14.私の元に来てください、魔王さん
「聖女様、もう行ってしまわれるのですか? もし宜しければずっとこの村にいて下さっても……」
「いえ。次の癒しを求める方々の元に参ります。私を必要としてくれる方がいる限り歩みを止めることはないでしょう」
「おお、なんと尊い。引き留めて申し訳ございませんでした。聖女様の将来に精霊のご加護がありますように」
「ありがとうございます。私もこの村の方々にとてもよくしてもらいました。あと、癒しまくれて気持ちよくなれたので、とても良かったです」
「え?」
「おっと。お忘れください」
私は微笑みを浮かべて誤魔化す。
「馬車のご用意は出来ています」
「何から何までありがとうございます。さて……」
私は見送りに来ている村人たちに混ざっている魔王さんに声をかける。
「じゃあ、行きましょうか。魔王さん。ところでどうしてそちら側にいらっしゃるので?」
「ええ!?」
声をかけると露骨に驚かれましたが。
「一緒に来てくれないんですか?」
「あ、あのなぁ……」
結構幼い顔をしている童顔魔王さんは呆れた顔をして言う。
「儂は先代魔王じゃぞ? 儂を連れて行ったらトラブルの元じゃ。それに老兵はただ去るのみ。晩節を汚すつもりはないのじゃ」
「ほほー」
私はつい笑みを深くしてしまう。はしたなくも。
「な、なんじゃ」
私の表情を見て、魔王さんが一歩下がった。
「どうやらまだまだあなたは癒しが足りない様ですね。それに、知っていますよ、魔王さん。本来魔王さんともあろう方が自己修復や自動回復のスキルを持っていないわけがないんです。なのに、密猟団さんとの戦いがギリギリの接戦だったのは、そのスキルを破棄したからでしょう?」
「それがどうしたのじゃ!」
「つまり、このままだと魔王さんは死んでしまいますね? もちろん、回復魔法をかけ続ければ別でしょうが、魔王さんの膨大な魔力貯蔵量を満たせる癒し手などいません」
「ふん、分かっておるではないか。その通りじゃ。ゆえに何もしなくともこの老兵は朽ち行くのじゃ」
「魔王さん!!」
「な、なんじゃ!?」
私が突然大声を上げたので、魔王さんがギョッとした表情をする。
しかし、私は彼女を抱き寄せて言った。
「私のところに来なさい」
「にょ、にょわわわわ!?」
なぜか魔王さんの心臓が早鐘を打っているようですが、私は気にせず言った。
「私には、あなたが必要です。魔王さん」
「へ? ほえ? にょわ~!?」
「いかがですか?」
魔王さんはなぜか赤面して、こちらの顔をチラチラと見てから、
「は、はい。なのじゃ……」
と、小さな声で呟いたのだった。
「おお……」
「素晴らしい……」
「尊い……」
村人さんたちがなぜか感動の声を上げていた。
こうして、フラフラとしている魔王さんと一緒に馬車に乗り込んだ私たちは、ミリゲット村を後にしたのである。
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