2.村人の病を癒したらすごく感謝されちゃいました
さて王都に少し滞在した後、私はミリゲット村という寒村へやって来た。
疫病が蔓延しているという噂を聞いたので、王都を離れて急行してきたのだ。
「あら」
早速入口に村人がいたので、話しかけてみる。年齢は初老くらいだ。
「村人さん、村人さん。ここはミリゲット村であっていますか?」
「そうだが、ここを通す訳にはいかん。早く帰れ!!」
何だか剣呑な雰囲気で追い返そうとしてきた。
でも、ここで帰るわけにはいかない。
何せ恐ろしい病魔がうずまいているというのだから。どこまで私の力が効くか分からないが、頑張って少しでも村の人々のお役に立つのだ。
「どうして追い返そうとするのですか?」
「ふん! お前の知ったことではない! いいから、悪いことは言わん。この村には近づくな。もうそっとしておいてくれ」
ふむ。
最初はよそ者に対する意地悪で言っているのかと思ったが、どうやら違うようだと察する。
「優しい村人さん。あなたは私のような村外の人間に病が感染らない様に、わざわざ門番をしてくれているのですね?」
「ふん、馬鹿を言うな。よそ者を入れたくないだけだ。さあ、帰った帰った! それと、俺にもう話しかけるな」
「なるほど!やはり病気が感染らないように気を使ってくれているのですね!」
「しつこい女だな。そんなんじゃ、ゴホ!!!! ゴホゴホゴホ!!!!!」
突然、強くせき込みだす。と同時に、見れば、手の平に軽い血のまじった痰がついていた。
「やっぱり! あなたも罹患しているじゃないですか! 見た所、漏魔病か」
「……触るな、くそ。あんたにも伝染っちまうぞ。この不治の病に」
門番の男性はとても優しい方のようだ。
自分が重い病に苦しんでいるというのに、こうして他人に気を遣うことが出来る。
でも、
「一つ間違いがありますよ。村人さん?」
「はぁ? 何を言って……」
男は怪訝な表情を浮かべる。
「それは不治の病なんかじゃありません。魔力を溜めておく魔力胞という体内の器官の疾病です」
「そんなことは知っている! だがこれを治せるような癒し手なんて全世界でも数えるほどしかいない!」
「えっ? そんなに少ないんですか?」
それは意外だった。
私は確かに優れた癒し手と言われて王家に仕えていたが、そこまでだとは思っていなかったのだ。
まぁ、実際にこの男性が完全に正確な知識でしゃべっている保証はない。
いや、むしろこのような致死性の病魔に冒されれば、大げさに言いたくもなるだろう。
それにしても、漏魔病の原因は何だろうか?
ただ、原因が分からないが、今はそれどころではない。まずしなくてはならないのは。
「行きますよ、村人さん」
「な、なにを……」
私は神に祈る。癒しを行うのは神の恵みであり、その子供たる精霊の起こす奇跡だ。
「水の精霊ウィンディーネよ、彼の者の病をいやしたまえ。『生命の水』」
私が呪文を唱えるのと同時に、先ほどまで土気色だった男性の顔色がみるみる上気していく。
「な、なんだ!? さっきまで息苦しくて、立ってるのもやっとだったのに!? そ、それに、なんだか久しぶりに…‥、腹がへったな」
「健康になった証ですね! いやぁ良かった良かった!」
「あ、あなたは一体、何者だ……。い、いえ、どなたなのですか!? こ、こんな奇跡、信じられない!!」
「大げさですよ。うふふ、でも本当に元気になったみたいで良かったわ」
「で、ですが申し訳ありません。俺なんかに貴重な回復魔法を使ってもらって……。村には俺より幼い子供や女、それに老人たちが何十人もいるのです。なのに、俺に回復魔法をつかっちまったから、もうあいつらに使う魔力が残っては……」
「いえいえ。何回でも、いえ、何百回でも大丈夫ですよ!」
「…………は?」
私の言葉になぜか村人の目が点になるのだった。
「はあああああああああああああああああああああ!? あんな奇跡の回復魔法を何回でもおおおおおおおおおおおおおおおおお」
村人の驚きの声が、村中に響き渡るのだった。
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