1.王家から追放されましたー♪
下記短編だったものを、長編化したものです。
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短編の続きは5話からです
「シスター・セラ! お前との婚約を破棄し、この城から追放する!!」
舞踏会でひときわ大きなざわめきが起きた。
それも当然。
なぜなら、私の婚約者であり、なおかつ第1王子であるカイル殿下が、唐突に婚約破棄を私に宣言したのだから。
周囲には、王族や公爵家の方々をはじめ、他の諸侯の方々もいる。
そして、傍らには私ではない別の聖衣をまとった、見目麗しい女性がいた。美しい黒髪に少しきつめだけどエキゾチックな魅力をたたえた瞳。通った鼻梁と非の打ちどころのない完璧な容姿だ。
その女性は腕を殿下にこれみよがしに絡ませて、私を余裕の視線で見つめている。
ここグランハイム王国の王城での最大規模の舞踏会で、しかも衆人環視の中で女性を傍らにしつつ、こうした宣言がなされるということは、既にしっかりと根回しもされているということだろう。
つまり私……宮廷付き聖女として第1王子の婚約者であった私は、非公式ながらも(そして後日公式に決定がなされるであろう)婚約破棄を受けたのだ。そして、この城からの追放も同時に伝えられた。これは宮廷付の聖女役からのクビを意味する。
要するに『とっとと城から出て行け!』ということだ。
そこまで理解した私は思わずお腹の底から声を出した。
「やったああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
と。
「……は????????????????????????????????」
周囲の反応がそれはそれは冷たかったことは言うまでもない。
私は元々平民の出身で、聖女としての回復魔法に秀でていたことから、王家に仕えることになった。
最初は喜んだ。
なぜなら、宮廷付の聖女となれば、沢山の人達を救うことが出来ると思ったからだ。
でも、私の思っていた宮廷での生活は、想像していたのとは正反対だったのだ。
王家の方々や貴族の方々というのは、基本的には自分たちのことしか考えていなかった。
平民のことなど、どうでもいいと思っていらっしゃったのである。
私がいくら懇願しても、平民たちを癒すために城を出ることは許されなかった。
『お前は王家を病魔から守ってればいいんだ!』
その一点張りだった。
確かに、王家の方々の病気を治すことも、神の御心に沿うことかもしれない。
でも、平民は薬もなく、医者の手も足りず、回復魔法を使える聖女の手も足りていないのだ。
その上、
『はぁ、何で僕がお前のような平民出身の聖女と結婚しないといけないんだ!』
婚約者である第1王子からはそのように言われる始末だった。
グランハイム王国では、最も強い癒しの力を持つ聖女と第1王子が結婚するというしきたりがある。
それが王家の力を強め、強靭な生命力を持つ子孫をはぐくむことにつながるからだそうだ。
でも、殿下は諦めていなかったのだ。
こうして、私の代わりの聖女を見つけてきてくれたのだから!
「なんだと、貴様! やったぁ! とはどういうことだ!!」
あれ? なぜか婚約破棄をしてこられた殿下の方が激怒されている。
「いえいえ、これで一般の大勢の方々の病を治すことが出来ると思うと嬉しくて」
「くだらん。平民が病に苦しむのは当然だ! お前のそうした王家を軽視したことが今回の婚約破棄につながったのだ! 宮廷聖女の地位も剥奪される。ははは! 残念だったな、シスター・セラ! どうだ少しは悔しいだろう!!」
「いえ全然」
「なっ!?」
王子は顔を不快そうに歪めますが、そんなお顔をしないでください。
「人の命は平等ですもの。民草を大勢救うのが私の本懐です! 婚約破棄、ありがとうございます!!」
私はウキウキだ。
これでいーっぱいの人達を救うことが出来るのだ。王国内で少し活動したあとは、癒しの旅に全世界を巡ろうと思う。
あっ、そうそう。
私は新しい殿下の婚約者の聖女の肩をガシっとつかんだ。
「な、なんですか!? 私が殿下を横取りしたとでも!? そもそもあなたが平民を、平民をとうるさいからこんなことになったのですよ!!」
「ありがとうございます!!! 名前も知らぬ代わりの聖女さん!!!!」
「……は、はあ? 私はイゾルテよ!!」
呆気にとられているようですが、私はウキウキが止まらず気づけない。
まさに救いの女神に見えていたので。
「イゾルテさん! あなたが身代わりになってくれたおかげで、私は宮廷聖女を追放されることが出来ます! これから好き放題に、民草たちを癒していけます! これほどうれしいことはありません!」
手を握ってブンブンと握手する。
「はぁ~? 平民なんか放っておけばいいでしょ!? それとも同じ平民のよしみかしら? ふん、これだから平民出身者は困ります! やはり私のような由緒正しい家柄から出た聖女でなければ殿下がお可哀そうだわ」
あらあら、まぁまぁ?
「やっぱり、イゾルテさん、あなたにはぴったりの職場だと思います。癒しを与える仕事なのですが、やはり色々マナーであったり、言葉遣い、こうした社交なども求められるので、私にはどうにも馴染めませんでした。私はただ大勢の方々の癒しを与えたかっただけですので」
というわけで、
「さようならー!!! こんなこともあろうかと、荷造りは完璧にしておりましたので!!! しばらくは王国の民の救済のために数日とどまりますが、困っている人たちがいる所を沢山巡る諸国巡礼の旅に出ますので、王家のことは宜しくお願いします!!!」
笑顔!
とにかく嬉しい!
大勢の人達が私を待っている!!
待っていて、私の聖女ライフ!!!
いっぱいたくさん癒して差し上げますからね!!!
夢にまで見た生活が、私を待っているのです!!!!!!
こうして私は既に荷造りされていた荷物を持って、もともと荷物はそれほどないのでそのまま馬車に乗り込んで王城を後にしたのだった。
~なお、王城では~
「くそ! なんなんだあいつは! 最後まで忌々しい!」
「まあまあカイル殿下、せいせいしたではありませんか。それに殿下にはこの私がおります。王家の聖女は私がしっかりつとめますから」
「そ、そうだな。ふぅ、確かに平民が出て行ってせいせいしたよ。イゾルテ公爵令嬢、これからも頼むよ。ふふ、身分も美貌も申し分ない。やはり僕に相応しいのは君さ」
「はい。お慕いしております殿下。うふふ」
そんな会話がなされたようであった。
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