~警戒~
「そろそろ名前を聞いても大丈夫かい?」
わたしは彼に連れられ、森の奥へと進んでいた。
最初は警戒していたけど、今はもうそんな気持ちはなかった。
「エレ、と言います」
彼はわたしが話せるようになるまで待ってくれていた。だから、今度はきちんと自分の言葉で話すことができた。
わたしの言葉を聞くと彼は嬉しそうに笑った。
「いい名だね。」
その笑顔を見た時、わたしはなぜか胸が苦しくなった。
なんだろう?この感じ。今までに味わったことのない不思議な感覚だった。
彼はわたしの手を握りながら言った。
「もうすぐ村につくよ」
その言葉通り、しばらく歩くと村の入口が見えてきた。
すると、村の人たちが慌ただしく動いているのが見えた。
どうやら、わたしたちがいなくなったことに気がついて探しに来てくれたみたい。
わたしはホッとした。
でも、どうしてみんなあんなにも慌てているんだろう。
「エレ!」
村に向かう途中、名前を呼びながら走ってくる親友のカナンの姿があった。
わたしはその姿を見て、思わず驚いてしまった。
そんなわたしの様子を見たカナンは、息を切らせながらもわたしに飛びつき、抱きついてくる。
わたしは、どうしていいかわからず、とりあえず彼女の背中をさすってあげた。
しばらくして落ち着いたのか、カナンは顔を上げて言った。
その目元は赤く腫れていて、泣かせちゃったんだなぁと思う。
わたしは彼女に謝ると、彼女は首を振って言った。
「ううん。私が勝手に泣いてるだけだから気にしないで。
それよりも良かった。無事で本当によかった……」
そう言ってカナンはまた泣き出してしまったので、わたしは何も言えず、ただ抱きしめることしかできなかった。
それから少しして、わたしはカナンに事情を説明した。
わたしが野盗に襲われて、セフィドさんに助けられたことを話すと、カナンはセフィドさんに感謝の言葉を告げた。
でもセフィドさんはどことなく悲しげな様子で、お礼はいらないと言った。
その後、わたしは村長の家に事情を説明しに、カナンも交えて、向かう。
「でも本当に無事でよかったよっ!!」
屈託のない笑みを浮かべながら、カナンは続けた。
「この辺にアンデッドが発生したみたいで、みんな慌ててるんだ」
その一言に、わたしはただただ固まってしまった。