15.甘い物が好きなのは絶対秘密
馬車にてミリゲット村を離れたその夜、私は魔王さんに聞いた。
「魔王さん、そう言えばお食事はどうされていたんですか?」
実はミリゲット村では部屋が別々ということもあって、食事は一緒にはとっていなかったのだ。
「どうしたのじゃ、藪から棒に」
「いえ、そろそろ夜食を作ろうかと思いまして、準備をしようかと思うのですが……」
「うん」
「やっぱり、あれですかね? 魔王さんともなれば、ドラゴンを生きたまま捕食したり、野生動物をそのまま丸のみ、といった感じなのでしょうか!?」
私は少しだけ期待しながら聞く。
いかにも魔族っぽくてかっこいいと思ったからだ。
「お、おおおお。ま、まぁそんなところかのう」
「おお~、やっぱりそうなんですか。さすが魔族の王様です。ワイルドなのですね」
「う、うむ! そこはやっぱり元魔王なのでな。う、うむ、うむ」
「分かりました。ミリゲット村では色々と餞別の品を頂いています。特にこういうスイーツも頂いたのですが、私の方で食べちゃいますね。魔王さんがスイーツを食べるはずありま……」
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
光の速さで、手に持ったクッキーが消えた。
「……え?」
「……もきゅもきゅ。ごくん」
え?
今、ごっくんしました?
「……まさか魔王さん?」
「ち、違うのじゃ……」
まさかと思いますが、もしや……。
「魔王なのに、甘いものが、大好きなのですか……?」
「にょわあああああああああああ!! なのじゃ!!!」
魔王さんが赤面して、頭をブンブンと振る。
「わ、悪いか! 魔王なのにおやつが大好きで悪いか! なのじゃ! 魔王だからって甘いものが好きで悪いか! なのじゃ~!!」
「あらあら、まぁまぁ」
逆鱗に触れてしまったようだ。
「似合わないことは分かっておる。魔王なのに、甘いものなんて、スイーツなんて、と。うう、じゃからこそ、セラとは食事を共にせず、こっそりと料理を運ばせておったのじゃ。甘い焼き菓子やたっぷり砂糖を使ったケーキなんぞを食べるために!!!」
「あ、それで食事の誘いを断られてたんですね。スイーツを食べたいがばかりに、うふふ」
「うう、もはや魔王の威厳もここまで。儂は誰にも嗤われずにスイーツを食せる安住の地へ誘われん」
「まぁまぁ、魔王さん。大丈夫ですよ、笑ったりしませんから。ただ、可愛いと思っただけですよ?」
「それが馬鹿にしているのじゃ!」
「違いますとも。魔王でも女の子なんですから、お菓子が好きなのは当たり前です。ではでは、今日は私が簡単なケーキを焼いて差し上げますね」
「まじ!? ケーキ!?」
「そんなに食いつきが良いと、嬉しいですね。はい、お城ではこっそり作ってたので、他の方に食べてもらったことがないのですけど」
「なんと!で、では儂がセラの秘密のスイーツを食べる第一号の客ということか!!! これはアがるのじゃ!!!」
「そんなに楽しみにしてもらえると嬉しいですね。では、お夜食を頂いたら、作りますね。ホットケーキ」
「うん!! おお、セラについてきて良かったのじゃ!! 神様ありがとうなのじゃ!! 我が生誕に感謝するのじゃ!!」
「そんなにですか、ふふ」
こんな感じで本日のおやつはホットケーキになった。
「うう、うまい!! 誰にも隠れずに喰うスイーツがこんなにも甘美たりえるとは!! セラ、一生ついてゆくぞ! そして、そなたの道行を邪魔する者がおれば、何人たりとも、この先代魔王ブラッド・ヘカテ・リリモーティシアの名において!!!」
「それは良かったです。リリちゃん」
「リリちゃん!? ま、まぁいいか。うむ、特別に許す!!」
そう言って、またパクパクと食べ出した。
「また作りますね」
そう言って微笑んだ。
(魔族における名前は重要なんですが……)
なぜなら、人族などに比べて、魔族はその名前に縛られることが多い精霊に近い種族だからだ。
例えば、呪いなどをかけられやすかったりする。
だから、あえて聞かなかったのだけど。
ただ逆に、名前を聞かせてくれたのは、実は最大限のお礼ということに当たる。
魔族からすれば名前をばらすのは、好きにして良いというぐらい信頼している、という意味合いになるからだ。
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