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【書籍版6巻発売中!】怪物たちを統べるモノ ~能力『プレイヤー』使いは最強パーティーで無双する!~【コミカライズ2巻発売中!】  作者: Sin Guilty
第一章 『封印されし邪竜』編

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第051話 『王位継承権者』④

「それで本日の御予定ですけれど……本来は魔物支配領域(テリトリー)へお連れいただけるとのことでしたが、すでにソル様の力は充分に理解できておりますので無理には……」


 本来正体を隠したフレデリカたちがスティーヴから強引に勧められたのは、「元黒虎のソル・ロックが立ち上げたクラン『解放者(リベルタドーレス)』護衛による魔物支配領域の視察」だった。


 もちろんその対象は『禁忌領域』などではないごく普通の領域だ。


 それでも命の危険が伴うその視察よりも、なぜかスティーヴには真剣に頼み込まれた「夜更かしをしてくれ」という奇妙な依頼。

 それを(ないがしろ)にせずきちんと行ったことによってソルの実力を知った今となっては、フレデリカの言うとおり無理に行く必要などないのは確かだ。


 領域主(ボス)こそいまだ討伐不能とはいえ普通の冒険者たちが討伐できる程度の魔物(モンスター)が、昨夜ソルが狩った正体不明の魔物(アンノウン)よりも強いはずなどないからだ。


 となればフレデリカとしては、ソルとの距離を詰めるために時間を有効利用したいというのが本音のところである。


 もちろん当初に予定としていたとおり、魔物との戦闘を至近距離で確認できることに魅力を感じてもいるのだが、自身が完全に「お客さん」となってしまうその場でソルとの親交を深めるのは少々難易度が高いと判断しているのだ。

 この短時間にフレデリカなりに把握したソルの性格では、命懸けの場で「きゃあ怖い」などと阿呆な行動をとるような女を嫌うことはまず間違いない。


 なによりも戦闘であれ色恋であれ、駆け引きというものは自分の得意フィールドに引きずり込むことこそが必勝の初手となる。


 であれば嫌味にならぬ程度にこの城塞都市ガルレージュの総督府や駐屯軍本部あたりへ、見学とでも称してソルを連れ込みたいところなのだ。

 ソルに通用するかどうかはまだ不明だが、フレデリカを第一王女であることを知る者たちの前で、ソルへの好意を明確にすることにはある程度の効果が見込める可能性が高い。


 意外なことにソルは「王族」というものにごく普通の特別感を持ってくれているらしく、そうであれば世の多くの男たちと同じように、高貴な立場の者(フレデリカ)から公衆の面前で好意を寄せられることを忌み嫌うということはないだろう。


 もしも面倒くさがられたら、すぐに方針を変更すればいいだけだ。

 フレデリカは今、自身が近い将来に有力者に嫁いだ際にその相手を夢中にさせるべく身に付けた手練手管を、一通りソルに試してみることを最優先事項(プライオリティ・ワン)としている。

 

「いえ、それは予定通りに行きましょう。フレデリカさ……も魔物(モンスター)との戦闘を経験しておく方がいいと思うし、それ以上にそうした方がいい理由もある」


「承知致しました」


 だがフレデリカにどんな思惑があれど、ソルがそう言うのであればそれに従うことこそが優先される。

 よって完璧な笑顔を浮かべ、一切の遅滞なく了承する。


 昨日の寝不足程度で綻ぶような美貌方面の武装ではないが、叶うのであればより完璧な状態でソルとの初邂逅を果たしたかったフレデリカである。


「でしたらたとえ近衛であっても足手纏いである事も理解しておりますので、私だけでも構いませんが」


 そして当初の予定通り魔物支配領域(テリトリー)へ赴くというのであれば、極力二人きりに近い状況へ寄せるべく努力もする。

 ルーナが同行するのは仕方がないとはいえ、同性とはいえ近衛騎士が一緒ではフレデリカの言動も制限されることになるし、なによりソルも気を遣うだろう。


 だがフレデリカが突然そんな無茶を言いだしたことに、2人の近衛騎士は動揺を隠せていない。


 近衛として王族を護衛もなく冒険者に委ねることなど本来論外だ。

 だが昨夜フレデリカと共にソルの戦闘を見ているがゆえに、即座に否定することも出来ない。


 普通の魔物支配領域へ赴く程度で「足手纏い」扱いは心外だが、ソルとルーナに同行する以上その扱いを不当だといえるだけの力も持ち合わせてはいない。


 つまりものすごく困惑している。


「大丈夫ですよ、基本的にルーナの側から離れなければ危険はありません。そうですね、おおよそ迷宮を攻略する時の距離感で問題ないと思います。だよね?」


「問題ありません。任せてください」


 ――近衛なんていう超エリートでも、こんな風に動揺するんだな。


 クールそうな二人が慌てる様子を見て、思わず笑ってしまったソルが助け舟を出したのだ。


 フレデリカ直属ということで女性が選ばれているのだろうが、二人ともフレデリカと並んでいても見劣りしない美貌にも拘らず相当な戦闘能力を有していることは間違いない。

 王立学院に通う期間が重なっていた相手ではないが、今ソルの表示枠に映っている『遠剣遣い』と『鋼糸遣い』というのはかなりの希少能力(レア)である。


 王家との誼ができるということは、こういう希少能力者たちを『プレイヤー』で育成できるのだという事実にちょっと嬉しくなり始めているソルである。


 そのためにもおいて行くなどという、もったいないことをするつもりはない。


 それに昨夜ルーナが展開した結界は、衛星軌道からの攻撃ですら弾ききってみせた。

 あれがある以上、もはや地上において「危険」という二文字はルーナと共にあるものにとって存在しないとさえ言える。


「とのことです」


 ほとんどない胸を逸らしてふんぞり返るルーナを笑ってみながらソルが伝える。

 いやふんぞり返るだけのことはあるのだが。


「ああ、それと確認しておきたいのですが、この御二人の騎士様はフレデリカ直属と考えても問題ありませんか? あー、回りくどいか。エメリア王国よりもフレデリカを優先できる人たちですか?」


「どうでしょう?」

 

 わりと素に見える悪戯っぽい笑顔を浮かべながら、フレデリカは二人の騎士を見る。


 ソルがこれからする実験には、凄まじい実利が伴う。


 ソルが手を組むのはあくまでもフレデリカとであって、今はまだエメリア王国そのものとではない。

 ゆえにこの騎士たちがフレデリカに忠誠を捧げているのであれば問題はないが、あくまでもその剣がエメリア王国という国家に捧げられているというのであれば少々厄介になる。


 この後連れて行くということは、この二人がエメリア王国で最強の騎士になるということだからだ。


「もとよりそうですと言えば嘘のように聞こえますでしょうが、私としてはその通りです。それにソル様の力を知った今となっては、ソル様と誼を結べたフレデリカ様を御護りすることこそがエメリア王国の、ひいては世界のためになるとも判断しております。これで答えになりますでしょうか?」


「充分ですね。もうお一人も同じと思っても?」


「はい。申し訳ありません、この者は口下手でございまして……」


「ああ、かまいません。フレデリカが嬉しそうなので信じます」


「っ――」


 近衛としては褒められたものではないのかもしれないが、返ってきた答えは概ねソルを満足させる内容だった。思えばそれも当然で、だからこそフレデリカが内々に自身の保有戦力を強化する場に伴って来ているのだろう。


 ある程度自由に動く代償としてのお目付け役、という可能性も捨てきれなかったので確認したに過ぎない。

 これから自分たちが得る利益を知らず、また答えを聞いた時にフレデリカが浮かべた嬉しそうな表情からも、信用して問題ないだろうとソルは判断した。


 それを指摘してみせたら、真っ赤になってしまったフレデリカである。

 ソルにしてみればフレデリカが初めて本当の素を見せてくれたようで、可愛らしいと思う。


 それすらも演技である可能性は排除してはいないが。


「そのかわりというわけではないのですが、こちらも2人ほど同行者が増えてもいいですか?」


「なんの問題もございません」


「助かります。スティーヴさん、リィンとジュリアをここへ呼び出してもらえますか?」


 近衛騎士と共に、リィンとジュリアの2人も連れて行く確認をソルは取った。

 ソルは昨夜ルーナの結界を確認するまでは基本的にルーナと二人で当初の攻略を進める予定だったのだが、安全が保障されているのであればやっておきたいことがあるのだ。


「わかった。ったく、フィオナの奴が今日無断欠勤でな、家にも居やがらん。誰か女性職員に呼びに向かわせるよ」


「……ありがとうございます」


 もうフィオナはこの世にいない。

 いや本物のフィオナは、もっと前にいなくなってしまっていた。


 スティーヴもある程度なにかを感づいてはいるのだろうが、ソルがなにも言わない以上、自分から踏み込むつもりはないようである。


「大変失礼とは存じますが、一応確認させていただきます。王女殿下はソル様の味方になってくださるということで間違いありませんね」


 見慣れない女性職員に指示を出し終えたスティーヴが、冒険者ギルドの重役の顔をしてフレデリカに話しかける。


 知っているからとて王族の名を許可なく呼ぶなど論外であり、直接顔を見て話しかけることも不敬である。

 だが今はそんなことに拘って黙っているべきではないと判断したのだろう。


 もちろんフレデリカもここでそんな世俗の礼儀を持ち出すつもりなどありはしない。

 近衛の二人もそれくらいは弁えているらしい。


「私個人につきましては我が名にかけて誓います。私のすべて――立場、力、心から躰に至るまですべてソル様に捧げることを御許し下さい」


 王家の血を引く者が己が名にかけて行う誓いは軽くない。

 それどころかフレデリカの物言いは、神に仕えることを宣誓する巫女のようですらある。


 本気でえらいことになってるなあと妙な感心をしてしまうスティーヴではあるが、今ソルが保有している力からすれば神の如く扱うことこそが妥当とも言える。


 ソルを様付きで呼ぶなどをしてふざけている場合ではないのかもしれないが、ソルとそういう気安い会話をできることこそが、今後のスティーヴの立場を盤石のものにするのかもしれない。

 要らん敵も生み出すかもしれないのだが。


「ありがとうございます。それでしたら王女殿下の御意見を伺いたいことも多々ございます。少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」


 スティーヴにしてみれば、この確認は必須だった。

 冒険者ギルドにおける自分の権限をフルに使って動き出す以上、言質を取った程度でもあると無いのとでは大違いだ。


 王族が自らの名にかけて誓ったと伝えれば、それを軽く扱う者などいはしない。

 当然、その手札を切るべき相手は慎重に選ぶ必要はあるとはいえだ。


「ソル様がよろしければ」


「確かに王族視点での判断も欲しいですね。頼めますか?」


「喜んで」


 ソルにしてもスティーヴの提案は確かにありがたい。


 よってリィンとジュリアが冒険者ギルドへ到着するまでの時間を利用して、昨日スティーヴと粗々を決めていた今後の行動予定を一通り説明することにしたのだ。


 それを聞くフレデリカは穏やかな笑顔を浮かべて時折相槌をうちながら、内心の驚愕と怖れを表に出さないように苦労することに相成った。

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[一言] これはパワーレベリング不可避
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