第77話 お買い物Ⅲ
リアルがごたついてて遅れました。申し訳ありません!
「カイル、これらを購入しようと思うのだけど、どうかしら?」
しばらくしてリルが確認を取りに来たため、俺は2人が購入する品物に視線を向ける。
〈リル購入品〉
・【武器】ライトコンポジットボウ×1
・【武器】フェザーククリ×1
・【武器】投擲ナイフ×5
・【矢・弾】麻痺毒の矢Ⅰ/Ⅱ×10/×3
・【矢・弾】死毒の矢Ⅰ/Ⅱ×10/×3
・【矢・弾】睡魔の矢Ⅰ/Ⅱ×10/×3
・【装飾品】巧緻の指輪(DEX+1)×1
・【消耗品】ヒールポーション×5
・【消耗品】アウェイクポーション×3
・【消耗品】スタミナポーション×3
・【消耗品】アンチドーテポーション×2
〈ウルコット購入品〉
・【武器】ハルバード
・【武器】ショートスピア
・【武器】投擲ナイフ×5
・【防具】ライトプレートアーマー
・【装飾品】パワードグローブ
・【消耗品】ヒールポーション×5
・【消耗品】メガヒールポーション×3
・【消耗品】アウェイクポーション×3
・【消耗品】スタミナポーション×5
・【消耗品】アンチドーテポーション×2
【弓】の説明の後、そのまま防具の説明へと入り、少なくともウルコットは金属鎧を買う様に促した。なんせ、ただでさえ〈スキル〉で回避力が低下するんだ。リスクヘッジとして防御力を上げるのは必須条件だ。
「前衛のウルコットはパーティーの要となる。後衛をしっかり守る上でも、攻撃を受けても損害が少なくなるようにしないとならないからな。3人パーティーで動く間は、ウルコットには金属鎧を装備してもらうぞ」
『金属鎧、か。敵の攻撃を躱す努力をするから革鎧ではダメか?』
「スキル〈全力攻撃〉を使った後にリルの弓を10発連続で躱すことが出来たら許してもいいぞ?」
『……それぐらいの回避能力がないとダメなんだな。わかった。我儘を言ってすまない』
「構わねぇよ」と答えると、ウルコットは現在装備できる金属鎧のサイズ合わせをするため、店員と共に試着室へと向かった。リルの時もそうだったが、エルフ族って言うのは金属鎧にアレルギー反応でもあるのだろうか?
「私は嫌よ? 金属鎧」
……あるんだろうな、アレルギー反応。
兎にも角にも、リルには金属鎧は必要ないことを伝え、今まで狩りの時に装備していた革鎧でオーケーという事となり、2人の購入品は今の状況で収まったわけだ。
「どうかしら?」と覗き込むように伺いを立てるリル。俺は笑みを浮かべて「いいと思う」と頷く。
「しっかりと回復薬も入れてるし、俺自身が押さえてほしいところは押さえられてるからね」
「任務先が森なら薬草系を採取して賄うんだけど、そうでない場合もあるものね」
「あぁ。備えあれば患いなしってな」
2人が思った以上にしっかりした考えの持ち主で安心したよ。命かかってるのに「当たらなければどうという事はない!」とか「装備さえよければ薬などいらん!」とか言ってケチる奴らじゃなくて本当に良かったよ。
え? 俺達がTRPG始めた時はどうだったか、だって? ふっ。言わせんなよ恥ずかしい。
それよりも俺が目を引いたのは【スタミナポーション】だ。TRPG時代にはなかった代物なんだよね、これ。
ステータスに追加されていたSTMを回復するためのポーションだというのはわかる。事実、効果は「STMを「20」点回復する。」というものだ。う~ん、やっぱり相違点の確認も早急にしないとな、と改めて思う。
念のためミィエルにも確認してもらい、問題なしの太鼓判を貰って、フールー姉弟はほっと胸を撫でおろした。
「良かったわ。じゃあ清算してくるわね」
「おう、慌てなくていいからな? 俺達は色々と見ながら待ってるよ」
そうして2人を待つ間に、俺はもう1つパーティーメンバーが増えたなら欲しいものがあるなぁ、と思い至ったアイテムを探す。俺、ミィエル、セツナの3人であれば現状問題なかったが、そこにリルとウルコットが参加となると、今すぐでなくとも絶対に欲しい逸品だ。
「さて、【通信水晶】はっと……お、ちゃんとあるね」
水晶の中に込められた魔晶石のMPを消費することによって、対となる水晶と会話を行うことができる魔法道具――通信水晶。使われている魔晶石は、時間経過とともに空気中からMPを蓄積する仕組みとなっており、使用者がMPを込める必要はないようにできている。簡単に言えばバッテリーだな。ただ蓄積できるMP総量が少ないため、通信できる時間は、内臓されている魔晶石の容量次第だが、最大で5~20分までとなっている。ちなみに1分通話可能になるまでは1時間の充電時間が必要になる。
この世界は機械技術もわりと発展しているのに、携帯電話的な物は一切ないんだよなぁ。
現実との差別化、ファンタジー要素の重視から来ているんだろうけど、おかげで割と不便である。通信水晶も基本ペア同士でしか通話できないし。本当、スマホのグループ通話が恋しいよ!
「やっぱり~、メンバ~が増えると~、欲しくなりますよね~」
「そうなんだよなぁ。パーティーが分割された時のことを考えると余計に欲しくなるんだよなぁ」
一応俺とセツナの間で一組所持しているのだが、最低でももう一組は欲しいところだな。ちなみに【通信水晶】のお値段は一組5万~20万Gとなっている。
まぁでも《決闘》による臨時収入もあったことだし、いくつか購入はしておくべきだろう。
「取り合えず容量が一番少ない物でもいくつか買っておけばいいか。大した用もなく使うことは稀だろうし」
「ですね~。あ、パ~ティ~用ですから~、ミィエルも~、出しますよ~? 臨時~収入も~、ありましたし~」
「ははは! 同じことを考えてたか。大変助かる申し出なので、ありがたく受けておくよ」
言ってくれたミィエルに俺は感謝しつつ、「余裕がある金額でいいからな?」と念を押す。結果として俺が100万G、ミィエルが50万G出し合い、共有財産とすることにした。金庫番に関しては後程決めることとしよう。
「今後は魔物の素材等による収入など、個人支出を補填したうえで余剰分を共有財産とするだろうけど、まぁその辺りもリル達含めて後程話そうか」
「了解~ですよ~」
「かしこまりました、主様」
と言うわけで、買い物に慣れる意味でもセツナに会計を任せ、【通信水晶(最大容量5分の5万Gのもの)】を3組、共有財産から購入することにした。
★ ★ ★
「さて、じゃあここでの買い物は終わりだな」
全員が“アドベントストア”での買い物を終えたため、俺は目的の銃器取扱店へ向かうことを告げれば、全員興味があるのがついてくることとなった。
店から出たら相も変わらず周りから注目される視線に曝され、溜息を吐きたくなる。人通りが多くなってきたので余計に向けられる視線が刺さる。まぁ今は気にしても仕方ない。
ミィエルの案内に従いながら、
「リルとウルコットは装備の具合とか確かめなくてもいいのか? 特にウルコットは【ハルバード】を早く振りたくて仕方なさそうだったが?」
『……その通りではあるが、【銃】も気になるんだ』
「私もよ。と言うか、何でカイルが【銃】を必要とするのよ?」
「何故って、欲しいからだけど?」
“アドベントストア”にもいくつか置いてあるには置いてあったが、1Hガンタイプしか置いてなかったため、専門店へどうしても足を運ぶ必要があったのだ。
『お前も〈シューター〉技能を伸ばすのか?』
ウルコットの純粋な疑問に、内心では余裕があればそれも良いな、と思いながらも首を振って否定する。
「俺が使うためじゃないさ。将来的にはリルもウルコットも使えるようにとは思っているが、今回はセツナ用に購入予定だな」
「セツナに、ですか?」
こてん、と首を傾げるセツナに頷きつつ、「正確には“バトルドール”用だな」と続ける。
「現状セツナは近接戦闘タイプにしてるけど、状況に応じて遠距離攻撃もできるように技能を組み替えることもあるからね。セツナが使わずとも、他の“バトルドール”を創造した時に使わせる目的でもあるんだよ」
「そ~ですね~。現状だと~、前衛に~偏ってますもんね~」
「手が足りない時や、相手のレベルが低い時は新たに“バトルドール”を創造すれば問題ないんだけどね。ただ俺が創造可能なレベルから考えても、セツナに任せるのが一番安心できるんだ」
大っぴらにLv9を名乗っている以上、一目のつくところでは創造できる“バトルドール”の最大レベルは7、緊急時で9までとなる。基本的に“バトルドール”の戦闘能力は「Lv-2」の数値が適性とも言えるので、ミィエルが主だって戦うような場面では肉盾ぐらいにしかならなくなってしまう。
だからこそ、戦力として見るならセツナに任せるしかないのだ。
今は近距離前衛型だが、セツナには保有する特殊能力の1つ――〈能力換装〉がある。これを使えば少量のMPと1時間の間隔が必要とするものの、技能関係を組み替えてセツナを遠距離火力役へ変更することが可能となる。
「この5人で動くとなると、盾役の俺、近接火力をミィエル、サブ火力をウルコット、そして中・遠のリルと役割を設定すると、どうしても距離が空く戦いは不向きになるんだ。セツナには基本、状況に応じて足りない枠を補ってもらおうと思っててな。だから現状だとバランスを考えてリルの補助と遠距離を担当してもらうつもり――でいたんだけど、それでもいいか?」
だから自然とセツナには遠距離をと思っていたが、あくまでこれは俺の頭で描いていたことであって、本人には確認をとっていなかったな、と思い出してセツナに確認をとる。
「勿論、問題ございません、主様」
「そうか? なら頼りにさせてもらうぞ」
「っ! はい! 必ずやご期待に応えて見せます!!」
ヒマワリの様な笑顔で応えてくれるセツナ。これなら問題なく任せられるな。
「私としても傍にセツナちゃんが居てくれると心強いわ。でも武器の共有を考えるのなら、セツナちゃんも【弓】にした方がいいんじゃないの? 【矢】の共有もできるわけだし」
「確かに【弓】でもいいんだが、【弓】で届かぬ距離、貫けない防御力を【銃】で突破するのさ。こうすることで同じ遠距離でも取れる手段の幅が広がるだろう? これはリルにも言えることだけど」
【銃】は【弓】と違ってダメージ量はほぼ固定値となる。これはレベルによって左右されにくいという事であり、当たりさえすれば低レベルでも一定の火力を出せると言うことでもある。これはパーティー内のレベル差が大きくなってしまう場合に、有効な選択肢となるのだ。
「様々な武器を使うことで対策も取られづらくなるしな。個人でもだが、パーティーとしても可能な限り多くの種類を扱えるようにしておいたほうがいいんだよ」
「成程ね。色々な手段を用意しておくことで、通じない状況を回避するのね」
「そう言うことだ。だから〈フェンサー〉である俺でも、こうして予備の武器には【メイス】なんかもちゃんと持ってるのさ」
斬撃属性に耐性のある相手に、【剣】しか持っていない状況では十二分に役目を果たせなくなる。そのため、剣士であっても時には打撃武器を振り回すことだってある。何事も状況に応じる備えをしておくべきなのだ。
ふふふ、パーティー全員が斬撃属性の武器しか持っていなくて、いざボス戦になったら斬撃攻撃無効のボスで、全員拳で戦う羽目になったと言う面白エピソードは記憶に新しいねぇ。あれはあれで面白かったけど、それはTRPGでの話だからな。現実でやるのは御免被る。
「いつ如何なる時でも有利な状況で立ち回れるように準備しておけば、自ずと任務成功率も、生還率も上がるってもんさ」
「ま~カイルくんほど~、多様で~対応力がある冒険者は~、少ない~ですけどね~」
まぁ単独行動でもあらゆる状況に対応可能なよう構成してるからな。器用貧乏とも言えるけど。
その後はミィエルと共に、一般的な冒険者――主にLv2~5ぐらいまでで起こりえる事例を挙げながら、リル達の認識を補足していく。冒険者として大先輩とも言えるミィエルのおかげで説得力もあり、目的の店に着くまで大いに盛り上がることとなった。
いやぁ、陰で俺もとても勉強になりましたよ。さすがミィエル先生。
いつもご拝読いただきありがとうございます!
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