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不屈0 異世界召喚

 

 夏の朝は眩しい。


 ただでさえ怠けてしまう夏休み。

 そんな日の陽射しは凶悪だ。


 しかし俺はその陽射しを越えて征かねばならない!


 例えこの身が焼き焦がれようとも!


 いざ外へ!



 玄関の扉を俺は開けた。



 目が眩むような激しい光。

 もはや視界が真っ白。

 見える形すらあやふや。


 俺に見えるのは黒髪の美女だけ。


 フッ、俺のフィルターは如何に眩しい空間であろとも、美女は見分ける事が出来るのだ!


 だが、三次元は立体が有っても触れる事の叶わない存在。

 心の清涼剤にはなるが、服用し過ぎると心に穴が開く。適量は遠方からのチラ見まで。

 触れられない二次元こそが、心に寄り添い埋めるもの。


 そして形のある二次元、フィギュアこそが至高!


 さぁいざ、愛しのマジカルガールまりんちゃんの数量限定フィギュアをこの手に!


 って、予想外に眩しいな。

 美女以外は一面、真っ白にしか見えない。


 夏の陽射しに早くもやられたのか、地面すらも凹凸一つもない平らであると感じてしまう。

 二週間ぶりの外出はキツい。


 だが行くしかない!

 待っていてくれ、マイまりん!

 俺は必ず君を手に入れる!


 覚悟を決め直してもまだ一面の白。

 ここまで来るとグラサンを装着した方がいいかも知れない。

 まだ時間はある。

 何にしろ、まりんちゃんが降臨するのは明後日。

 よし、グラサンを取りに戻ろう。


 あれ?


 扉がない。


 どこだ扉?

 あれ? そんなに歩いたっけ?

 まだ数歩しか外に出てない筈なんだが?


 あるのはやはり一面の真っ白。


 まさかこんなにも夏の陽射しが凶悪だったとは!



「あの〜、そろそろ、よろしいでしょうか?」


 遂には幻聴まで聞こえ始めた。


 黒髪の美女が俺に話し掛けている。


 明らかな幻聴だ。

 俺に話し掛けてくる美女などこの世に存在しない。


「…………。倉代くらしろのぼるさん、あなたは今、異世界に召喚されようとしています。召喚とは言え世界を離れる事は有ってはならない事、これは私達神々の力不足が招いた結果です。私達には召喚を遅らせる事しか選択出来ませんでした。そしてここはこの世界の境目、この世界の果てとも言える場所です」


 何か異世界召喚とか、都合の良い幻聴まで聞こえてくる。

 都合の良い割に、何故か呆れたようで淡々とした説明だが、これはいよいよ熱中症にでもなったのかも知れない。


「召喚を遅らせ、世界の境目で留めた理由は、あなたにギフトを授ける為です」

「えっ、チート能力が貰えるんですか!? 異世界チート万歳!」

「随分と切り替えが早いですね……」


 なる程、この白一色の世界、絶世の美女、これはライトノベルでよく見かける異世界召喚のあれだ!

 そしてこれから俺の異世界ハーレムチート生活が始まるのだ!

 例え夢で有ろうとも、ここまで条件が揃ったらバラ色の夢を見なければならない。


「前提知識は十分だったようですね。助かります。それで与える力についてですが――」

「あっ、強奪系とかありますか!? ラーニング能力系でも嬉しいです! 成長速度倍化とかも夢がありますよね!? でもスキルを手に入れる系がやっぱり王道かな〜! どんな能力にしようかな〜! いやでも―――」

「……すみませんが、授けるギフトは既に決まっています」

「……そうですか……」

「本当に切り替えが早いですね……」


 しかしチートを与えられて異世界召喚されるのなら、成功は約束されたようなもの。

 召喚と言う時点で国賓待遇が約束されているかも知れない。

 最近はハズレ能力で追放される系もよく見かけるが、女神様が直接くれるチートに抜かりは無い筈。


「あなたに授けるギフトは〈不屈〉。決して折れない心を授ける力」

「…………へ?」


 何か雲行きが怪しい。

 決して折れない心を授ける?

 あまり聞かない能力だ。

 と言うか、態々与えなくとも、それを持っている者が主人公や勇者と呼ばれるのだと思う。

 それにチートが有れば挫折も遠のく。

 チートとして授ける必要は皆無の筈だ。


 もしかして、それが必要になるような召喚なの!?


「はい、この〈不屈〉が最も必要な力となります。私達が授けられる最大の力です」


「ちょっ、キャンセル! 異世界召喚キャンセルで!?」

「それが出来ないので〈不屈〉を授ける事になりました。申し訳ありません」


 そう言うと女神は問答無用で俺に光を授けた。

 光は俺の中に浸透する。


「どうやら、時間のようです」

「わっ、身体が透けてきた!? せめてもっと説明を!?」

「それはその、ロス時間が多くて……」


 それについては何も言い返せない……。


「それでは、どうかご武運を。あなたのご無事を心よりお祈りしています」

「神様なんだから祈らないで!? 祈り受け取って叶える側でしょう!? 祈るからキャンセルを!?」


 だが俺の願いも虚しく身体はどんどん透けてゆく。

 女神も悲しげに首を振るのみ。


「そして、願わくば、世界をお救いください」


 祈るような女神の姿と声を最後に、俺の意識は光に呑まれた。





 《倉代くらしろのぼるの異世界転移を確認しました。

 これよりステータスを有効化します。

 ステータスの有効化が完了しました。

 名前の表記をノボル=クラシロに変更します。

 転生の女神カナエの介入により、ギフト〈不屈〉を獲得しました。

 スキル〈鑑定〉〈アイテムボックス〉を獲得しました。

 加護〈転生の女神カナエの加護〉を獲得しました。

 称号【異世界召喚者】を獲得しました》



 《熟練度が条件を満たしました。

 ステータスを更新します。

 ギフト〈不屈〉のレベルが1から5に上昇しました。

 称号【不屈の勇者】を獲得しました。

 称号【不屈の勇者】を確認。

 称号【異世界召喚者】を確認。

 職業ジョブ“異世界勇者”が開放されました。“異世界勇者”にジョブチェンジします》



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設定集
〈モブ達の物語〉あるいは〈真性の英雄譚〉もしくは〈世界解説〉
【ユートピアの記憶】シリーズ共通の設定集です。一部登場人物紹介も存在します。

本編
〈田舎者の嫁探し〉あるいは〈超越者の創世〉~種族的に嫁が見つからなかったので産んでもらいます~
【ユートピアの記憶】シリーズ全作における本編です。他世界の物語を観測し、その舞台は全世界に及びます。基本的に本編以外の物語の主人公は本編におけるモブです。

兄弟作
クリスマス転生~俺のチートは〈リア充爆発〉でした~
主人公と同じ部活の部長が主人公です。

本作
孤高の世界最強~ボッチすぎて【世界最強】(称号だけ)を手に入れた俺は余計ボッチを極める~
本作です。

本作
不屈の勇者の奴隷帝国〜知らずの内に呪い返しで召喚国全体を奴隷化していた勇者は、自在に人を動かすカリスマであると自称する〜
これです。

兄弟作(短編)
魔女の魔女狩り〜異端者による異端審問は大虐殺〜
主人公と同じ学園の風紀委員(主人公達の敵対組織)の一人が主人公です。

英雄譚(短編)
怠惰な召喚士〜従魔がテイムできないからと冤罪を着せられ婚約破棄された私は騎士と追放先で無双する。恋愛? ざまぁ? いえ、英雄譚です〜
シリーズにおける史実、英雄になった人物が主人公の英雄譚《ライトサーガ》です。

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