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不屈2 繁栄の誓い

元王国1と順番を入れ替えました。

 


 さて、皇帝ライフが始まったのは良いが、何をすれば良いのだろうか?


 ノリで何とか即位まで乗り越えたが、その先は正直何も考えていなかった。


 うん、まずは撤退しよう。

 何かするにしても、こんな大勢の前ではやり難い。


「“俺の部屋(一番良い部屋)に案内しろ”」


 王笏を掲げながらそう命じる。


 一番に反応したのは元国王だった。


 そこで始めて顔を上げた元国王の顔を見た。


 くしゃくしゃに歪み、目から鼻から口から液を垂らしまくっている。

 まさかここまで感動しているとは……。


 他にも顔を上げ始めた臣下の顔も見えて来る。

 皆、同じような顔だ。


 まさかこんなにも、俺と言うカリスマ皇帝の降臨に喜んでいたとは。


 嬉し恥ずかしと言うのもあるが、ここまで感動されるとそれ以上に頬がひきつる。

 プレッシャーを感じ難いと言うのもあり、そこは有り難いがここまで感動しなくてもいいと思う。


 そこまで感動されると、逆に悔しくて情けなくて泣いている様に見えてしまう。

 最初から俺が降臨して喜んでいると知らなければ、そうとしか見えない程だ。


「“代表者は案内すると共に、俺の部屋について来い”」


 やはり、この部屋から撤退するのが最も賢い選択だ。

 大勢のおっさんの醜い顔など見たくない。

 そしてそんな大勢に注視されてはたまらない。跪いた状態と顔を上げた状態とでは緊張感が違う。


 そもそも町内でオタクとして注目されているとは言え、俺は陰キャなのだ。

 変な生き物を見る目を向けられるのには慣れていても、壇上で注目されるのには慣れていない。



「こちらへ」


 王の案内で玉座を降りる。


 すると黒ローブの臣下達は海を割く様に道を作った。


 その中から数人が合流する。


 王を含めて皆、日本ではまず見ない量の宝石や金の装飾をジャラジャラと付け、如何にも地位が高そうだと分かる。

 そんな奴らと一緒にいると、明らかに俺は浮いているだろうが気にしない。


 元々、まりんちゃんTシャツを着ていれば周囲から浮くことなど当たり前。


 気にせずに堂々と歩く。


 何故か元国王達は更に感涙を流す程だし、これで正しいのだ。


 元国王達はお互いに何やら目配せをし、やがて元国王が苦渋の諦めと言った雰囲気で軽く頷くと、豪華な黒ローブを来た髭のおっさんが口を開く。


 どうやら元国王は俺の案内をすると言う栄誉を、自分よりも説明の上手い黒ローブのおっさんに譲ったから苦渋の表情を見せたようだ。


「ま、まずはご挨拶を、へ、陛下(・・)


 元国王が更に顔を歪ませる。

 余程俺と話す栄誉を授かったローブのおっさんの事が羨ましいらしい。


「わ、私は神聖ブルゼニア王国宮廷魔術師長の、イザレと、申します」


 見た目通り偉い魔術師だったらしいおっさんは緊張した様子で、言葉を選び選びと言った様子で、こちらの様子を過度に覗いながら自己紹介をする。

 怯えてすらいそうな程の緊張具合いだ。


 自分のカリスマ性が怖い。


 何か言った方が良いか?


「俺はこの国を統べる王だ。“俺を王として敬え”」


 堂々と王っぽく俺は告げる。

 皇帝だからと言って王として接すればそれで良いと。

 きっと緊張しすぎているのは、俺のカリスマ性が凄まじい事の他に、今まで最上位としていた王よりも上の皇帝が現れどう接すれば良いのか分からないと言う部分が大きい。

 これで少しは緊張が解れる筈だ。


 おっ、またも元国王のおっさんが感涙を流している。

 俺の言葉に感動まで覚えたようだ。


 早速俺は、臣下を気遣える君主をやれているらしい。

 俺の王道はどこまでも幸先が良い。


「か、畏まりました。こちらにおわす御方は、も、()神聖ブルゼニア王国国王であらせられるアドルフ一世閣下(・・)です」


 紹介された元国王は既にこれ以上無く歪んでいたと思っていた顔を更に歪め、河の如き感涙を流す。

 俺に紹介されただけでこれとは、やはり俺に心服しているらしい。


「そしてモリガン宰相、ベルトン近衛騎士団長、オルトメア神官長、ザナク諜報長官です。改めまして、ご挨拶申し上げます」


 魔術師長のおっさんは元国王に対し気まずそうにしながらも話を続ける。


「ここは、神聖ブルゼニア王国。大陸の中央に位置する大王国です。陛下はその、あの、神聖ブルゼニア王国の繁栄の為にお呼びしました」


 これは態度とステータスから知っていたが、言い難そうにそう言う。

 皇帝と言うのは最大限の地位ではあるが、激務でもあるからだろう。

 申し訳なく思っているのだ。


 ここは自分から王位を受け入れると、もう一度宣言しておこう。


「ああ、神聖ブルゼニア帝国皇帝(・・・・)として、この地を繁栄に導こう。お前達にその礎となる栄誉を授ける。覚悟するが良い」


 繁栄させると約束、そして召喚した事に不満は無い。罪悪感を抱くな。それよりも力を貸せ。

 ほんの少し笑みを見せてからの茶目っ気のある覚悟するが良いで、それとなく此方が頼るんだから気にするなアピールも忘れない。

 我ながら上出来な皇帝演説だ。


 現に元国王達も、いや、聞こえていたらしい広間中の臣下達が喜びに打ち震えている。


 俺の言葉に感動し過ぎて案内の説明は途絶えてしまったが、部下の心が分かる上司な俺は急かさない。


 ゆっくりになってしまったが、先導自体は続いているのでついて行くのだった。



次話は前話の元国王サイド視点になります。

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設定集
〈モブ達の物語〉あるいは〈真性の英雄譚〉もしくは〈世界解説〉
【ユートピアの記憶】シリーズ共通の設定集です。一部登場人物紹介も存在します。

本編
〈田舎者の嫁探し〉あるいは〈超越者の創世〉~種族的に嫁が見つからなかったので産んでもらいます~
【ユートピアの記憶】シリーズ全作における本編です。他世界の物語を観測し、その舞台は全世界に及びます。基本的に本編以外の物語の主人公は本編におけるモブです。

兄弟作
クリスマス転生~俺のチートは〈リア充爆発〉でした~
主人公と同じ部活の部長が主人公です。

本作
孤高の世界最強~ボッチすぎて【世界最強】(称号だけ)を手に入れた俺は余計ボッチを極める~
本作です。

本作
不屈の勇者の奴隷帝国〜知らずの内に呪い返しで召喚国全体を奴隷化していた勇者は、自在に人を動かすカリスマであると自称する〜
これです。

兄弟作(短編)
魔女の魔女狩り〜異端者による異端審問は大虐殺〜
主人公と同じ学園の風紀委員(主人公達の敵対組織)の一人が主人公です。

英雄譚(短編)
怠惰な召喚士〜従魔がテイムできないからと冤罪を着せられ婚約破棄された私は騎士と追放先で無双する。恋愛? ざまぁ? いえ、英雄譚です〜
シリーズにおける史実、英雄になった人物が主人公の英雄譚《ライトサーガ》です。

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