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第48話 様々な問題の魔力補給

 何やら女子2人でこそこそと話し終えると、セツナの表情からは不安が取り払われ、俺の方に視線を向けると「主様、申し訳ありませんでした」と謝罪の言葉を口にした。



「セツナを慮ってのことだと存じておりましたのに、セツナの勝手な思い込みで主様の考えを否定してしまいました。本当に申し訳ありません」


「え? いや、謝ることじゃないぞ?」



 面を喰らう俺に、アーリアがわざとらしいため息を吐きながら補足の言葉を口にする。



「セツナちゃんは検証自体に拒否したわけじゃないのよ。もしアイテムでMPが回復できると解ったと時に、カイル君から直接(・・・・・・・・)補給してもらえなくなるんじゃないかって不安だったみたいよ」


「いや、そんな心配はいらないですよ。例えアイテムで補給できると解ったところで、非常時以外は全て俺が補給するつもりなんですから」



 そんなくだらないことをセツナは心配したのか? 冗談じゃない。例えアイテムで回復できたとしても俺がやるぞ。俺のMPならほっときゃ回復するからいいけど、アイテムに頼ったらコスパが悪すぎるだろう。日常生活で消費アイテム(リソース)削ってどうすんだよ?

 と言うか昨夜言わなかったっけ? いくらでもMPぐらい分けてやる、従者(セツナ)の望みは叶えてやるってさ。俺ってそんなに信用ないかな? わりとくどいぐらい言ってんのになぁ。ちょっと凹むぞ。


 気持ち沈む俺をアーリアは目で笑いながら「ほらね」とセツナに嘯けば、セツナは嬉しそうにアーリアに頷いていた。



「セツナちゃんが思っている以上に大事にされているのよ。もっと自信をもって、我儘をいいなさい。カイル君なら娘を溺愛する父親のようになんでも叶えてくれるわよ」



 「ね? カイル君」と笑顔で問われ、俺は苦笑いで頷いた。アーリアの指摘が、図星過ぎてぐうの音もでなかったからな。「娘を溺愛する父親のよう」とは本当に正鵠を射ている。年齢的には「妹を溺愛する兄」か? どちらにしろ変わらんか。



「なんなら『パパ』って呼んであげたら?」


「それは止めてください」



 精神年齢的(中身35歳)がパパと呼ばれると、援助交際してるみたいでさすがに嫌だぞ。



「なら『お兄ちゃん』?」



 パパよりはましだな。でもまぁ、



「俺の心を読んで揶揄うのはそろそろ終わりにしませんか?」


「ならミィエルは~、『旦那様(あなた)』って~、呼びますね~」


「どさくさに紛れてお前は何を言っているんだ?」



 普段からそんな呼び方になってみろ。ただでさえ『パートナー』として嫉妬の目で見られてるっつーに、んなことになったら間違いなく血を見ることになるぞ!?



「主にあんた以外が血を見るでしょうね」


「……正当防衛です」



 アーリアさん、わりとこのネタ好きだな。

 「そろそろ話を戻しますよ」と大きく息を吐き、セツナに視線を向ければ先程の不安顔がウソのように笑顔で頷いた。



「よろしくお願いいたします。お兄様(・・・)


「はいはい」



 セツナもノリが良くなってきたじゃないか。ただあまり悪い方向にはいかないでくれよ?


 しかし花が咲いたようなセツナの顔を見たら、世のお兄さん方はコロっと落ちるだろうな。実際に妹がいた俺でさえ、この娘が妹ならどれほど可愛いか、と思うのだから妹に幻想を抱く奴らには絶大な効果を発揮することだろう。事実、



「きゃ~! セっちゃん可愛いよ~! ミィエルにも~! ミィエルにも~!」



 興奮してセツナに抱き着くミィエルに、戸惑いながらも応えるセツナ。さらに興奮して騒ぐミィエル。いや~、可愛い娘たちがじゃれ合うのは癒されますなぁ。



「ふふ。これからも大変そうね、カイルお兄ちゃん(・・・・・)



 自分の見た目を指摘したら起こるくせに、こう言う時だけ有効に使ってくるんだから本当に良い性格をしているよアーリアは。

 そっちも大変だろお母さん、と言おうと思ったが、数倍になって返ってきそうなので大人しくすることにした。





★ ★ ★






 さて、大分紆余曲折があったように感じるが、セツナのMP回復実験と洒落込もうじゃないか。

 セツナの現在MPは「16」点。まずは使役者である俺がセツナの【マナポーション】を振りかけてみる。出目(・・)は解らないが、俺が使った場合は平均「9」点ぐらいは回復できたはず。


 そう思って振りかけたポーションが光の粒子へと変わっていくのを見つめているも、



「効果なしか」


「はい」



 頷くセツナに、俺はもう一度振りかけてみる。致命的失敗(ファンブル)の感覚はなかったため、間違いなく効果はあるはずだがセツナのMPは回復しなかった。念のため俺よりも回復効果が高いミィエルにも使ってもらったが効果はなし。この時点でアーリアが試す必要はなくなった。



「次は俺を通じて【魔晶石】から供給できるかの確認だな」



 これが可能であれば、次は他者からのMP補給と【魔晶石】を通じての補給を試すことができる。「5」点程度MPを含んでいる【魔晶石】を取り出し、俺はそこで動きを鈍らせる。


 どうすっかなぁ。この状況でセツナに「脱げ」って言うのは……本人から説明してもらうのが一番いいか。



「セツナ。補給をする前にどういう風にやるかセツナの口から2人に説明してくれないか?」



 既に【マギカハーミット】の留め金を外し始めていたセツナは、一瞬きょとんとするも、頷いて2人に説明をしてくれる。



「セツナのアビリティである〈魔力貯蔵〉は、セツナのコアに近い部分へ直接触れていただき、魔力を流していただければ補給することができます」


「成程ね。それでカイル君は補給を渋ったのね。命令で逆らえないセツナちゃんに、無理やりやらせる鬼畜主人だとバレたくなくて」


「悪意しかない解釈をありがとうございます。じゃあ、セツナ。背中をこちらに晒してくれるか?」



 アーリアのセリフは軽くあしらい、セツナに背中を向けるようにお願いする。一瞬何かを言いたそうに瞳が揺れたが、「かしこまりました」と頷く。ごめんよセツナ、さすがにこの状況下で昨晩のようにはやれんのよ。

 背中を向け、外套の下に着用していた“妖精亭”の制服であるエプロンドレスの上部をはだけさせ、濡れ羽色の髪を前へと下ろしてくれる。

 露わになるうなじと背中が妙に艶めかしく感じるが、その辺は意識的に捻じ伏せてセツナの背中へと触れる。



「んっ……」


「あー、声はなるべく抑えるように頼むぞ」


「かしこまりました」



 【魔晶石】から魔力を使用する感覚は覚えている。いつものように魔力を取り出し、しかし今回は俺の身体を通じ、セツナに触れている右手へと流れるイメージをする。果たして【魔晶石】に込められた魔力は俺の想像通りにセツナへと流れ、



「問題なく補給できてるわよ、カイル君」


「みたいですね」



 俺が感じた手応えの通り、無事セツナのMPを「5」点回復することができた。どうやら外部に込められたMPでも、使役者を通せば補給できるようだ。



「でも~、なんかセっちゃん。不服そうですよ~」


「ん? そうなのか?」


「不服、と言いますか……その、なんと申し上げたら良いのでしょうか? 魔力は満たされるのですが……」



 何やら思案気に唇に指をあてるセツナは、「そうです」と顔を上げて答えを述べる。



味がしなかった(・・・・・・・)、と申せばよろしいのでしょうか」


「味……成程、道理ね」



 セツナの感想に得心が言ったと頷くアーリア。どういうことですか、と視線を投げれば「簡単な話よ」と補足してくれる。



「魔力には“色”があるのよ。一番わかりやすいので“属性”かしら。〈アルケミスト〉を例にすればわかりやすいんじゃないかしら?」


「あぁ、なるほど。魔石にも色がありますもんね」



 その色に応じた錬金術(魔法)を発動できる〈アルケミスト〉技能。赤なら攻撃力UPや速度UP。緑なら防御力UPや回復など。確かに魔石に宿った魔力を使い発動していることを考えれば、魔力に色があると言うのは納得できる。



「妖精魔法で使う宝石も同じね。魔力の色に順応した触媒となるのだから、ルビーなら火の妖精、アクアマリンなら水の精霊と言ったようわかりやすくなっているわ。そして私達も同様に保有する魔力には“色”があり、それによって適性がきまる――ってこの辺は今どうでもいいわね」



 割と気になる内容なのだが、今は確かに関係がない。後程伺うとして、俺は彼女の言葉を引き継ぐように考えを述べる。



「つまりどんな魔法にでも使える【魔晶石】は、色がない――無色の魔力だから、セツナは『味がない』と表現したんですね」


「そう言うことになるわね」



 空になり、魔力の淡い光を失った【魔晶石(石ころ)】を見ながら、面白いなぁと呟く。もしかしたら魔力が込められた場所によっては風味や味が違う可能性もあったりするのだろうか?



「だとしたら、セツナは魔力の味で産地や対象を特定できるかもしれないんだな」


「……相変わらず発想が面白いわねカイル君は」



 魔力を鑑定(テイスティング)するセツナ。MPソムリエとでも名付けようか――いや、ないな。



「とりあえず使役者を通して【魔晶石】による補給は可能と分かった。であれば、次は【魔晶石】から直接補給できるかを試してみよう」



 使役者の魔力でなくても補給できることがわかったのは大きい。となれば、もしかしたらセツナ自身が直接【魔晶石】から補給できる可能性も出てくる。

 俺はセツナに「5」点のMPが含まれた【魔晶石】を手渡す。両手で包み込むように持ったセツナは、しかし困ったように眉尻を下げてしまう。



「申し訳ありません主様。どのように魔力を取り出せばよろしいのでしょうか?」


「魔力そのものは感じるか? こう石から仄かにあふれる熱的なもんなんだが」


「感知はできるのですが、どうすれば取り出せるのでしょうか?」


「石の中の魔力を手で鷲掴みして引っ張り出すイメージ、かなぁ」


「ミィエルは~、体の一部みたいに~、イメ~ジして~、ぽや~っとしたやつを~、ぎゅ~って吸い出すように~使ってます~」



 俺のイメージではわかりづらかったのか、セツナの視線はミィエルへと向き、同じように挑戦するも、



「???」



 肩を落とす結果に終わってしまった。

 ……ごめんセツナ。俺も説明するのは難しいんだ。なんせ感覚でやっちまってるから。



「元々純物理職の“バトルドール”だもの。魔法の知覚を持っていたとしても、魔力の扱いは難しいんじゃないかしら。確か付与できるスキルにも魔力系の物はなかったわよね?」



 確かにそうなのだが、何となくセツナならやれそうな気がするんだよね。俺の直感でしかないんだけど。ただ、急ぐようなもんでもないし今は置いておくとしよう。



「そうですね。では最後に俺以外から補給ができるのかを確認しましょう。セツナ、試してみても大丈夫か?」


「はい。ミィちゃんとアーリア様なら構いません」


「えへへ~。そう言ってもらえると~、嬉しいよ~」



 俺以上にセツナにデレッデレなミィエルは早く試したそうにうずうずしている。ふむ、意地悪をするわけではないが、アーリアに比べてセツナと親しいミィエルには俺の許可なくやってもらい、アーリアに許可を出してやってもらうとするか。それにより見えてくることもあるしな。後は――



「あの、主様?」



 袖を引っ張られてセツナに視線を向ける。今以上に服がはだけない様に抑えながら、こちらを見上げていたので「どうした?」と尋ねれば、少しもじもじしながら、



「我儘を申し上げてもよろしいでしょうか?」


「ん? いいぞ。なんだ?」


「魔力補給は、最後は主様にお願いしたいのです。ダメ、でしょうか?」



 可愛いことを言ってくれる。俺は「いいぞ」と頷けば、ぱぁっと花が咲いたような笑顔を浮かべる。可愛くて思わず頭を撫でる。んじゃ、気合も入ったところで「お願いします」と、まずはアーリアへお願いしたのだが――



「ミィエルが~先にやります~! セっちゃんの初めては~、ミィエルがやります~!」



 はいはい! と手を上げて立候補するミィエル。まぁ誰がやってもいいんだけど。



「いいのかミィエル?」


「だいじょ~ぶです~! ね? セっちゃん」



 自信満々に頷くミィエル。セツナを見れば、セツナは嬉しそうに微笑み「ではお願いします、ミィちゃん」と頷く。まぁ2人が良いなら、いいか。

 セツナはミィエルが触れやすいように背中を向ける。瞬間、彼女の頬を染めて視線を泳がせる。



「うぅ~……」


「ミィちゃん?」


「な、なんでも~ないです~! じゃあ~、いくですよ~!」


「ミィエル、あまりMPを注ぎ過ぎないでくれよ。目安は3点ぐらいでいいぞ」



 「わかったですよ~」と笑顔で頷き、気合をいれてセツナに触れ、魔力がゆっくりとミィエルからセツナに流れ込むのを俺も知覚した(・・・・・・)。刹那――バチィッ!



「っ!?」


「あうぅっ!?」



 ビクンッ! とセツナの身体が震えた瞬間――ミィエルとセツナの間に乾いた音と共に魔力が弾け、ミィエルは弾かれた勢いのまま尻餅をついてしまった。



「ミィエル!?」


「ミィちゃん!? お怪我はありませんか!?」


「あやや~。ちょ~っと~、痺れただけですよ~」



 振り返りミィエルの両手を握って心配そうにのぞき込むセツナに、ミィエルは安心させるかのように笑顔を投げかける。ステータスを確認しても2人とも怪我をするようなことにはならなかったようだ。思った以上の反応だっただけに、俺も胸を撫でおろす。



「第三者が魔法に干渉しようとした拒絶反応ね。ミィエルは慣れてるから大丈夫でしょうけど、2人は感覚がおかしかったり痛かったりしてないかしら?」



「セツナは問題ありません」


「あぁ、俺も少し違和感(・・・)を感じただけだ」



 さらっと「いつものことよ」と言うアーリアに俺は呆れた視線を送ってしまう。当然、アーリアは俺の視線など気づいていても気に留めず「セツナちゃんは気持ち悪かったりしないかしら?」と先を促す。

 さすがは研究者だな。この程度じゃ動じない。



「はい。ミィちゃんの優しい魔力を感じたと思ったら、セツナの中から追い出すような感覚はありました。ですがセツナ自身は何も。セツナはミィちゃんを拒絶したわけでは――」


「んふ~っ! 『優しい魔力』だなんて~、嬉しすぎます~!!」



 立ち上がってすぐにセツナに抱き着き、頬ずりをするミィエルに、セツナも安堵の笑みを浮かべて抱擁する。仲睦まじきことは良きかな良きかな。



「という事はほとんどカイル君にフィードバックされたのね。カイル君、違和感はまだ残っているかしら?」


「いえ、特には」



 違和感と言っても、ほんの少しむずがゆく感じた程度だったからな。今では何も感じない。



「そう。もしかしたらミィエルとカイル君は魔力的に相性が良いのかもしれないわね。相性が悪いと吐き気を催すなんてレベルじゃないのよ?」


 にやりと笑うアーリアの目は全く笑っていない。成程、出来る限り味合わないことを願うとしよう。



「朗報ね。これならミィエルでもセツナちゃんに魔力補給できると思うわ。カイル君、ミィエルの魔法への干渉を許可してみてくれる?」


「わかりました。セツナ、ミィエルの魔力を迎え入れてくれてくれ」


「かしこまりました、主様。ではミィちゃん、もう一度お願いしますね」


「もっちろんだよ~♪」



 続けてもう一度試してみたところ、試みは成功。「これがミィちゃんの魔力なんですね」と微笑むセツナに喜びを全身で表したミィエルが再び抱きついた。



「ミィエルを通しての【魔晶石】も成功ね」


「可能だとわかっただけでも重畳ですが、補給したMPの半分しか回復できないとは」



 そう。ミィエルでもセツナのMP補給は可能だと判明した。ただし、補給した半分しか回復しないと言う残念な結果にはなってしまったが。これは【魔晶石】の魔力を使用して同じ結果となった。

 後にアーリアで試してみても同様で、補給は可能なのだが効率は著しく低下していた。ミィエルなら半減。アーリアに至っては6割減と言う結果がもたらされた。

 何事も万事うまくはいかないという事だろう。


 少し残念に思う俺だが、アーリアとミィエルはむしろ逆の感想を抱いていた。なんでも、ここまで他者と相性が良いことは稀なことなのだそうだ。



「普通は他人の魔力なんてそうそう交わるもんじゃないのよ。基本は反発しあってお互い良いことなんてないわ」


「でもMPを譲渡できる〈トランスファー〉とかはどうなるんですか? あれって消費MP分回復できますよね?」


「あれは信仰する神々と言うあたしたちの上位者が、手を加えてくれてる魔法だからできることよ。だから他の魔法形態ではMPを譲渡する魔法なんてないでしょ?」



 言われてみれば確かに存在していない。俺の感覚ではそれぞれの魔法の差別化、という認識だけだったのだが。現実になると色々な要因がでてくるもんなんだなぁ、と感心する。



「ふふふ。ミィエルは兎も角、あたしでも可能だったことは良い誤算だったわ。カイル君を手放す理由がさらになくなったわね」


「ははは……お手柔らかにお願いします」



 何にしろ非常時に俺以外から――信用できるミィエルとアーリアからMPをセツナに分けられると解っただけでもありがたいことだ。



「あたしとミィエルも、力になれると解って良かったわ。折角なのだから、回復しきってない分、やってあげたら?」



 「さっき約束してたでしょ?」とアーリアに言われ、俺もそうだな、と頷いてしまう。



 この時、俺は優先順位の高い重大な案件の1つが解決できたことで、すこぶる気分が良かった。だからアーリアの提案をすんなりと受け入れ、思わず足りない分を補給してしまおう、とセツナを呼び寄せてしまった。検証が終わった段階で、後は部屋でやるつもりだったことを忘れて。



「よし、セツナ。足りない分の補給をするから、背中を向けてくれ」


「はい、主様♪」



 ステータスを確認し、MP完全回復まで残り「20」点ぐらいか、とセツナに魔力を注ぎ込む。上昇する数字だけを見ながら、俺の思考は先の事へと馳せていく。



「んっ………」



 後は無事、セツナが冒険者として登録できればまずは安心だな。後はセツナ1人でも消耗品か何かで回復する手段がほしいな。マジで使い魔(ファミリア)の作成を考えてもいいかもな。



「~~っ! ~~~~っ♪」



 使い魔は俺自身のMPを外部保存するためのアイテムとしては優秀だからな。俺のMPならセツナへの補給効率も落ちないし、俺自身のMP総量も増えるから、丁度いいかもしれん。経験点も足りてるしな。



「っ! ―――――っ! んん、あっ……主様、ありがとうございます♪」


「あぁ、これぐらい朝飯――」



 「――前だ」と口にしようとして俺は自分が犯した失態にようやっと気づいた。

 濡れた瞳で蕩ける様な――恍惚の笑みを浮かべて見上げるセツナと、それを見て顔を真っ赤にするミィエルとアーリアの姿に。

 どうやら俺は――



「主様?」


「な、なんだい?」


「セツナは、主様のお顔が拝見できないままでは、やはり寂しいのです。ですから可能であれば、昨晩のように正面から、お願いできませんでしょうか?」


「カ~~イ~~ル~~く~~~~~んっっ!!!」




 セツナのお願いと同時に、ミィエルの怒号が響き渡った。



 ――とんでもない失敗(ミス)を引いていたらしい。




 カイル・ランツェーベル……アイデア判定・危険感知判定――共に致命的失敗(ファンブル)


いつも閲覧いただきありがとうございます。

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