28.そんな地位なんていらない。私はこの人がいい
パリイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!!!!!!!
「え?」
ミスティカさんが何が起こったのか分からないとばかりに目を丸くした。
そして、次の瞬間、
「ミスリルで作ったナイフなのに! どうして!?」
余裕の表情は消え失せて、焦った表情を浮かべた。
ミスリルは超硬度の金属で、めったなことで刃こぼれすらしない。それが砕けちったからだ。
しかし、驚くべき出来事はそれだけでは済まなかった。
『ふん、我が主に手を出すことは許さぬぞ、この下郎が』
『その通りよ。下がりなさい。風の精霊の御子の御前ですよ』
いつの間にか二人の人間。いや、宙に浮く精霊が二人、ミスティカから私たちを守るようにしていたのである。
一人は男性、もう一方は女性だ。
「だ、誰よ、あなたたち!? い、いえ。魔力の感じからして風の精霊ね? なら、私が誰か分かっているの!? 次期、エルフの族長よ!?」
突然現れた精霊に慌てながらも、調子を取り戻したように叫ぶミスティカだったが。
『はははは!』
「な、何がおかしいのよ」
『黙れ、小娘ごときが』
「なっ!?」
今まで蝶よ花よと育てられて来ただろうミスティカさんにとって、それは初めての侮蔑の言葉だったのかもしれない。
お口をパクパクとして絶句している。
精霊は続けて口を開く。
『まがい物を前にして嗤うなという方がおかしい。聞くが良い、小娘。ここにいるミューズ様こそが、真に風の精霊に選ばれし御方なのだ。それに、我らシルフにとって、エルフの族長が貴様かどうかなど、どうでも良いことなのだ。我らはただ、真の風の精霊の巫女であるミューズ様を守り、その意向に従うことこそが使命』
「ま、まがい物ですって!!」
ミスティカは焦りながらも、激高する。
自分が否定されるなんてことがあって良いはずがないからだろう。
「まがい物はあなたたちの方よ! もういいわ、消え去りなさい! 風の精霊シルフよ。その大地を削る風刃の槍にて我が前の敵を彼方へと葬れ『風竜刃』!!」
殺意をともなった詠唱とともに、魔法陣が展開され、風の精霊が召喚された。
しかし、
『シュン!!』
「なっ!?」
現れたと思った風の精霊は、浮遊する二体の精霊を見るなり、姿を消してしまったのだ。
「ど、どうして……なの……」
顔面を蒼白にするミスティカさん。
「よく分かりませんが。そちらの精霊さんたちが、とても高位精霊さんたちだからじゃないでしょうか? 同じ風の精霊さんといっても名前を持たれている存在もいらっしゃるわけですし」
私はあたふたとして、あんまり口を開かないミューズさんに代わって言う。
「ユ、ユニークだって言うの!? そんなバカなことあるわけない! 私にだって召喚出来た事ないのに!!」
「それはさっき、精霊さんたちが説明してくれたじゃないですか。ミューズさんが風の精霊の巫女だって。でも良かったですね、ミューズさん。これで次期エルフ族のリーダーはミューズさんになりますよ」
私は微笑んで言う。
でも、
「いらない」
「……え?」
ミューズさんが珍しく、それだけははっきりとした口調で言った。
そして、私の前にやってくると、なぜか跪いて、手を握られる。
「ん?」
「私の呪いを解いてくれたうえに、エルフの里までついてきてくれた聖女セラ様。そして妹ミスティカの悪行を暴くためにあえて罠にまでかかってくれたこと、エルフの姫として感謝の念に堪えません」
あ、ばれてましたね。
解毒は癒しの基本のキですから、病魔を退治する快感のためなら犯しても良いリスクだった。
それにしても、いつものミューズさんとは違う雰囲気。これが本来の姫としてのミューズさんなのだ。
「私の風の祝福は常にあなたと共にありたいと思います。許されるなら、あなたの癒しの旅に私を加えて下さい」
「それは、エルフの族長の地位を捨てるということになりますよ? 私は世界中を巡って癒しまくりますから」
「はい、そんなつまらない地位はいりません。セラ様。いいえ、セラ師匠! 一生あなたと共にいさせてください。それが私の生まれた意味です!」
な、何だか告白みたいですね。
ところで、
「ぐ、ぐぎぎぎぎぎぎ。つまらない地位、ですって! 私の地位がつまらないですって!」
ミスティカさんが怨嗟で人を呪い殺せそうなほどの瞳でこちらを睨みつけていました。
「絶対にここから逃がさないわ。私を舐めた事、後悔なさい!!」
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「聖女セラ、先代魔王リリ、エルフ族ミューズ達はこの後一体どうなるのっ……!?」
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