容じゃなあ」
「いえ、さすが師匠です」
「お主な、ちょっと儂のパートナーのセラと距離が近いんじゃよな。ずっと言おうと思ってたんじゃけどな」
「リリ様こそ少し遠慮してください。私の師匠なわけで」
なぜか身内で口喧嘩が始まってしまった。
ともかく、こうしてミューズさんの魔法が発動しないという呪いに端を発した事件は、ミスティカさんという呪いの病根を退治することで解決となったのである。
直接癒せた人数こそ少なかったですが、初めてエルフ種族を癒せたことには大満足な治癒の旅だったと言えましょう。
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