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世界は悲劇で語れない。  作者: 白色真
2/4

1 ニューライフ


 世界は何を見ている。


 街の声はどこに飛んでいるのか私には分からない。新聞に書かれている言葉はいつも悲劇ばっかりだ。それなのに街の中は笑顔で溢れている。綺麗な靴に綺麗に仕立てをされたズボン、伸びていないシャツ。髪なんかも綺麗に整えられ幸せが広がっている。


ー「お母さん今日はどこに行くの?」


〜「おい、その箱はmo359だ。丁寧に扱えよ」


ー長い髪を左右に分けピンクのシュシュでまとめた少女はお母さんと手を繋ぎ屈託のない笑顔でタッタと小さなストライドを何回も動かす。


〜ネズミが歩くような小さな通路をゴキブリの様にガサガサと歩き荷物を運ぶ男たちは臭い息を吐きながら体に汗をかき足を動かす。


ー「今日はね、お父さんの誕生部だから大きなケーキ買おうか」

「ケーキ!やったー」


〜「おい、丁寧に扱えと言っただろ!大切な商品だぞ」

「す、すみません」


ー少女の燦燦と光る笑顔に吊られ母親にも笑顔が浮かぶ。目元に皺が見えない母親は綺麗な手で少女の手を優しく包み小さなストライドで娘と歩いている。


〜そんな二人に見えないところでは高価なスーツを着こなした男性が薄汚れた服を着た男性に叱責を送っている。木の削れる音が鳴りスーツの男性は怒り薄汚れた男性は歯を食いしばる。匂いのきつい服は既に汗を吸わないのか、たらりと清掃のされていない臭い道に落ちる。


ー「お父さん喜ぶかな?」

「きっと喜ぶよ。あーちゃんが元気でいるだけでお父さんは頑張れると思うよ」


〜「もう少しで終わりだ。気合を入れろ」

「は、はい」


ー少女は軽快なステップを踏み手をつないでいるお母さんの腕を伸ばす。強く握らなくとも離れないその手は母親の温かみがあるからなのだろう。


〜靴底は擦れ穴が開き足裏にざらついた地面が当たる。鋭利な石が足の裏に当たるたび目が吊り上がり声を出さぬよう奥歯を噛みしめる。少しでも声を出せば叱責が飛び相手を不機嫌にさせてしまう。


 箱の中身は一体何なのだろうか。

 何を運ばされているのだろうか。

 精密な商品を運ぶのならばこんなところを進まないだろうし、私なんかに運ばせることも無いだろう。私は一体何を運んでいる。


 新聞にも飽き顔を上げると行き交う人は先程よりは多くなっていた。もう、お昼時だ。


 時計の長針と短針が12で止まり空気が揺らぐ。スーツ姿で歩く大人たちが増え昼食を探すため歩きずらそうな皮の硬い靴に皺を付ける。ランチ難民にならぬよう動く彼らは休みの時間も戦いなのだろう。食べていたガムを新聞紙に吐きゴミ箱に放る。


 新聞紙がゴミ箱に入るとガサガサっと音を立てた。

 ネズミかゴキブリか、どちらでも大差はないが新聞紙は食べ物にはならないと私は小さな声で動いた生き物に告げ歩き出した。


 春の気候は穏やかだ。花粉症を患っていない私にとってはとても過ごしやすくいい季節だ。歩けば心地よい風に当たり、待てばその場で眠ってしまいそうな空気が体に染みこむ。そんな季節にいると何故だか夏が恋しくなり早く来いと期待するが、その前にある梅雨のせいでで夏は嫌いになってしまう。


 張り付いたカッターシャツを捲り風通りを良くしたいが皺になってはクリーニング代が無駄になってしまい快適さを取ることに躊躇ってしまう。


「アンリさんスーツをお持ちいたしました」


 私の数歩後ろにいる男性はガーメントバッグを持ち私に付いてくる。ハイヒールを履く私よりも頭二つ分高くさぞ私よりも視界が良好なのだろう。歩幅を変えず一定のリズムで進み彼との二人ほど空いた距離を保つ。新品のヒールが足の皮を捲り踵がヒリリ痛む。絆創膏を近くのコンビニで買えば良いのだが、もうそんな時間は無さそうだ。


「ジュオア、あと何分?」


「10分、9分57、55-」


「寄り道している暇もないか」


「はい。ありません。早くスーツを着てください」


 ジュオアの言葉を無視しアンリはヒールでコンクリートの道を音を鳴らし歩く。パンツスーツを着たアンリとすれ違う男たちがアンリに視線を向けるが、後方に付いているジュオアを見た瞬間目線を下げ距離を開ける。


 時折背の小さい少女がアンリに輝いた目を向けその場で立ち止まることがある。アンリはそんな少女には優しく笑顔を向け通り過ぎていく。本人は気づいてはいないのだろうが、少女の頬が赤みを帯びその場で硬直を続けている姿をジュオアは何回も見ていた。


その様可愛い少女はいいが、変な虫は寄ってくる。ジュオアは警戒を怠らないがバカはこの世に沢山存在している。丁度今アンリに話しかけている大学生と思われる男たちは大勢いるバカの一部分だ。


「お姉さん、今から遊びに行きませんか?」


 髪をセンターに分けている男。その隣にいる男はでこを前髪で隠し緩く毛先が曲がっていた。個性を出すために服や髪を意識し変化させているのだろうか多くの若者がやる無難な髪型過ぎて面白味が無いとジュオアは思っている。前に話しかけてきた男たちはセンター分け二人にオールバック1人だったか。


 ジュオアはため息を吐きアンリに近づこうとするがアンリが先に口を開き細い体をした男たちに話しかけた。


「え、どこに連れて行ってくれるの?」


 魅惑的な笑みをこぼし、害虫を罠に誘い込むようにカッターシャツの一番上のボタンを外す。綺麗な首が露わになりアンリにより少しだけ身長の高い男たちは期待を込め目線を下げるが一つ外しただけでは何も見えては来ないだろう。


「初めはカラオケなんかどう?俺こう見えても歌上手いんだぜ」


 ジュオアは面倒くさそうな顔をしポケットからスマートフォンを取り出しある場所に連絡をした。前髪ででこを隠してい男は最初はジュオアに警戒心を向けていたが何もしないと踏んだのかアンリに話しかける。


「そのあとはボーリングでもどうよ」


 ジュオアは時計を確認し再びため息を漏らす。先ほどよりも深いため息は目の前にいる三人にも聞こえているだろう。それでも、威圧することなく事の終息を見守る。


「へぇー楽しそうね。でもね、お姉さんこれからお仕事なの」


「そんなの良いじゃん。一日休んだからって変わらないよ」


 仕事のことなど何も知らない男はその辺で缶を蹴る男子よりも子供なのだろう。既に足止めを喰らい1分が経った。流石にこれ以上は呆れを通り越して苛立ちが湧き始める。


「そんな訳にはいかないのよ。大切な仕事なの」


「そんなに大切なのか?どんな仕事してるんですか?」


 鼻にかけたように話すセンター分けの男はアイラに顔を近づけ始める。大胆な行動をとり始めた男とは違い前髪を使いでこを隠す男はジュオアの方を一度確認した。おそらくやりすぎに気づき警戒したのだろう。しかし、ジュオアには動く気配はなくただ腕時計の秒針に目を向ける。


「大事なお仕事。とても大事なお仕事、子供たちを買うお仕事」


 アンリは髪をセンター分けしている男の耳に口を近づけ魅惑的な声で囁いた。言葉は外には響かない。唯一響いたのは言われた男の右耳の中だけだろう。


 アンリは男に囁いた後ジュオアの方に一度視線を向け、大学生らしき男たちを避けていった。その足跡を綺麗に辿るようジュオアも動き出しいつもの距離を保つ。後ろでは何やら騒がしい声が聞こえるがそんなことをいちいち気にしていたら目的の時間に間に合ることは無い。


「救急車は呼んでくれた?」


「呼びましたよ。ここ病院が近いのでもうすぐ来ますよ」


「そう。手当しないとあと3分の命だね、あの子」


 そんな笑顔で話すアンリにジュオアはため息をつき隣に並んだ。これ以上遅れてしまったら本当に目的に遅れてしまう。


「毒のガムなんか今時流行らないですよ。早く口ゆすいでくださいね」


「別に昔も流行ってないと思うよ」


 アンリは舌で唇を軽く舐め唾を飲み込んだ。薄くなった唇を治すためジュオアはポーチから口紅を出しアンリに渡す。真っ赤な赤ではなく自然な赤。目立つ事はないが存在も消さない、そんな赤色の口紅をアンリは当てジュオアに返した。


 ジュオアは口紅を受け取るとガーメントバックのファスナーを開け、折り畳まれビニールを纏った丈の長いスーツを取り出す。埃一つ付いていないそのスーツはとても綺麗な黒色をしており、建物が反射し移りそうだった。


「最近熱くなってきたしあんまり着たくなかったんだけどな」


「そんなこと言わないで着てください。変に思われたらめんどくさいでしょ」


 ジュオアがアンリをさとしスーツを手渡す。軽いカッターシャツやズボンとは違う、どっしりとしたスーツは私には不釣り合いで重たかった。


「ねぇ、別に防刃とか防弾仕様にしなくて良くない?」


「ダメです。貴方が下手に殺されたらそれこそ終わりですよ」


「私たちの区を襲う人間なんて、既に頭に血が回ってない人間だけだよ」


「最近三人襲われました」


「あぁ、守れなかった私の責任だ」


 アンリは声を落としスーツの下から二番目のボタンを閉め、進む速さを早めていく。


 ジュオアが言う事もわかるがこんな寝ぼけた区で殺すためにナイフを携帯している人間なんていもしない。二つ隣の国は三つ隣の国と戦争をし日夜、血を流し飢えに苦しんでいる。水たまりの泥水を吸い、もがき苦しみながら死んでいく世界が少し先には広がっている。


 最近始まったその戦いも終わりが来るがそのうちに何人の人が死ぬのだろうか。


 世界は良くなっている確実に。そこだけは変わらない。

 それでも、それだけだ。その先の世界は見えてこない。


 ジュオアが隣に並び私にだけ聞こえる声で確認を取り始める。


「アンリさん、ナイフは」


「持った」


「拳銃は?」


「持った」


 ジュオアの質問に続き胸を触り腰を触る。スーツの胸にはナイフが入り、腰にはベルトの間に拳銃が携帯されている事を確認する。


 今から行くのは戦場ではない。

 それでも、とても気持ちが悪く吐き気がする場所だ。その中に私もいるからもはや同類だ。いつ、ナイフで喉元を掻っ切られ、こめかみに銃を突き付けられるか分からない。


 そんな場所は戦場ではないが、生々しい程に悪臭の広がる場所で間違えはない。


「気持ちは落ち着いていますか?」


「大丈夫だよ。今日は朝から空気をよく吸えてる気がする」


「そうですか。それは良かったです」


 ジュオアは隣で軽く笑みをこぼし再び一歩下り私の右後ろに付いた。

 もうすぐ目的の場所に着く。脈拍が過度に上がらないよう、踵から爪先へゆっくりと足を地面につける様に歩いてく。 


 ヒールのコンクリートを叩く音が私の耳の中で弾け、心臓の鼓動と中和していく。鼻から吸った空気は体に染み込みとけ、体を動かす糧となり私は動く。


 広角はいつもより上がりやすいかも知れない。声はいつもより柔らかく口から出るかも知れない。

 両手がいつもの私を思い出させる為に体の後ろで握り合う。少し重たいスーツも私にとってはただの飾りだ。


 世界を変える為のただの飾り。


 アンリとジュオアは歩くペースを落とす事なく道を歩き高い建物の間をスルリと慣れた足取りで抜けていく。

 次第に無くなる明かりはこれから行う催しへの当てつけだろうか。


 歓楽街と違いネオンの灯ひとつない。小さな暖色をした明かりがちらほらと申し訳程度に道を照らすだけ。


 誰も寄り付かないがためか小綺麗な道は私のヒールを強く跳ね返す。細い小道に広がるヒールの小高い音と革靴の少し低い音。


 長い小道を歩き分岐点にたどり着く。そのまま前進するか左右どちらかに分かれるか。


 私は迷いなく左に進む。自ら一歩、左に。世界が、がらりと変化する左に。何度も歩いたが、左に行くだけで腹から内臓がこぼれ落ちそうな不快感が駆け巡る。


 2人は左に曲がりそのまま突き当たりまで進んだ。

 突き当たった先には黒い塀に灰色の扉が付いており、立ち入りを禁ずると赤く達筆で描かれていた。


「ジュオア、前後左右、上」


 アンリは扉から目を離さず口だけ動かしジュオアに命令をする。最低限しか伝えない命令にジュオアは反応し、懐から拳銃を取り出した。


 出した拳銃を初めにアンリの右耳を掠める場所に銃口を合わせ直ぐに後方、壁で覆われている左右にも銃口を向ける。その後、上に向け足元に向けジュオアは懐に拳銃をしまう。


「大丈夫です」


「そう」


 アンリは頷きズボンの中から純白の手袋だし手を覆った。顔意外全てが布で覆われ綺麗な肌が姿を消す。


 アンリは銀色のドアノブを掴み右に半回転捻る。ガチャリと何かが外れる音を確認し扉を開けると10段先が真っ暗闇な階段が出現した。


 目視では到底見る事の出来ない階段の奥は息がつまりそうなほど暗く、何も見せていなかった。


 二人は階段を二段下りるとジュオアに支えられ開いていた扉がゆっくりと閉まり、カチりと音を立て完全に閉じてしまった。


 目の前に続く暗く長い下降する階段は今後の私たちが行く道のように暗く閉ざされた道だ。息遣い一つが壁に反射し反響していく。数メートル先のゴキブリの足音さえ聞こえそうで、とても気持ち悪い。


 階段を下りて行くと、一部だけ灯りが円を作りその場を照らしていた。二人はそこまで下りて行き立ち止まり目の前のドアを二回叩いた。


「エカラ9区、アンリ・メラル」


「同じく、エカラ9区、ジュオア・メーテル」


 二人の声は閉鎖された中で良く響き、次第に消えていった。二人はその場で立ち止まり息をするのにも気を遣う。ジュオアの腕時計が一定のリズムを響かせどれほど経ったか分からないがゆっくりと目の前の扉が開き始めた。

 音も立てずゆっくりと。


 二人が扉の前に入り数歩先の円状の光の前で止まると入ってきた扉が開いた。カチリとロックが掛かり、数秒後暖色の光が辺りを照らしコツコツとスーツの男性が歩いてきた。


「遅くなって済まない」


 アイラが片手をあげスーツの者に軽く礼をすると男性は微笑み言葉を返す。


「いえ、時間通りでございます。エカラ9区党首、アンリ様。副党首、ジュオア様」


 白の手袋をした男性は右手を胸に当て深々と頭を下げる。

 五畳ある部屋は息苦しくもなく無臭だ。扉は二人の後ろと男性の後ろの二つだけ。窓もなければ椅子もない。あるのは机と黒い四角の機械。


「時間も余りないので、早速ですがカードをお願いいたします」


 男性はアンリに促し自身は部屋の隅にある机に向かう。


「ジュオアカード出して」


「もう出してます」


 アンリは振り返り、固いプラスチックのカードを受け取りる。


「お待たせいたしました。こちらにカードを挿入してください」


 三センチほどの厚みの四角の機会にはカードを刺せる場所があり、アンリは向きを確認し差し込んだ。電子音が三回なりカードが押し戻される。


「確認いたしました。2億オガスでよろしかったでしょうか?」


「大丈夫です」


「それでは、私の後ろの扉を開けお通りください」


 男性が横に動き体で隠れていた扉にアンリは歩き始めた。ジュオアが男性の横を通り過ぎた時、カチリと音が鳴り扉が開く。


 ここまでの道のりでは決して感じる事の無かった人の声。明るい光。食事の匂いなどが扉の先から見え始める。


・・・


「皆様、大変お待たせいたしました。3月20日ニューライフを始めたいと思います。1番司会はわたくし、キギガ・アートが致します。よろしくお願いいたします」


 二人が付いた場所は地下のドーム状の部屋だった。無数の席が下にあるアリーナを囲いその中心部にアートと呼ばれる者がマイクを持ち周りに一礼した。しかし、その仕草はどこか素人の様であり額にも汗が浮かんでいた。


 席にいる者は皆、正装で身を包みSPと思われる人が付いている。顔を隠すためマスクを付けている者も見受けられるが多くの者が堂々と椅子に座り静観している。


「それでは早速行きましょう。今日の一品目を飾るのはこちら」


 アートが語尾の言葉を強くした時、椅子に備え付けられている小さなモニターに象牙が映し出された。モニターだけでは迫力が伝わらないが立派な物なのは確かだった。


「今日の一品目は象牙でございます。こちらはペラトで取れたとても立派な象牙となります。ペラトでは象は絶滅危惧種であります。そんな大切な象の牙を生きたまま採取いたしました。鮮度抜群でありとても立派です。5万オガスから行きましょう」


 アートが言葉を区切ると会場中央、四方向にある大きなモニターに5万オガスと表示された。しかし、その数字が動くことは無い。声を上げる者もいない。皆がただ会場の中心を退屈そうに眺めていた。


「51もありませんか?」


 アートは困った様子で、会場にいる者に促すが誰も動かない。


「すまない。炭酸水を頂いていいか?」


 アンリは席の一番後ろに座っており、近くの黒服に炭酸水を要望した。


「かしこまりました」


 黒服は一礼しその場を離れ、何処かに行ってしまった。

 アートは未だに催促をするが一向に誰も象牙を買うことをしない。


「おい、そんなもんはいらねーんだ。さっさと人間出せ」


 派手なトラ柄の羽織を着た男性は手前にある椅子を蹴り上げ、アートに怒鳴り散らす。街中ならば周囲の目が行くのだろうがここにいる者は目を合わせるどころか肯定的な雰囲気を醸し出していた。


「アンリさん、私が先に飲みますのでグラスを」


 アンリが炭酸水が入っているグラスに赤い唇を付けようとした時、ジュオア軽くグラスを止め毒見を買って出た。


 透明なグラスに無数の気泡が付き細い持ち手を揺らすだけで水面に上がり消えていく。そんな、中に映るジュオアの手をアンリは止め微笑む。


「知ってるでしょ?その辺の毒では私は死なないよ」


「それでも、アンリさんは人間であり毒で死にます。試すのなら私の体の方がいいでしょ?たとえ死んだとしても」


 ジュオアがグラスを取ろうとするがアンリは先に炭酸水を口に染み渡らせる。ジュオアには焦った素振りはないがアンリの行為にため息を付き、肩の力を抜いた。


「わざわざ、私に毒を盛っても変わらないよ。ここにいるモノたちが私を気にするわけがないのだから」


 アンリとジュオアの会話の時にも激しい打撃音が鳴り響き、司会のアートも収集が付かないのか目線を動かし、体を揺らす。


「じゃあ、買うよ。51。次は人間出せよ」


 男が蹴り続けた椅子のボルトが限界に達したのか、椅子が外れ階段を転げ落ちる。柵で覆われている為、司会者アートがいるアリーナには落ちることがないが、体を縮め表情をこわばらせた。


 その後すぐさまアートは売買確定の為、机に乗っている木製のハンマーを薄い木の板に二回叩きつけた。その音が何かの合図だったのか周囲の人たちの目の色が変わる。


 だらしなく、皺が寄ったスーツを簡易的に伸ばし、肩のふけを落とし、背筋を伸ばした。


 会場全体を暖色の明かりで照らしていたが、ハンマーが叩かれた数秒後に辺りは暗くなり10秒ほど経った。


「ジュオア毎回言ってるけどこの時間に何もやる人なんかいないさ」

「わかってますよ。でも、念の為です」


 ジュオアは周囲に目を光らせ拳銃を懐から抜き、警戒心を高める。

 周囲がじんわりと灯りをともし始めるのと同時にジュオアは拳銃を懐に戻し、ゆっくりとアンリの右斜め後ろに戻っていった。


 アリーナには先程までいた司会者アートの姿はなく中央に大きな木の箱が一つぽつんと置いてあった。


 周囲が息を飲む。

 ただ目の前の木の箱に。


 人間は通しをできないはずだが、獣の鋭い嗅覚が反応し興奮気味に涎を垂らす。


 そんな羨望の眼差しを受ける木の箱に立派なスーツを着た男性が近づき周囲に一礼した。

 腰の曲がり方、そこまでの歩く所作、その全てが人の目を引くだろう。


 司会者はピンマイクを付けているのだろう。彼の声は先程のアートとは違い滑らかに耳の中に響き渡った。


「皆様、お待たせいたしました。私は2番司会者、キギガ・リィラルと申します。よろしくお願いいたします」


「待ってたぜリィラル」


 トラ柄の羽織を着た男はリィラルに喜びの言葉を飛ばし、前傾姿勢で口を開け下品に笑う。

 そんな、彼に微笑みを軽く返しリィラルは周囲を一度見渡した。


「皆様は、この地球で一番の価値はなんだと思いますか?」


 リィラルと名乗った男は二階席に座る私たちを見定めするよう目は向ける。


「お金?愛?地位?それとも人との信頼?」


 正直この始まりの言葉は聞き飽きた。皆も思っているのだろう。買い付け人で来ている人間ですらあくびをし目を細めている。その一人に私もいるのが少しだけ不愉快だが、他の者よりもこの問いを深く考えている方だと思う。


「想像力豊かな皆様なら様々なことを思いつきますよね?しかしですね、おそらくそのどれでもないと思います」


 夏の暑い日差しでもなく冬の冷たい風でもない。乾燥しているのか湿っているのか、今この場の状況を感じ取る事はとても困難な事だった。


「答えは人間です。人間こそがこの世で最も価値のある物なのです。経営の話でヒト、モノ、カネ、情報とあります。でも、私の考えはこうです。ひと、ヒト、人、そして人です」


 この話は何度も聞いてきた。


 何度も聞いても本質を見抜けるかと言われると、回答に困ってしまう。なんで地球上で人が最も価値のあるものなのか。我々人間はいったい地球の何なのか。地球があって人間があるのか。人間がいるから地球なのか。私はそんなどうでもよさそうな事を考えてしまう。


「そんな人の最終目標はなんでしょうか、答えは簡単です。我々の中では不老不死これに限るでしょう。不老不死、この言葉にどれ程の者が心を打たれ考えたのでしょうか。私たちの臓器や脳は腐っていきます。『メヲオメ』の様に自然に治ることも無ければ、『ガンラク』の様、心臓や頭を飛ばされぬ限り生きていける訳ではありません。それならばどう私たちは回復していくか。答えは簡単です。健康な臓器、脳、血、髪爪皮膚、それらを貰えばいいのです。それでは行きましょう今日一人目の売買です」


 アリーナの周囲を周り熱弁していたリィラルは中央にある台に立った。

 これから始まる売買はとても不愉快極まりなく、一般に触れることのない世界だ。欲望と金が渦をなし、空間をいやらしく汚していく。そんな渦に入る私もまた汚く醜く、見るに堪えない存在であることは変わらない。それでも、今すぐこの状況を打開する策を持たない。そんな自分が更に嫌になってしまう。


「mm125。分類:人間・齢:16・性別:男。臓器欠損・肢体欠損・五感欠損、全てなし。持病もございません。出生地などはここではお伝え出来ません事ご了承ください」

 

 リィラルが状態を読み上げているなかでアリーナ中央に木箱が置かれた。


「それでは、箱が空いてから入札が始めります。1千万オガスから行きます」


 二階席に付いているモニターが中央にある箱を映し出す。

 10秒ほどの時間が経つが私にはその時間がもっと長く、このまま時間が経過しなければいいとも思っていた。


 それでも時間は止まることは絶対ない。ゆっくりと四方に木の板が開き始め中から鉄格子が現れる。立派な太い鉄の棒が何本も繋がり箱の様に周囲を囲う。


 その中から聞こえる鉄が擦れる音は私の心臓を握り込む。何度も擦れ、私の内臓を握り吐き気を誘発する。ジュオアが軽く肩に手を置こうともこの気持ち悪さは抜けない。


「さぁ、1千万ございますかー」


 リィラルの意気揚々とした声とは反対に、少年は鉄格子の中で囲まれた四角い箱に肢体を拘束され、中で震えていた。


 モニターに映る1千万オガスが点滅し金額が上昇していく。

 1千200万、2千万。金額は止まることなく上昇していく。地球上に腐るほどいる人間1人がこんなにも高価になる事はそこら辺の民衆にはわからない考えだろう。人間の価値を知るのはある程度豊かになった国だけかもしれない。


「3億5千ございますかー」 


 値段が釣り上がり初期の値段がちっぽけな札束になってしまった。


「最後のコールにさせて頂きますーよろしいですかー」


 リィラルがハリのある声で呼びかけるが沈黙が続く。その沈黙は確定の意味を表し、カツンとハンマーで台が叩かれた。


「nn125は3億5千万でお買い上げです。ありがとうございます」


 リィラルの声が場内に響き渡りジングルが流れる。ここから先、どんなことがあろうとも購入の拒否、購入権の譲渡は認められない。要は入札した者はお金を払い少年を購入する以外の行動をとることは今は出来ないと言う事だ。


「毎回思うのですが、人間の方はやはり内臓と見栄え、あとは出生ですか?」


 ジュオアはアンリに小さな声で耳打ちをし問いを投げかけた。


「まぁーそんなところ。大体顔を見れば出生がわかる者もいるし、健康状態も外観に出てくる。内臓の有無は主催者側が提示してくれるから、大まかには見た目の判断だ。まぁ、それだけではないのは確かだ」


 買った人間をどう使おうと買った者の自由だ、この国では奴隷制度は無いが、購入奴隷制度は裏の中では暗黙の了解としてここにある。買った者がその物をどう使おうが勝手なのだ。内臓を取ろうが、侍らせようが、見るに耐えない行為をしようが皆見て見ぬ振りをする。


 だからこそ、闇医者は儲かり影を隠す。人間を買うような奴に守られているのが現状だ。


「さぁー続いての商品はmm1123ー」


 リィラルは商品が売れたことに対し自身も高揚しているのか先程よりも声を張り周りの客に訴えかけていた。


 次々に売られていく人間たちを見ながらアンリは炭酸水を飲み様子を伺う。途中黒服に頼んでいたポテトチップスを頬張りながら静観していたが油がしつこくジュオアンに押し付けていた。


「アンリさんまだ目標物は来なさそうなのだで聞いてもいいですか?」


 ポテトチップスと一緒に渡されたウエットティッシュの袋を破きジュオアは聞いた。その表情からはこれと言って緊張感は無かったが内容は他人には聞かれたくはないのだろう。アンリに近づき横に並ぶ。


「どこから、二億なんて大金引っ張って来たんですか?」


 片時も目の前の大きなモニターから目を離さない二人は周りから目の前のオークション以外の話をしているとは思われないだろう。


「別に引っ張ってきてなどいない。カードを出したら二億だっただけだ」


「細工はバレますよ」


「そんなことしていない」


 アンリは目の前のモニターを指さす。指の先にヒントなどないことはジュオアは承知の上だ。アンリはただ、オークションにまだ参加しており警兵(けいへい)ではないことを示しただけだ。


 画面のレートは上がっていく。ゴミの様に金が飛び塔を気づき上げる。世の中の裏事はそうは地上では行われない。今、皆が蔑む地の中で行われ金が道を作る。上でやる事など茶番なのだ。人間が目を向けることが少ない下でこそ、見えないものが作られいつしか上空の常識になっていく。


 だからこそ、裏事をする奴らは『上を向いて進め』『下を向くな』『目の前にある事だけこなしていけ』と下から目を逸らさせ地盤を気づき上げていく。

 だから、私は下を向く。


「ジュオアもうすぐ始める。黒服からもう一つ入札端末貰ってきてくれ。壊れたら話にならない」


「わかりました」


 ジュオアは結局アンリから答えを聞くことなく自身の仕事に移る。

 アンリ未だに画面を凝視する。


 『mm1775。分類:人間・齢:17・性別:女。臓器欠損・肢体欠損・五感欠損、全てなし。行為、持病もございません。出生地などはここではお伝え出来ません事ご了承ください』

 画面上に映し出される、商品の詳細、写真、入札額。全てが鮮明に表示されるこの場は目のやり場に困る。一般では見ることは出来ぬ、モニター。書いてある言語は世界共通語。ある程度の単語なら高校生でも理解できるだろう。そんな単語が気持ち悪く醜く吐き気を催すほど腐っている。


「端末持ってきました」


「ありがと」


 アンリはジュオアから端末を受け取り、もう片方の手で最初に貰った端末をポケットから取り出し同時に起動させた。


 端末が薄暗く白光し液晶の中心に三方向に枝分かれした剣が明るく表示される。アンリは端末を椅子の横にあるサイドテーブルに置き、胸ポケットにしまったカードを取り出した。取り出したカードと端末を入れ替え、カードに付いてるバーコードを読み取る。カランと缶がコンクリートに跳ねた音が聞こえ『指紋を認証してください』などと手順道理に作業をこなしていった。


「ジュオア、あんたもオークションに参加して。機材トラブルとかがどちらかで起きるかもしれないから、交互に入札していこう。まぁ、まずありえないんだけどね」


 アンリはジュオアに端末を渡す。その際にもモニターからは目を離さず状況を把握していった。


 先程の女性は現在5億オガス。男性健常者平均取引がおおよそ3億オガス。世の中男性の方が使い物になると思っている人は多いがそんなことも無い。気づいている人も少なくないが、ここでは顕著に表れる。平等や差別、区別とは違う。女性が種を育て、送り出す。そんな、世界の母体となる女性は狙われてる。


「それでは本日最後の商品となります」


 リィラルは声を張り上げ気味の悪い笑顔を張り付け辺りを見回した。照明が落とされ小さな蛍光灯だけが観客席(二階席)を照らす。


 アリーナからはざわつきが聞こえるが何をしているか、ここからではわかりようがない。だが、これから売買される者は私が求めていた者だ。それだけは変えようのない事実であり私の目的だ。


「ジュオア、端末を起動させて入札画面に。邪魔されて取られるのもめんどくさい」


「本当に邪魔する者なんているんですか?誰も入札しないと思いますけど」


「わかってる。でも、助かる方法が見つかる者もいるかもしれな。そいつに取られるのもめんどくさい」


 人が人のような者を取る時はいつもそこに何かしら理由がある。欲望を抑える為や、危険な行為の為、はたまた自身を守る為。上げたらきりがないが、私はその者が欲しい。安く買えるのだからなおのことだ。


「mo359。分類:メヲオメ・齢:15・性別:男。臓器欠損について、肝臓・胆嚢・膵臓に関しましては一週間前に抽出。現在の復元に関しては情報はございません。食事に関しましては二日に一回、10歳未満の腕を与えておりました。出生地などはここではお伝え出来ません事ご了承ください」


 暗いアリーナ。どこからも光は当てられずリィラルの声は会場全体に響き渡る。既に大部分の人は帰ってしまい喧騒も聞こえない。しかし、何処か息がしづらく上手く酸素を取り込めない。脈拍を抑えようと一呼吸付く。


「さぁ、残られるお客様アリーナ中央をご確認ください」


 パチンと何かが弾ける音と共にアリーナ中央に強い光が当てられた。

 光は徐々に絞られ光に惑わされた物は次第に認識できるようになった。中央にある四角い鳥かご。中には上半身裸の男子。髪は白く、上半身の肉付きからかなりやせ細っていることが見て取れた。黒い目隠しを駆けられ耳には耳栓、口には白い布。椅子に座り手を後ろで拘束されている。足首は手錠で拘束されていた。


「皆様。人のような者。この世の中には二種類存在します。生殖器が付き、二足歩行をし、言語を操り、道具も扱う」


 リィラルはゆっくりと少年が入る鳥かごを歩き話を続けた。

 ジュオアはアンリの息づらさに気付いたのか近くの黒服から炭酸水を注いでもらい手渡した。

 アンリは言葉も交わさずに炭酸水が入ったグラスを受け取り口内を濡らす。口の中で弾ける炭酸を聞きながらも目はアリーナを離さず、じっと見つめる。リィラルではなく拘束されている少年を。



「人間コミュニケーションが取れ、武器が使え、思考し、繁殖する。一見無敵に思える人間にある日突然変化が訪れたのです」

「そんな話はどうでもいい。早くオークションに移りなさい!!」


 リィラルの長話に呆れを切らしたのか、自身が切羽が詰まっているのか反対側に座る夫人がワイングラスをアリーナに投げ入れた。グラスは音を立て割れ、少年の背後に紫の液体が流れる。背後から何かしら気配を感じ取ることはできると思われるが少年は微動だにしない。


「これはこれは、長話が過ぎました」


 リィラルは小さな間を置いた。ふけの付いていない肩を払い、袖口を丁寧に整えた。見栄えが肝心。安くなるであろう欠損品にも彼の心遣いが見て取れる。


 そんなことしなくても目の前で目頭に力を入れている夫人は購入者だろう。めんどくさい。


「それでは100万から始めたいと思います。今回の購入者はお手元の端末等でも入札が可能になります。即決2億オガス、早速200万!」


 アンリはリィラルの補足に間髪入れず入札をする。リィラルの補足後にコールされて驚いたのはおそらくこの会場内では一人。夫人だ。


「お、250万です」


 50万の上乗せは大したことではない。瞬時に入札をした割には少額の値上げ。あの焦り用からただメヲオメを自身のストレス発散の捌け口にしたいわけではないのだろう。


 アンリは少しの思考の後、50万上乗せするために端末に指を滑らせる。情報が伝達しリィラルが声を上げると直ぐに夫人が50万上乗せする。


 人間は人間の臓器を移植する。メヲオメやガンラクといった人間のまがい物である臓器は移植しない。法律の話ではない。人間が嫌うのだ。


 目の前の夫人は余裕がない。金がない。それでも、メヲオメを欲しがる。何のために。人間ではない彼を買う理由。答えは簡単だ。生きる為。


 アンリは口角を上げ、端末に先ほどよりも多く触れ、長い足を組み夫人を注視した。


「1億きましたー!!」


 リィラルの今日一番の声が響き渡る。


 張りのある声に会場に残っていた人らは生温い歓声を上げる。決してスポーツの祭典で自国が勝ったような踊り狂った歓声ではない。生暖かく、ねっちっこい、嫌らしい歓声だ。


 そんな歓声とは反対に夫人は酸素を求め口を開き水面に浮上する魚類のよう、口をぽっくり開き上下させる。


「ふざけんなー!誰よこんなバカげた金額に吊り上げたやつは」


 奇声をあげ喚き散らす夫人はアリーナに飛び込みそうな勢いで叫び続けた。


 小太りで、唾を飛ばし、服が崩れ、小高い耳を劈く声。腐った成金のなりそこない。哀れで、汚く見るに堪えない。

 アンリはジュオアに端末操作の指示を出し入力させる。


「1億1千!ございますかー」


 夫人の声を意に介すことなくリィラルは声を弾かせた。スピーカーがその音を助け夫人を黙らせる。真っ赤なトマトのような顔をした夫人は喉元まで胃液が逆流したのか端末を皆に見えるように操作した。


「1億1千500万!ございますかー」


 リィラルは嬉しそうに笑い声を更に上げる。

 夫人もハイになってきたのだろう。口角が上がり周りを見渡す。


「ジュオア。お金は大事だよね」


「当たり前です。金の為なら人は簡単に醜くなります。あなたが一番それを知っているのでは?」


「知ってるよ」


 魅惑的な笑みを浮かべながらアンリは端末を操作する。


 アンリさんは偶に気持ち悪いほど腹の底が見えない。黒く固い丸い物が融解する。いつしかその液体が体中を侵食してしまうのではないかと心配さえしてしまう。生まれ持った物は変えれない。アンリさんもそのことについて重々承知の上だ。


「1億1千600万!」


 リィラルは声を上げ汗を掻く。


「そろそろ諦めてもいいのに」


 アンリは呆れながら夫人を見るが彼女がこちらを向くことは無い。初めから眼中にないのだ。


 本当の敵が分からない者は本当に滑稽だな。見ているこちらが吐きそうだ。


 おかしな値段の吊り上げに困惑しているのか周囲がざわめきだした。

 こうなるとめんどくさい。目の前の商品に希少価値があるのではないかと思われ、成金どもが買いかねない。


「ジュオア、引き上げる」


 アンリは席を立ち残っていた炭酸水を飲み干しサイドテーブルに置く。スーツの裾、皺を軽く直し端末を操作した。


 階段の角、金属で覆われている場所にヒールが辺り固い音を立てる。カツカツ。

 リズムなどなく淡々と。


「2億オガス!決まりました。今回のニューライフを終わらせていただきます」


 リィラルを囲むようにアリーナにスーツを着こなした男女が並ぶ。会場からは既に立ち上がる者が、飲み物を優雅に飲む者が、奇声をあげ喚き立つ者が。この空間だけでも人の動きは違うがガツンと内臓を揺らすようなハンマーが落ちた音が聞こえアリーナにいた男女らは二階席に向かい90度腰を曲げお辞儀をしたのであった。



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