第3話 エルフの姉弟
目が覚めれば付けっぱなしのパソコン画面には、突っ伏して寝てしまったために入力しっぱなしになってしまったYの文字で埋め尽くされていた。
なんだ夢だったのか。本当実にリアルな夢だった。とりあえず今日は休みだし、布団を敷いてゆっくりもう一度寝るとしよう。
――なんてことはありませんでした!!
目が覚めれば昨夜眠りについた木の上だ。心地よい風と小鳥たちの囀り、そして眩しい朝日が夜明けを告げてくれている。
他の枝にかけてあった荷物を手にし、木から飛び降りて無難に着地をする。身体の使い方も1日でだいぶ手慣れたものである。
「まずは朝食だな。STMを回復させとかねーと」
ステータスウィンドウを再び可視化し、HPとMPが完全回復していることを確認する。STMは夕食を摂ってからすぐ寝たせいか大きな減少はない。朝食をとれば70ぐらいまでは回復できそうだ。
一応周囲を探索したのちに朝食の準備をし、さっさと胃袋に納める。さすがに3食続けて雑炊は飽きてくるが贅沢は言っていられない。ハンバーガーとか食べてぇなぁ……
朝食を終え、川で顔を洗い、意識がはっきりした段階で装備を整える。腰には使い慣れた剣4本を提げ、今まで背中の【ウェポンホルダー】に装着していた【ショートスピア】は、現状必要ないので巾着バッグの中にしまっておく。元々この【ショートスピア】は攻撃用ではなく、〈コマンダー〉や〈ウォーリーダーの〉技能を扱う上で必要な軍旗を装着した軍旗槍だ。仲間のいない現状では使うことがないためしまって構わないのである。
代わりに【風見の盾】をウェポンホルダーに装着し、さらに【エルハートケープ】をたすきのように体に巻き付ける。
【風見の盾】は遠距離攻撃の対象となった際に「回避力判定に+1」の修正を与えてくれる盾で、【エルハートケープ】は名前の通り両端に重りになる取っ手を付けた、最長3mほどの布なのだ。ただ繊維に金属を練りこんであるため、列記とした盾である。この盾は【特技】である布操術を扱うために必須であり、このキャラクターの回避力を底上げしてくれるメイン武装の1つなのだ。
装飾品の確認も終え、本日から早速人里を探してみようと思う。言うなればこの世界にきて初めての旅である。自然と胸が高鳴ってしまうのは仕方がないのではなかろうか。
「とりあえず川があるわけだから、下流に行けば絶対村なり街なりあるよな」
昨日の時点で周囲1km以内に人里などはなかった。でも川は細すぎる言うわけでもないし、水辺の近くに村や町が発展するもんだったはず。ならばこの川を1km以上下っていけば遅かれ早かれ人里に下りれるはずだ。そう思いながら川の上流を見てしまう。好奇心的には川の上流を目指してみたい。
「いやいや、まずは安定した地盤の確保だ。人里に下りて俺の知識と相違がないかの確認が第一だろう」
冒険はそれからでも構わないのだ。カイルが俺になる前の記憶や知識がはっきりしていれば、そんなことはなかったんだけど、残念ながら俺の記憶や知識が強すぎるらしい。物の扱いや魔力の扱い方などは覚えているのになぁ。
「とりあえず食料が尽きる前に辿り着きたいな!」
兎にも角にも川沿いを下って行くと決めて慌てすぎない程度に歩を進めた。記念すべき冒険の1歩である!
★ ★ ★
――かれこれ3日経っていた。
川は未だに続いており、先細りすることなく綺麗な水を運んでいる。しかし周辺は歩けど歩けど森、森、森。むしろ始め居た場所より鬱蒼と生い茂ってきている気がする。わりと休まずに歩き続けてるんだけど……
唯一の救いは、今のところ俺自身に脅威が迫ったことはない。いや、まぁ食料不足になりえるという驚異は着々と迫ってきてはいるんだけども……
川が続いているため水の心配はない。一応食料不足にならないように野生動物である鹿や兎を狩ったり、山菜を採取するようにはしているため、多少の食糧問題は何とかなってはいる。動物の解体なんてしたことなかったけど、カイルの知識があったためなんとかなった。だけど――
「気持ち的に結構きついな。正直」
日本で義務教育を終え、流れるようにサラリーマンとなった俺は、旅など当然したことはない。心からの安全が確保されていない状態を、一人で過ごし続けた経験も当然ない。体力的には問題ないが、精神的には結構来るものがある。人肌がものすごく恋しい。
「〈ソーサラー〉を取得してれば〈フライ〉なり〈レビテーション〉の魔法が使えたのに……なんで俺は〈コンジャラー〉にしたんだ……」
〈エンハンサー〉系統でも肉体を変化させて翼を生やしたり、小さい動物への変化を行う技能はある。生憎と俺は取得しなかったんだけど。そんなフレーバーを習得する余裕もなかったし。
木の上から覗こうにも、木々の高さがあまり変わらないため見晴らすことができない。だからひたすら歩くしかないのだ。
「あーくそっ。気持ちも乗らんし、ちーっと休憩にするか」
腰かけるのにちょうどよい岩に腰を下ろし、打開策はないかとステータスウィンドウを表示する。主に見るのは扱える魔法全般だ。
〈ネクロマンサー〉があと1レベル高ければ、〈レイスフォーム〉を使用して精神を上位レベルの浮遊型アンデッドへ変化させることができるの。だが、残念ながらレベルを上げる経験値は残っていない。
〈ドールマスタ―〉の技能で手持ちのぬいぐるみに意識を憑依させても、ぬいぐるみ事態に飛ぶ能力がなければ、より視界は下がって意味がない。人形を操作している間は俺自身身体を動かすこともできない。
「いや、待てよ。〈リモートドール〉ではなく〈ドールサイト〉なら。視覚だけ共有だけなら俺自身は動ける。ぬいぐるみを上空に投げてから視覚を共有すれば……」
いけるっ! つかもっと早く気づけよ俺!
早速手持ちのぬいぐるみに〈ドールサイト〉を使用。視覚の共有具合を確認する。うん、問題ない。少し投げやすいように手ごろな石を人形に括り付け――カイル選手。振りかぶって、投げた!
真上へ力の限り投擲。わりと高く投げれたな。よし! すかさず〈ドールサイト〉にて視覚を共有。ぬいぐるみの視線は川の下流へ向けてある。村や町があれば木々が開けて人工物が見えるはず。
流れる視界は木々を追い越し、徐々に失速しながらこの先の景色を映し出す。
「見えたっ!」
はたして人形は俺に欲しい情報をもたらしてくれた。割と先のほうに少しだけ開けた箇所があり、建物らしきものが見える。規模はそこまで大きくないから集落だろうか。どちらにしろ人がいるかもしれない!
「やったぜ! 距離もそう遠くないし! 走ればすぐじゃねぇか!」
距離的には5kmあるかないくらいか? 何にしろ歩いても今日中に辿り着ける。
視界共有を解除し、落ちてきた人形をキャッチ。巾着バッグにしまうと、心持ちも新たに下流へ向かう。明確なゴールが見えたことで、気持ちとしてはスキップで向かいたいぐらいだ。
「あーほんとマジであってよかった! 気持ちが切れる前で本当よかった!」
規模的によそ者に融通する余裕があるかはわからんが、一応金もある。交渉すれば寝床や食べ物を融通してくれるかもしれん。最悪馬小屋でもいいから、屋根の下で寝たい。つかもう誰でもいいから話したい! いや本当もう切実に!
うん、やっぱり歩くより走ろう。明るいうちに着いてしまおう。
だらだらと歩いていた足に力を入れ、下流へ向けて走り出す。俺の足なら全速力で5分とかからないだろう。
4日ぶりだもの。精神的にも結構キてたし、浮かれても仕方ないでしょ。
だからこそ予感とともに足を止めた先、後一歩進めば俺を射抜いていただろう矢が地面へと突き立てられた事実に肝を冷やした。続くように俺の左頬をかすめるようにもう一本の矢が飛来し、背後の木へ軽い音を立てて突き刺さる。
頭に冷や水をかけられたように浮かれた気持ちが冷める。冷静になった頭が、恐らく危険感知判定に成功したから身体が自然と止まり、頬をかすめるように飛来した矢を避ける必要はないと判断できたのだと思いいたる。
警告、だろうね。俺は両手を上げ、手に何も持っていない、抵抗しないという意思表示をする。
『―――――――!? ―――――――!』
姿は見せないが声だけが響く。男の声だ。ただ何を言っているのかわからない。これは何語だ?
頭にとっさに浮かんでくるのはエルフ語か妖精語だ。参ったな。俺はどちらの言語も取得していない。仕方がないのでとりあえずTRPG時代では万国どこでも通用する共通語で話しかける。
「すみません! 君たちの言語がわからないため共通語でお願いできませんか! 俺は森で迷った旅の者です! あなたたちに危害を加えるつもりはありません!」
張り上げて声をかける。その間に気配探索を試みる。蝙蝠ピアスの最大半径10mまで広げる。索敵範囲に対象は2人。男女のペアのようだ。耳が長いからエルフかな。弓に矢を番えたまま、ゆっくりとこちらに近づいてきている。
対象が確認できたため俺はそのまま相手のレベルの把握を試みる。解析判定――アナライズダイスは正直得意ではないが、相手の力量を探るだけの力量判定――スペクタクルダイスなら冒険者レベルが高い分成功しやすい。
結果は男がLv2、女がLv3ほどの力量だとわかる。正直脅威にすらならない。だが敵対したところで得にもならないし、とりあえず相手の出方を待つ。
しばらくすると女性が姿を現す。身長は170cmほどだろうか。腰ほどまで伸びた真っすぐな薄い金色の髪に緑色の瞳。見事に整えられた目鼻立ちに細身ながら女性らしいしなやかさ露わにした肢体。急所のみ革製の鎧で覆い、森で動きやすいように緑色の布で誂えたシャツとスカートでその身を包んでる。何よりも特徴的なのはやはり、人よりも長い耳だ。間違いなく、エルフ族である。
「この言葉なら通じるかしら?」
「あぁ、助かります」
「あなたはなぜ私たちの村に近寄ろうとしたのかしら?」
「森で迷ってしまって。もうかれこれ5日目ぐらいなんです」
「たった一人で森に入ったの?」
「はい。腕には多少覚えがありますので。ただ森が深すぎて道に迷ったのは想定外でした。寝るところにも苦労していたので、人里が見えたときには嬉しくなってしまいまして」
「つまり目的は?」
「馬小屋でもいいので、屋根のあるところで泊めていただけないかと。あと食料を売っていただけると助かります」
内心では実物のエルフを直に見れた興奮で、今にも駆け寄りたい。スマホがあれば写真撮りまくりだろう。だが状況が状況なので努めて冷静を装う。
「とりあえず、弓を下ろしてくれるとさらに助かるんですけど。怖くて話もしづらいですし」
「ならあなたが腰に提げいる物騒なものを、こちらに投げていただけるかしら? 得体のしれない怪しい人が武器をもっているんだもの。私たちも手が震えて仕方がないの」
「思わず間違えて手を放しちゃいそうだわ」なんて、さらに鋭い視線を向けられる。こちらの心理を見抜こうとしている眼差しだ。
うーん……まぁ俺自身は嘘を言っていないし、やましい気持ちもない。「わかりました」と頷いて4本の剣をベルトから外し、そっと彼女の前へと放り投げる。ついでに雑囊と巾着バッグも同じように手放した。再び両手を上げて無抵抗ですとアピールする。
「俺の命とも言える剣なんで、無下に扱わないでいただけると助かります」
あっさりと荷物と武器を放り投げたことに少し目を見張ると、弓に込めた力を緩めて矢筒に戻す。空いた手で剣を一本――【ルナライトソード+1】を手に取り、さらに驚きに目を瞠る。どうやら剣の知名度を抜いたらしい。このレベル帯で見抜くなんて知力が高いのか、〈セージ〉技能が高いのか。
「旅人さん、あなたとんでもない宝剣をお持ちなのね」
「一応全部が魔法の剣ですから。俺の命を預けてきた相棒たちです」
「……手入れもしっかりなされているのですね」
「鍛冶技能を持ってないので、本格的なのは難しいですけど」
命を預けるといってもまだ4日目ですけどね! と内心で自分に突っ込んでおきながらも、なるべく無害そうな人を装って会話を続ける。まだ男の方はこちらに矢を向けたままなのである。
エルフの女性は4本とも剣を腕に抱えると、後ろに控える男に聞こえるように何かを告げる。男の方は共通語がわからないのかな?
いくつかの言葉を二人が交わすと、姿を現した男性――身長は180cmと俺より少し高いくらいか。金髪で美形、ただ鍛えられて引き締まった肉体をもつ男性が姿を現し、俺の巾着バッグの中身を確認し始める。
女性も中身を確認したのか、バッグを男に持つように指示を出し、
「申し訳ありませんが、荷物もこちらで預からせていただくわ。それで良ければ、村への滞在を許可します」
「それはありがたいです。荷物は勝手に盗んだり使ったりしないのであれば構いません」
ニコリと愛想の良い笑顔を浮かべる。内心の俺は「うぉおお! エルフの村だぁああああ!」と興奮しっぱなしであるが。
「改めて自己紹介を。俺はカイル・ランツェーベルって言います。カイルと呼んでください」
「私はリル・フールー。彼はウルコット・フールー。私の弟です」
「ご姉弟でしたか」
全然似てねぇ! と表情に出さないように気を付けつつ、まず重要なことを聞かねばならない。
「彼――ウルコットさん、共通語は?」
「共通語は村でも私と母、それと村長ぐらいしか話せません」
「そうですか……」
言葉が通じる人材が少なすぎる。これは正直参るな……
「リルさん、1ついいですか?」
「はい、なんでしょう?」
「先ほどから話されているのはエルフ語で間違いないですか?」
「えぇ。私たちは見ての通り『エルフ族』ですから」
「つまりエルフ語を取得しなければ皆さんと話せない、と言うことですね?」
「えぇ」
「エルフしかいらっしゃらないんですか?」
「時期が合えば妖精族もいる時がありますが、基本は私たちエルフだけですね」
「ちなみにドラゴン語とか話せる人は……」
「共通語より話せる人がいませんよ」
「ですよね……」
……俺、翻訳魔法である〈タング〉が使えないことに絶望したの、初めてだわ。今から〈ソーサラー〉系統のレベルを上げる――経験値はない。
ちなみに俺が話せる言語は『共通語』とカイルの出身地である『エイルラント語』、そして魔法技能を取得するうえで必要となる『魔法専門語学』と、このキャラクターの設定上必要になっている『ドラゴン語』だ。明らかに汎用性に欠けている言語取得と言えよう。
……まぁ嘆いても仕方がないのだが。
ちょくちょく後ろのウルコットとリルがエルフ語で意思の疎通を図っているが、このままでは情報が足りなさ過ぎて危ない気がする。
武器もアイテムも取り上げられた状態で、相手の言語もわからないとなると……だまし討ちされても文句は言えない。
レベルだけ見れば何かされても脅威ではないかもしれないが、それはTRPG時代の話だ。人肌恋しい時に人と話ができ、エルフをリアルで見れて浮かれてしまっていたが、人間腹の中で何を考えているかはわからない。かと言って真偽判定をすることで、これからの心証を悪くしたくはない。
だがしかし、この世界を知らない現状では、安易に他人を信用してはならないだろう。何となくリルは信用できるような気持ちになっているのだが……
俺は意識内でステータスウィンドウを呼び出し、〈セージ〉の技能レベルへと意識を向ける。学者技能――〈セージ〉はレベルが高ければ高いほど、解析や見識などの知識を基準とする判定にボーナスがつく。なおかつレベルが上昇するたびに1つの言語の読み書き、または会話を取得することができるのだ。
まだ技能レベルの取得は試していない。取得すればすぐに話せるようになるのかも確認したいと言えばしたい。
レベルもステータスウィンドウから上げることができるのは確認済みだ。ただ経験値がどのように取得できるのかはまだ把握できていない現状で、余剰経験値を消費していいものか悩んでいたのだ。
しかしようやっと見つけた人里――エルフの村で意思疎通ができないままでは、情報収集ができない。終いには村ぐるみでだまし討ちに合う――なんてことになっては洒落にならないのだ。
やっぱりここは使いどころだよな。
俺は経験値を消費してセージ技能をLv2へと上昇させ、取得言語にエルフ語(会話)を選択。
冒険者レベルが上がったわけではないからだろうか。変化らしい変化を実感できないのだが――
『姉さん。少しでも怪しいことを言ったら言えよ。後ろから射抜いてやるからさ』
――即実感できました! それはもうばっちりと、何の違和感もなく弟君の言葉が聞き取れるのだ。恐ろしいほどのスピードラーニングである。さすがは魔法の世界。
しっかし、現実にこんなシステムが欲しかった……俺前世じゃ英語とか外国語めっちゃ苦手だったんだよなぁ。
兎にも角にもこれでリルとウルコットの会話、ないしは村内での情報収集は確実なものになった。気持ち的には会話を試してみたいが、いきなり話せるようになるのは拙いよなぁ。まだ出会って1時間と経っていないのだ。村にも入っていない状態で勘繰られるのも面倒だし、何よりエルフたちが信用に足るかどうか、試すためにも黙っているのが得策だろう。
「リルさん、ウルコットさんはなんと言っているんですか?」
「あなたが変な態度や言動をしたらすぐに伝えてほしい、と言っているだけですよ」
「ははは。それは怖いですね。うーん、これはエルフ語の取得を考えた方がいいですかね?」
「残念ですが、それほど長く滞在を許可できないと思いますよ」
「それもそうですよね。俺、実はエルフの村って初めてなんですけど、共通語を覚えている人がいないと不便ではありませんか?」
「私たちの村は、他の種族と交流を持たなくても不便はしておりませんから」
「それでもリルさんは覚えていると言うことは、全くないわけではないんですよね?」
「えぇ。私の場合は立場上、他種族の行商人やあなたのように村に近づく者と話をすることが多いですから」
「リルさんは共通語を覚えるのにどれ程かかったのですか? 優秀な先生でもいない限り、他言語を覚えるのは大変だと思いますけど」
「私は母が先生になってくれましたから。それでも不自由なく話せるようになるのに、3ヶ月ぐらいでしょうか」
知力の初期ステが高いエルフで3ヶ月か。なら一瞬で覚えた、なんて知れたら後ろのエルフさんは「嘘を吐いた」だの「騙していた」だの面倒なことになりかねないかな。
『ちっ。調子に乗って姉さんに声かけ続けてんじゃねぇぞ人間』
……大分ヘイトを稼いでしまってるなぁ。まさかと思うけど、〈ヘイトリーダー〉がこんな所で効果が出てる、なんてことないよなぁ?
距離的に考えて村まではもう少しかかるだろうけど、これ以上ウルコットの機嫌を損ねて村人に妙なことを吹き込まれても面倒だし、当たり障りのないところで会話を切り上げるとしよう。
俺は面倒ごとにならないように祈りつつ、エルフの村への期待に胸を膨らませていた。