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【書籍版6巻発売中!】怪物たちを統べるモノ ~能力『プレイヤー』使いは最強パーティーで無双する!~【コミカライズ2巻発売中!】  作者: Sin Guilty
第三章 『死せる神獣』編

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第142話 『魔大陸再起動』②

 大陸東部湾岸線。


 この大陸において四大強国に数えられている大経済圏、ポセイニア東沿岸都市連盟の主要都市国家は湾岸地域に集中しており、その様子は巨大な港湾都市の連なりと言っても過言ではない。


 素朴な海岸線などもはやまったく存在せず、大型船でも入港可能なように最高水準の技術を以て人の手が入った人口の港の連なりは、内陸部の下手な王都王城などよりもよほど人の力が自然を如何様にでも改変できるのだという奇妙な万能感を感じさせるものだ。


 だが常であれば昼夜を問わず入出港を繰り返す貿易船のおかげで、冒険者たちの好む夜街に劣らぬほどに眠らない港町の多くは今、ともすれば建設以来初めての無人状態となっている。


 時間は深夜を少し回ったところ。


 今宵は綺麗な月夜で充分に明るいとはいえ、一隻の船もなければ人の出入りもなく、かなりの高度から見下ろしても湾岸線一帯に一切人工的な灯が燈っていないのは確かに不気味でしかない。


 まるで一夜にして住人すべてが消えてしまったという、神話に語られる『呪われた街』も斯くやという様子なのである。


 だが住民たちは消えてしまったわけではない。


 汎人類連盟の主導によって、()()()に備えて内陸部へ避難しているだけである。

 いつもは港に溢れている船たちも可能な限り南部の港へと避難し、それが不可能なものは陸揚げされてドックに収納されている。


 本来であれば、たった一週間程度で実現可能なことではない。

 経済的損失も考えれば、こんな風に一糸乱れぬ避難行動などは現実的ではないだろう。


 だが今この大陸にはソル・ロックという絶対者が君臨しており、その指示に従順に従う汎人類連盟、中でもポセイニア東沿岸都市連盟の執行部がこの機に良いところを見せるべく、金に糸目をつけずに徹底した避難活動を推進したことによって実現したのだ。


 だがほとんど誰もいない状況にもかかわらず、静寂に包まれているわけではない。


 この一週間、断続的に続いていた地震は今もなお止まっておらず、大きな揺れではないものの肚に響く低音と微振動を発し続けている。


 それだけではない。

 

 遥かな沖合では巨大質量が急速に浮上してきている影響か、上空に分厚い暗雲が垂れ込め、雷光を迸らせているのが確認できる。


 だが今それを我が目で視認できているのは三人だけだ。


 ソル・ロック。

 全竜ルーンヴェムト・ナクトフェリア。

 妖精王アイナノア・ラ・アヴァリル。


 もっとも巨大な港湾都市の港の遥か上空に『浮遊』し、守るべき湾岸線を一望できる位置から『魔大陸』の再浮上を待ち構えているのだ。


 『固有№武装(ナンバーズ)』を身に付けたリィンたちでも対処できない敵が顕れる可能性を鑑みて、対魔大陸の戦力は『プレイヤー』とそれが支配する『怪物』二体と定められた。


 少数精鋭の究極系ではあるが、全竜がいる以上、それ以外の全戦力を糾合したところで半分にも及ぶまい。

 その上自然を統べる『妖精王』も従え、万全の体制で『プレイヤー』が控えているともあれば、冒険や攻略のロマンを除けばこの体制が今のところ最強であることは間違いないのだ。


 ちなみに『怪物』の一体であるアヴリールは、ソル一党の最強戦力が一点に集中して手が離せない中、人類以外の介入がある可能性も想定して、フレデリカたちと共に臨戦態勢でエメリア王国王都で備えている。


 微振動が先刻からだんだん大きくなってきている。


 それに伴う地鳴りの低音も、そろそろ会話すら難しくなるほどに大きくなってきており、遥か沖合に発生している雷雲に走る雷光の頻度はもはや秒単位だ。


 まもなく『魔大陸』が深海より浮上するのだ。


「ルーナ、アイナノア、準備は良い?」


「問題ありません」


「♪~」


 世界が終わるかのような鳴動の中、ソルだけが少々額に汗しているが、全竜(ルーナ)妖精王(アイナノア)は余裕しゃくしゃくの構えである。


 彼女らにしてみれば、千年前に浮かんでいた土塊が再び浮上するからとてそれがいったい何なのだという程度の認識なのだろう。


 だがソルからの指示で、人の創り上げた湾岸都市群に被害が及ばないようにすることは理解できているので、その準備に抜かりはない。


 鳴動が最高潮となり、沖合の雷雲がもはや雷の塊のように変じた瞬間、()()は来た。


 ソルは自分なりに「大陸」だと意識していたが、それが遥かな沖合に突如生まれた壁の如く浮かび上がり、そこから膨大な海水を瀑布としてすべり落としながらその高度を上げていく様子には度肝を抜かれる。


 さっきまであったはずの雷雲は消し飛ばされており、まずは膨大な空気の壁が爆風となって押し寄せる。

 それと引き換えるように海が沖合に向かって逃げるように無くなってゆく。


 もはや鳴動による轟音などという域ではなく、膨大量の水――海そのものが引きずり込まれる際に発する濁流の音と、迫りくる大爆風が引き起こす妙に甲高い音が現実感を失わせる。


 もしもこのままこの風圧が湾岸都市部にまで届けば、後の大津波を待たずして建造物やあらゆる木々は薙ぎ倒されてしまうだろう。

 そしてその被害範囲は、内陸部のかなり深いところまで届くこともまた疑いえない。


 だが――


『♪~♪♪~』


 耳障りな爆音が突如として消滅し、それを上書きするかのように『妖精王』――アイナノア・ラ・アヴァリルの言葉にはならない歌声が響く。


 それと同時。


 押し寄せる爆風は消滅することなく、『妖精王』を中心に渦を巻きその支配下に入った。


 外在魔力すら自在に操る自然現象を統べる王こそが『妖精王』なのだ。

 その前にはどれだけ膨大な質量の高速移動によって生み出された爆風と言えども、そよ風を制御することとなんら変わりはない。


 そしてそれは一度引き、屹立する壁のように押し寄せる海水の暴威――大津波とて同じ事だ。


 一度は静寂を取り戻したすべての海岸線に、嘘のように彼方まで列なる水の壁が地鳴りのような轟音と共に怒涛の勢いで押し寄せる。


 だがそれはもともと海であった線に辿り着く遥か手前から、くるくると舞う『妖精王』に合わせるようにして宙へと浮かびはじめ、その勢いをそのままに天に上るかのように進行方向を変えたのだ。


 それらはまるで空中に生まれた大河の如く渦を巻き、やがて巨大な濁流の巨大水球と化してゆく。

 その巨大さは実際とは違うとはいえ、まるで地上に降りてきた月の如く常軌を逸したサイズとなってゆく。


 間違いなくこの大陸のどこにいても、空を見上げれば『妖精王』が大津波で作った海水の巨大球をその目にすることができるほどのもの。

 逆に言えばその水球にさえぎられて、その向こうに浮かび上がったはずの『魔大陸』が視認できないほどの規模である。


 そして地鳴りはやみ、押し寄せる波も途絶えて干からびた海岸線崖を晒すようにして静寂に包まれる。


 だがもちろんこれで終わりではない。


「さて、『魔大陸』の再浮上に伴う自然災害はこれで完封できたかな? アイナノアお疲れ様」


「♪~」


「さて次は本命だね」


「お任せください」


 全竜(ルーナ)の転移で巨大水球を背に、『魔大陸』の見える位置に移動しているソルたちの眼前には、雲霞の如く魔大陸から飛び立ち始めた旧魔族が使役した『魔物兵器』たちが殺到して来ている。


 ソルの顔横に浮かんでいる表示枠が捉えるその総数はとっくに万を超えており、桁をすっ飛ばすようにしてまだまだ増え続けている。


 これらの上陸を許せば、津波と同じ、またはそれ以上の被害を生じさせることは疑いえない。

 つまり一体も残さず殲滅する必要があるのだ。


 だが全竜(ルーナ)妖精王(アイナノア)も、それを不可能ごとだとはまるで思ってはいない。


 特に全竜(ルーナ)はやる気満々である。


 ここの所出番がなかったと自分では思っているルーナにしてみれば、戦闘力――暴力が必要とされる場面こそ、自身がソルの役に立てる最大の場所なのだから。


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― 新着の感想 ―
[一言] とても面白かったです。次の更新が待ち遠しい…
[一言] 最新話、、来い!(願望)
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