プロローグ
「ごめん。蓮ちゃんのことは好きだけど異性としてはみれなくて…」
大学3年の春。キャンパスの噴水のある中庭。
俺はまたしてもこの常套句で女の子にフラれた。
「そっかぁ…。じゃあしょうがないよね…」
頭をボリボリ搔きながら無理やり笑った。
今度こそ上手くいくと思っていたのに……アユミちゃん!
「本当にごめんね。でも蓮ちゃんのことは好きだから今まで通り友達でいよ?」
「あー、うん」
「それじゃあ、私バイトあるから。またね」
アユミちゃんはそう言って足早にいなくなった。
アユミちゃん……昨日バイト辞めたばっかりで暇だって言ってたのに……
俺はいつもそうだ。
女の子から異性として見てもらえない。
背が低くて、中世的な女顔。
女の子の友達は昔から多かった。仲の良い女の子といい雰囲気かと思えば、「女友達の感覚」とか「妹とか弟みたいで可愛い」止まりだ。全くと言っていいほど男として意識してもらえない!!
どんなに女顔だろうが俺は心も体もしっかりと!男なのだ!
俺だって好きな女の子と手を繋いだり、キスしたり、それ以上のもっとすごい事だってしてみたい!
大学生になったらきっとできるはずだ!
と、胸を躍らせていたのに……
「ハタチになっても年齢=彼女いない歴更新かぁ」
俺は噴水の水面に浮かぶ自分の顔を見た。
見慣れた顔。色白で黒髪の猫目の女顔。
筋トレだって頑張っているのに体質なのか筋肉がつきにくい。
ゴリゴリの黒マッチョが目標なのに……
「髪でも染めたらモテるかなぁ…」
一度も染めたことのない髪は傷み知らず。
思い切って金髪にしてみるとか?
そんな風に思っていると、突然水面に映っている自分の髪が金色になりだした。
「ん?!なんだこれ?!」
そう言って、水面に前のめりになった瞬間。
ドン!!!!!!!!
誰かに背中を押された。
「え?!ちょっ!!うわぁあああああああああああああ」
俺はそのまま噴水にダイブしてしまった。
深さは背の低い俺でも膝下くらいしかないはずなのに。
全く噴水の底に体がつかない。
一体どうなってるんだ?!
どんだけ深いんだよ!!
ヤバイ…どんどん体が水の底に沈んでいく……
息ができないっ。苦しい…
このままじゃ本当に死ぬかもな…
まだハタチなのに……あぁ苦しい…
俺、ドーテイのまま死ぬのかぁ……あーあー……
そこまで思ったところで完全に意識を失った。
次に目が覚めた時には、俺は白装束の老人たちに囲まれていた。