29.傲慢な妹を分からせる
「風の魔法が使えないなら、闇の魔法を使うまでよ。私に逆らう奴らはみんな死んだからいいの! まずは計画を狂わせたあなたからよ、忌々しい聖女セラ」
そうミスティカさんが叫ぶのと同時に、禍々しいオーラが彼女からあふれ出る。
「ミューズさんの魔法陣を狂わせていた件といい、エルフの里に入った時から感じる嫌な感じの正体はこれでしたか」
私は納得して頷く。
「ミスティカさんこそが今回の病魔の原因そのものということですね」
「黙りなさい。忌々しい聖女セラ。全て順調だったのに。ミューズがいなくなり、お父様もお母様も愚かにも完全に私を信頼している。私がちょっとお姉様の悪い噂を吹き込めばすぐに信じてしまったわ。そう、あなたさえいなければ、私が族長として全てを手に入れられていたというのに!!」
「あら、それでしたらこういうのはどうでしょうか? もうミスティカさんは悪さをしない。ほら、ミューズさんも族長の地位には興味がないので私に付いて来られるわけですし、何も問題ないじゃありませんか。ね? ここは穏便に済ませましょう」
「セ、セラ師匠! で、でも、ミスティカは闇魔法を使います。呪われでもしたら……」
「まぁ、見ておくのじゃ、ミューズ」
心配の声を上げたミューズに対して、リリちゃんが肩をすくめて言った。ちなみに、リリちゃんの解毒も最初から済んでいる。口裏を合わせて罠にかかってもらったのだ。
さて、そんな私の穏便な提案は、
「それは無理ね。どうしても戦ってもらう、聖女セラにその一行たち」
彼女は再び、見下すような色を瞳に浮かべて、余裕の笑みを浮かべた。
「私の秘密を知った者を生かして里の外に出すわけがないでしょう。闇の力によって、ここで全員屍をさらすのよ、永遠に……ね!!」
彼女のオーラがどす黒い赤へと変わる。どうやらもう止まらない。
本気のようだ。
「うーん、平和的に解決したかったのですが」
「セ、セラ師匠! 私の風魔法で」
「まぁいいから見ておくと良いのじゃ」
リリちゃんが余裕の笑みを浮かべながら言った。
「お前が師匠と呼ぶ者がどれほどの規格外な者か、目に焼き付けておくが良い」
「え?」
ミューズさんがぽかんとした表情を浮かべた瞬間。
「地獄の番犬ケルベロスよ。そが纏う暗黒の炎にて呪いの厄災にて生命の灯火を消せ! ≪地獄の黒炎呪≫!」
私の周囲をケルベロスが放った炎が包み込む。
高位魔法ですが、射程範囲は一人。
それに、攻撃が私に来ることは分かっていたので、あらかじめ回避運動をしていたので、攻撃は外れる。
しかし、
「馬鹿ね。その魔法の本当の怖さを知るといいわ」
「い、いけないセラ師匠!!」
ミスティカさんの余裕の声と、ミューズさんの焦った声が同時に響く。
(呪いは……)
私は内心で忙しく計算する。
良く勘違いされるのだが、別に私は全然余裕じゃないのだ。
ただ必死に、勝とうとしているだけ。
それが病の根絶につながるがゆえに。
ずっとそうしてきたし、これからもそうだ。
だから。
今回も。
光明が見えた。
(呪いが身体を蝕むまで2秒はある)
たった2秒だが、それは厳然たる事実だ。
逆に、そこに勝機を見いだせないなら、私の癒しパワーが不足していただけのこと!
「はぁ!!!」
急いで動く!
0.000001秒でも早く。
2秒という微かな勝機を捉えて、呪いをその身に受けながら、前進する。
呪殺という必殺の一撃が私を蝕み、もはや勝利したものと確信した、無防備なミスティカさんに一瞬にして近づいた!
「え?」
ミスティカさんのポカンとした表情がまず目に入る。
そして、コンマ数秒後には、しまった! という表情に変わる。
でも、
「気づくのが、遅かったですね」
私の渾身の一撃が、ミスティカさんの首筋を殴打する。
急所を突かれた彼女は、一瞬にして昏倒する。と、同時に、召喚していたケルベロスは消失した。
(ふ、ふー! 危ない。ぎりぎりのぎりぎりでしたね!!!!)
私は額に少し汗をかきつつ、ミスティカさんが本当に昏倒しているのかを確かめてから、彼女から離れた。
「ふー、やれやれ。ぎりぎりでしたね」
「何を言っとるんじゃ。圧倒的だったではないか。もっと儂の、その、あれじゃ。パートナーとしてじゃな、誇っても良いと思うのじゃぞ? ん?」
「そうですよ、師匠! 私、まだまだ師匠のことを理解していないことに気づきました! 私とは別次元の、格上の存在です! これからもご指導ご鞭撻のほど、お願いします!!」
リリちゃんと、ミューズさんが、微笑みながら駆け寄って来る。
「だから誤解ですってー! ぎりぎりだったんですってばー!」
そんな私の叫びは、なぜか無視されてしまうのだった。
と、その時だった。
「これは一体何の騒ぎなんだ!?」
まぁ、そろそろ来る頃かと思っていた。
私は落ち着いた様子でその来客を迎えたのである。
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「聖女セラ、先代魔王リリ、エルフ族ミューズ達はこの後一体どうなるのっ……!?」
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