10.魔王さんは良い人です
「漏魔病の原因は魔王さんが原因なんですか?」
「くくく、その通りよ」
魔王さんは悪い顔で嗤いながらそう言った。
「先ほども言ったが儂は自死を選択しようとしていた。それならば魔力はもはや必要ない。自から湧き出る魔力すらも枯渇するほどの極限状態にまで追い込んでいた。そこを密猟団に見つかってしもうた」
魔王さんは続けて話す。
「あのような輩に殺されるのは魔族の沽券に関わる。ゆえに、儂は非情な選択をとったのじゃ! それこそが村人たちから魔力を頂くという残酷な仕打ちよ!」
魔王さんが熱弁する。
「漏魔病は生物が生きて行くのに必要な魔力を溜めておく貯蔵庫から、魔力が漏れていく現象のこと。精神力の源とも言われておる。もしこれが漏れだせば、人間は衰弱し、体力も衰え、ついには死んでしまう。じゃが、儂はそうと知りながらも、村人たちから魔力を吸収したのじゃ!!」
少し質問する。
「なんで密猟団さんは平気だったんでしょうか?」
「奴らは小癪にも抗魔力の護符か何かを装備していたようじゃった。貴様は圧倒していたがかなりの手練れじゃぞ、あれは? さすがとしか言えぬ」
「あはは、またまた~」
「またスルーされた。ああ、まぁ、もういいや。でじゃ、そんなわけで儂は悪の先代魔王であり、人間に病魔を振りまいた張本人。このまま野放しにしては人間にとって歩く災害となって歴史書に記されるであろう!!」
私はそこまでの話を聞いて、さらさらと手元の自家製手帳に聞いた内容をメモした。
「あの、何しとるんじゃ?」
「カルテですが何か? あ、そのまま続けて下さいね。詳細に色々話して下さり助かりますので~」
私は微笑んだ。
「うおい! そうじゃないじゃろ!? こんな恐るべき真実を聞かされて、なんでそんな冷静なんじゃ!?!??」
魔王さんはなぜか困惑しているようだ。
しかし。
「いえいえ」
私は満足して、メモしていたカルテ手帳をパタリ、と閉じて、
「魔王さんは良いヒトです」
そう言って、実に晴れやかな気持ちでニコリと笑ったのだった。
魔王さんの表情は固まり、そして、木々のざわめきも含めて、全てが一瞬静止したような気がした。
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