~死者~
――アンデッド。
それはかつて人間であった者たちが、生への執着を捨て去り、死を受け入れられず、彷徨っている姿。
その姿は生前とはかけ離れ、腐敗した身体に、腐臭を放つ不浄の存在。
その身に宿す魔力により、魔物へと変貌すると言われている。
その力は強大であり、並の冒険者や騎士では歯が立たないほどだ。
また生者を襲い、犠牲者を同種のアンデッドや従僕にしてしまうため、放置しておくことはできない。
そのため、冒険者は討伐の依頼を受けたり、騎士団は定期的に巡回を行っている。
だが、それでも被害は後を絶たない。
なぜならば、彼らは神に背き、神の裁きを受けた存在なのだ。
故に、神に逆らった愚か者に相応しき末路。
それが彼ら―― "死者"である。
「森の奥深くにね、アンデッドを召喚した奴がいるみたいなんだよ」
カナンの話を聞いて、わたしは固まってしまった。
おそらくだが、わたしが野盗に襲われて行方不明になったのを知って、捜索隊を出してくれたのだろう。
そして、その途中でセフィドさんがわたしを助けてくれた場面に遭遇してしまった。
だから、こんなにも村の人たちは慌ただしくしているのだ。
セフィドさんは申し訳なさそうな表情をしていたけど、カナンは逆に嬉しそうだった。
わたしも、彼が助けてくれなかったら今頃は…… そう思うとゾッとするけど、こうして無事に帰ってこられたことが嬉しかった。
それにしても、わたしのせいで迷惑をかけちゃったなぁ。
わたしがそんなことを考えていると、カナンが話しかけてきた。
「ねぇ、エレ。」
その声音はどこか真剣なもので、わたしは思わず身構えてしまう。
でも、カナンの口から出てきた言葉は――
「この人、誰?」
至極真っ当な質問だった。