18.一方その頃、第1王子とイゾルテは大失態を演じる
~第1王子視点~
「も、もう5人だと!?」
「聞いていないわよ!?」
僕とイゾルテが一斉に抗議する。しかし、
「そうなのですか? しかし、セラ様の際はやって頂いておりましたが……」
「なっ!?」
いきなり、忌々しい名前を聞かされて、思わずうめき声を上げてしまう。
「は、ははは。確かにセラに出来て、イゾルテにできないわけがないな。そうだろう?」
「も、もちろんですわ! 殿下! 私は宮廷聖女ですから」
「大丈夫そうでしょうか? では連れてきます」
そうして、次の5人も連れて来た。
「≪癒しの風≫!」
イゾルテがまたしてもケガを癒す。
若干、傷が残っている者がいるようだが、まぁ些細なことだろう。
「よし、これで……」
「では次を……」
なぁ!?!?
「ちょ、ちょっと待って頂戴! い、一体合計で何人いるっていうの!?」
「ああ、申し訳ございません。事前にお伝えすべきところを。50人となります」
「なんですって!? どうしてそんな重要なことを言わないの!? あ、あと40人も……」
「そ、そうだぞ! 余りにも無茶ではないか!!」
僕は怒鳴りつけるように抗議する。しかし、
「も、申し訳ありませんでした。何せ聖女……元聖女セラ様は百人くらいを一度に癒されて行かれたものですから、わざわざ数を聞かれたことがなかったものでして……」
「は?」
「な、なんですって? う、嘘でしょう?」
既に魔力を使い切ったのか、真っ青な表情のイゾルテが更に青くなって言うが、
「いえいえ、本当です。それにしても驚きなのはイゾルテ様です。あのセラ様を上回る癒しの力をお持ちだというのですから」
「ぐっ!?」
確かにそういうふれこみで、僕はイゾルテを宮廷聖女に据えたのだ。
だから、それを否定するわけにはいかない。
「あ、ああ。もちろんだ。行けるな、イゾルテ。あと40人だ」
「そ、そんな!? そのような魔力はもう……」
「無理でもなんとかしろ! そもそも君が失敗したら、僕の立場はどうなる!?」
使えない宮廷聖女を招き入れたとして、重大なペナルティを受ける可能性がある。この国は聖女との婚姻に非常に重きを置いているのだから。
「さあ、すぐに詠唱を再開するんだ!」
「ひ、ひいいいい」
最後の魔力を絞り出させるように、イゾルテに詠唱を続けさせた。
だが。
「も、もう無理です」
バタリ。
「イ、イゾルテ!?」
僕はやつれ果て、ボロボロの状態になって倒れたイゾルテを抱きかかえて絶望する。
こ、このままでは僕の立場が危うくなる!
「まだ20名は残っているのですが……。もしや、イゾルテ様はたった30人で限界なのでしょうか」
カイロックは訝しんだ表情を浮かべる。
「ち、違う! くそ、イゾルテ! おい、イゾルテ! なんとかせんか! おい! 起きろ!!」
「うう、で、殿下。ど、どんな方法でも宜しいでしょうか……」
「もちろんだ。どんな方法を使ってでも、この危機を乗り越えろ!! これは命令だ!!」
僕は喚くようにしていった。
「わ、分かりました。では」
イゾルテは無残な恰好で詠唱を開始する。
「「魅惑の精霊サキュバスよ。その蠱惑たる力の発現にて、彼の者の生命を吸収したまえ≪魔力吸収≫!」」
「う、うぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!??!?」
「魔力吸収の呪文です。癒しとは逆の効果とも言えますが、王家の方々はこれまで聖女を妻としてきたので魔力貯蔵量が多いのです。ゆえに、殿下にしか使用できませんでした。申し訳ありません」
「や、やめ……。やめ……」
「ですが。あと20人となれば、まだ不足しております。どんな方法でもとのご命令でしたのでもう一度失礼します。≪魔力吸収≫」
「んぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!??!?」
自分の身体から生命の源たる魔力が吸い取られて行くのが分かった。
僕はドサリと、その場に崩れ落ちる。
そして、そのままイゾルテが残りのけが人たちに回復魔法をかけていくのを眺めていた。
しかし、
「す、すみません。殿下。やはり、もう少しだけ足りません。これが最後です。≪魔力吸収≫……」
「―――――――――――――――――――――――――――――」
僕は言葉すら発せないほどの脱力感に苛まれる。身体がびくびくと震えるが、ただの反射だ。
もはや小指一本すら、動かす力は残っていなかった。
そして。
何とかイゾルテが50人を癒し終えるのと同時に、
「で、殿下……ぐはっ……」
彼女は僕の方にきてから、崩れ落ちた。
ちょうど僕の上に寄りかかるようにして。
なんでだ。
どうしてこんなことになった。
すぐに終わる治癒行為のはずだったのに。
楽勝の試練のはずだったのに。
これがきっかけで僕が王位につく日が一気に早まるはずだったのに!!
(どうしてこんなことにいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!)
僕の心の絶叫は誰からも聞いてもらえることはなく、僕が体中から体液を流して気絶していることに気づいた兵士に、急いで医務室に連れて行かれる途中で、その意識を途切れさせることになったのである。
何より、50人の治癒が達成できたとは言え、この醜態は隠し通せるはずもなく、今回の出来事のあらましは凄まじい速度で拡散してしまったのだった。
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