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【書籍版6巻発売中!】怪物たちを統べるモノ ~能力『プレイヤー』使いは最強パーティーで無双する!~【コミカライズ2巻発売中!】  作者: Sin Guilty
第三章 『死せる神獣』編

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第141話 『魔大陸再起動』①

 『魔大陸』


 同じ人型であり言語も理解でき、意思疎通が可能であるにも拘らず明確な人類の『敵』であった魔人種たちが支配したと伝えられている領域。

 そして現在ではその存在を誰一人確認できていない、幻の大地。


 千年前。


 偽書『勇者救世譚(クズィファブラ)』にて騙られる時代。


 亜人種(デミ・ヒューム)獣人種(セリアンスロープ)と比べてもその個体数は極端に少ない代わりに、圧倒的な個々の戦闘力を以て「数の暴力」を駆使する人類と互角以上にわたり合っていた、人型生命体における最上位種だったのが魔人種である。


 だが如何に外在魔力(アウター)が世界に満ち、それを自在に駆使できる魔導生物である魔人種であっても、それだけでは圧倒的な人の数の暴力に抗うには足りなかったはずだ。


 事実、魔人種ほどではなくとも、同じ魔導器官(オルガナ)を持つ魔導生物である亜人種(デミ・ヒューム)獣人種(セリアンスロープ)たちは千年前であっても人の優位を許し、じりじりと己が版図を削り取られて行っていたのだから。


 竜種や強大な魔物(モンスター)たちの脅威があってなお、人型生命体の中では頭一つ抜けた勢力を誇り、魔導器官(オルガナ)を持たない人類こそが『大魔導期(エラ・グランマギカ)』を謳歌していたことに対する謎、疑問はまだまだ山積している。


 とはいえ、どうあれ魔人種が隆盛を誇っていた人類の天敵であれたのは、彼らの本拠地であった『魔大陸』の存在が大きい。


 なんとなれば、『魔大陸』とは浮遊する大地であったからだ。


 天空に浮遊し、『魔王』の意思に従って自在にその位置も高度も変える。

 必要に応じて天候すら操り、時に嵐を纏って人の脆弱な「航空戦力」を蹂躙する。


 『魔大陸』の各地に複数存在する魔物湧出点からは地上の魔物など比べ物にならない強大な飛行系の魔物(モンスター)が定期的に湧出し、弱い地上の生物を獲物として襲い掛かる。


 なによりも人より進んだ『魔導技術(テクノ・マギカ)』を駆使して創り出される魔物(モンスター)素体(ベース)とした『魔物兵器』の数々が、人との圧倒的な数の差を覆すほどの戦力を成立させていたのだ。


 ましてや基本的にすべての魔人種が飛行能力を有していることに対し、人の身で『浮遊』や『飛翔』、それすらを凌駕する『転移』を使いこなせる能力者の数は限られていた。


 つまり魔族は好きなタイミングで人を蹂躙し、不利となったら『魔大陸』へ逃げかえればそれでよかったのだ。


 それでも『大魔導期(エラ・グランマギカ)』を謳い、世界の支配者を自認する「驕れる種族」であった人類は『魔大陸』をもその手に入れんと、幾度も『神敵必滅』を掲げて攻め入っていた。


 『聖教会』が発動する『聖戦オラトリオ・タングラム』とはもともと魔人種に対する人の宣戦布告の際に用いられており、『勇者』という称号もまた、本来は『魔大陸』侵攻が少数精鋭にならざるを得ないために厳選されたパーティーのリーダーに与えられるものだったのだ。


 その時代の出来事は、『勇者救世譚(クズィファブラ)』と同じく、その展開と結末を人類に都合のいいように改変された上で、いくつかの『御伽噺』や『神話』として今にも伝えられている。


 人類の正当性と魔人種の悪辣さ、残虐さを強調するためにこそ語られるその内容は、最終的に人類が勝利こそすれ凄惨なものが多い。

 

 攫われた王女や聖女が(おぞ)ましい魔物(モンスター)と融合させられ、人の手によってそれを討たねばならなかったという悲劇。

 殺されたはずの勇者パーティーの仲間、剣聖や賢者が洗脳や動死体化を経て、元の仲間たちに襲い掛かるという痛ましい展開。

 時に勇者すらも魔人種の傀儡となり、人の敵となったお話さえ存在する。


 それらは大げさに書かれてはいれども、すべて事実なのだ。

 その上実際は一方的に嬲り殺され、地上の国家のいくつかが消滅するにまで至った惨劇こそが本当の結末である話も多いのだから救いようがない。


 だからこそ人は、幾世代を経てもなお、本能的に魔人種を『魔族』と呼び、亜人(デミ・ヒューム)――人から派生した存在だとはけっして認めないのかもしれない。


 だがそんな人の思惑がどうあれ、当時の魔人種にとって脅威となるのは上位存在である竜種や、魔人種を排除対象とみなしている『妖精王』程度であり、それすらも魔人種(自分たち)から進んで手を出さねば向こうから『魔大陸』へ攻めあがってくるということもない。


 そういう意味では、わざわざ竜種を狩っていた『魔神』クリード・インヴィワースという存在は、魔人種の中にあっても突出した力を有した鬼子であったのだろう。


 そのクリードが、ソルに『魔大陸』の再起動を報告しながら冷や汗を浮かべている。

 つまりそれだけの危機態状況だということだろう。


「つまり、『魔大陸』っていうのはそれ自体が巨大な魔導兵器ってこと?」


 だが王城の貴賓室でクリードから一通りの『魔大陸』についての報告を受けたソルは、厄介事のわりにはその瞳を好奇心に輝かせている。

 

 伝説の『魔大陸』が実在しただけでも充分興奮に値するのに、それが天空に浮かぶ大地であり、そればかりかそれそのものが人造物――この場合は魔造物か――と言われればそれも当然だろう。


 不謹慎だとは自覚しつつ、歴史ヲタクであるフレデリカも高揚を隠しきれていない。

 全竜(ルーナ)神獣(アヴリール)は「そういえばそうだったな」程度であるのだが。


「はい。代々の『魔王』以外はその秘奥に触れることは許されておりませんでしたが、ただ天空に浮いている陸地というだけではございません」


 『竜殺しの魔神』とまで呼ばれたクリードであっても、『魔王』ではないからにはそこまで詳しくはない。

 だが魔人種の全盛期を知っているクリードからすれば、『魔大陸』がただ宙に浮かんでいるだけの大地ではないことも明確なのだ。


 確かにもしも「飛空石」のようなものが存在するのであれば、外在魔力(アウター)が満ちていた時代であれば『魔大陸』以外にも浮遊する大地の記録が残っていても不思議ではない。

 それが一切ないということは、『魔大陸』だけが特別だということに他ならない。


「それが再起動したのは間違いないの?」


「我ら魔族――魔人種は『魔大陸』が発する信号を受信できますので、間違いありません」


 ソルの問いは尤もだ。


 だがそれに確信をもって答えたクリードの言葉こそが、『魔大陸』が魔導兵器であることを如実に物語っている。


 確かに魔人種たちに信号を発するただの大地などあるはずもない。


「信号?」


「千年前、外在魔力(アウター)が封じられてその浮遊能力を失い、深海に没した際と全く同じ『命令』を、先刻より受信し続けております」


 その言もまた『魔大陸』が超巨大な魔導兵器であり、それでありながらこの千年間その姿を誰にも晒していなかったことへの説明にもなっている。


 千年前に浮遊を維持するための力すら失った『魔大陸』は海へ落ち、そのまま深海へと没したのだ。


 クリードにしてみれば、魔導兵器であるからこそ稼働するための外在魔力(アウター)を失って深海へと没し、それから千年もの時を経た以上「朽ち果てている」と判断していたのだろう。


 だが『魔大陸』――超巨大な魔導兵器は人知れず千年を持ち堪え、再び外在魔力が満ちた今この時、当時の『命令』を再びがなり立て始めたというわけだ。


「その命令って?」


「――『地上の人を鏖殺せよ』です」


 ソルの問いに答えた、グリードの静かな声にこの場にいる皆がしんとなる。


 意思持つ存在であるクリードたち現存する魔人種はそんなもので暴走することはない。

 だが『魔大陸』と同じように千年を耐えた当時の『魔物兵器』たちが現存、稼働可能であれば、それは『魔大陸』の浮上と共にこの大陸に暮らす無数の人々へ無差別に襲い掛かってくるだろう。


 その前手に、それだけの超巨大質量が深海から浮上するに際して発生する自然現象も、その規模としては大災害級となることは疑いえない。


 ソルたちは速やかにその双方を処理しなければならないのだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 朽ち果てていると判断していた魔大陸を「今暫く」の時間で再起動可能とクリードは本気で考えていたのですか? それとも初期の交渉時はソルを謀るつもりだったのでしょうか。
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