23.聖女さんは呪いを解いてエルフを救う
「で、でも今まで全くできなかった魔法が、こんなにすぐに使えるなんて。さっすが師匠です!!」
「ミューズさんには元々才能があったんだと思いますよ。私は少しお手伝いをしただけで、大したことはしていませんよ?」
そう微笑みながら言うが、
「この御恩は一生忘れません! いえ、むしろ一生をかけて、師匠に恩返ししたく思います。このエルフ一族の元王女ミューズ・ルナール・レジーナの名のもとに忠誠を誓います!」
えええええええええええええええええええええ!?
「お、王族だったんですか?」
「あれ? 言ってませんでしたか?」
「聞いてませんよ! それに、王族がなんで追放されてるんですか?」
そう言うと、ミューズさんは燃え尽きたような態度で、
「エルフも色々ありまして。ええ、本当に色々と……」
はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~、というながーい溜め息をついたのだった。
聞いてはいけない問題だったみたい。
「それにしても、どこがどう変だったのじゃ?」
ありがたいことに、リリちゃんが話題を変えてくれたので、話をそちらに移した。
「ええ、そうですね。精霊言語を見ていきましたが、明らかに変な箇所があったのでそこを直しました」
「一瞬で分かってしかも修正までしてしまうなんて、さすが師匠です」
「慣れれば誰でも出来ますって。で、ですね。やはり呪いの言葉が刻まれていたんです」
「呪い……一体誰が……」
「そこまでは分かりません。何せ隠蔽されていましたから」
「い、隠蔽ですか!?」
「はい」
私は精霊言語が分からないみんなにも、分かりやすいように説明する。
「精霊言語は解明されていないとはいえ、この言葉は使用しないほうがいい、というものが確実にあります。えーと、例えばわざわざ来てもらった精霊さんに失礼な言葉とかですね」
「ええ!? 私の魔法陣ってそんなことになっちゃってたんですか!?」
「あー、そうですね。簡単に言えば、『わざわざ呼び出してやったんだから感謝しろ』という意味の精霊言語がですね、普通感謝を示す精霊言語のところに隠蔽するように刻まれていました。これは精霊さんも怒るでしょうね」
「だ、誰がそんなことを……」
私はその言葉に微笑む。
「魔法が使えない、という症状は私がこの数日、ミューズさんの魔法陣をチェックすることで解決します。しかし」
私の目的は根本治療。
そして、エルフさんの治療は初めて。
テンションも上がるのはしょうがない。
「その魔法が使えないという病魔を発生させた、呪いをかけた本人に会わないと、また呪いをかけられ、再発する恐れもあります。だから行きましょう」
「い、行くってどこにですか?」
ミューズさんのその言葉に、私はただ微笑んだ。
「エルフの里です。そこに病魔の元を作った張本人がいるはずですよ」
「エ、エルフの里に~!? で、でも危ないんじゃ?」
その言葉に私は首を縦に振る。
「そうですね。実にエキサイティングですね。病魔との戦いは。ふふ」
「あきらめよ。ミューズ。この聖女は、儂らと同じ物差しでは測ることは不可能なのじゃ」
何だか若干諦められたような、残念がられたような気がしますがどうしてでしょうか?
ともかく、治療のために私たち一行はエルフの里へと一路馬車の進路を向けたのだった。