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第24話 再開

 ウルコットのレベルは力量判定(スペクタクル)でLv2と判定できている。つまり俺の解析判定(アナライズ)でも抜くことは可能だ――成功。





名:ウルコット・フールー 67歳 種族:エルフ 性別:男 Lv2

DEX:20 AGI:19 STR:16 VIT:14 INT:18 MEN:19

LRES:4 RES:5 HP:6/20 MP:19/19 STM:19/100


〈技能〉

冒険者Lv2


《メイン技能》

ファイターLv2

シューターLv2


《サブ技能》

スカウトLv1

レンジャーLv1


《一般技能》

ガードLv2


〈装備〉

武器1:なし

鎧:なし

盾:なし


〈装飾品〉

頭:なし

耳:なし

顔:なし

首:なし

背中:なし

右手(腕):なし

右手(指1):なし

左手(腕):なし

左手(指1):なし

腰:なし

足:なし

その他(任意):なし


【取得スキル】

〈全力攻撃Ⅰ〉


【取得アビリティ】


【特技】


【加護】

〈森の友人・風読みの加護〉





 無事生きていることは確認できた。

 HPを失ってはいるがマイナス域にいっているわけではない。血まみれではあるが、血のほとんどは乾いており両腕を失っている以外はケガらしいけがをしていない。両腕の切断面からも流血は止まっており、止血するためにも回復魔法か何かを受けているのは間違いないだろう。

 つまり、ウルコットは生かされるべくして生かされたと言うこと。

 そしてわざわざ一本だけ焼け焦がされた大樹の傍に放置するなんて、発見してくれと示唆しているようなもんだ。これ木が焼かれた時期とか判るか?

 見識判定(インサイト)――失敗。



「ミィエル、この木が焼かれた時期とか判るか?」


「ミィエルは~、知識面はあまり~……」



 ふるふると首を振るミィエル。確かにミィエルは〈セージ〉持ちではなかったのだから致し方ない。こういう時のために〈セージ〉技能のレベルアップはした方が良いか? どちらにしろ再判定には多少時間がかかる。まずはウルコットの回復が優先だ。



「この~、両手を治すには~、最高位の神聖魔法じゃないと~、無理ですね~」


「〈レストレーション〉か。そんなもん使える人材がこの大陸にいるのか?」



 Lv15で使えるようになる神の奇跡〈レストレーション〉はあらゆる怪我や病気を治す最高位の神聖魔法だ。効果はあらゆる不利になる効果の消滅とHP全回復。単純にして最高の神聖魔法だが、まず使える人材は大陸中探して1人いるかいないかだろうさ。ちなみに俺がGMとして行ったキャンペーンで使えるNPCが1人だけいた。PCでは到達できたものはいない。勿論、カイルが参加しているキャンペーンも同様だ。



「確か欠損部位があれば魔法でくっつけることはできたよな?」


「そうですけど~、見たところ~、周囲にはなさそ~です~」



 だよな。切断面からみて鋭い刃物で切断されたっていうより、嚙み千切られたような感じだしな。兎にも角にもウルコットに目を覚ましてもらって、事情を聴かないと始まらないだろう。

 巾着バックからアウェイクポーションを取り出しウルコットに振りかける。液体は光の粒子となってウルコットに降り注がれ身体に浸透していく。



『ぐ…………』


「ミィエル、ヒールポーションを2本ほどかけてやってくれ。俺が使うより効果が高いはずだ」


「お任せですよ~」



 〈レンジャー〉技能が俺より高いミィエルの方が回復量が高いためミィエルに2本ヒールポーションを渡し、意識が戻り始めたウルコットにかけてもらう。よし、これでHPは全回復(ぜんかい)だな。



「ミィエル、エルフ語は話せるか?」


「一応話せますよ~」



 マジか、それは助かる。さすがに取得言語までは解析で見抜けないからな。



「今後はエルフ語で頼む」


『わかりました~』



 笑顔で頷くミィエルに頷き、瞼が上がり始めたウルコットへと視線を向ける。



『こ、ここは……』


『よぉウルコット。気分はどうだ?』


『お、お前は……』



 徐々に意識がはっきりしてきたのか焦点が合ってきたウルコットの口元にミィエルが水袋を持っていく。水袋を受け取ろうとするも手がないことを思い出したのか、表情を沈ませながらも水袋を加える。



『ゆっくり~、含んでから飲んでください~』



 水を一口飲み、落ち着いたのか『すまない、ありがとう』と少し表情が和らぐ。一息つき、体勢を整えたウルコットがまっすぐに俺を見る。



『どうしてお前がここに?』


『採取の依頼を受けてな。それより何があった?』



 できる限り情報は仕入れなければならない。もしウルコットの齎す情報が俺の想定を超えるようなら援軍を呼ばなければならないはずだ。

 俺の視線を受け、ウルコットは『昨日のことだ』とぽつぽつと言葉を始める。


 俺が村を離れてからすぐに知らない商会が訪れたこと。その商会が率いた馬車が俺の知るものと同じであること。その商会をリルの婚約者が連れてきたこと。俺がいる冒険者の宿に依頼を出そうと話していたこと。そして深夜、森の奥で『魔族』と思しき存在とヴァシトが会っており、そこに意識のない村長が連れられていたこと。




『俺の腕は黒い山羊の頭をした化け物に食い千切られたんだ』


『カイルくん~、山羊は“バフォメット”です~。黒い靄は~ちょっと思い当たらないです~』


『…………』



 さて、どうしたものか。バフォメットはまだいい。所詮Lv9の悪魔だ。だが黒い靄とヴァシトの存在が引っかかる。黒い靄に関しては俺も判定には失敗している。想定はできているが……

 そしてヴァシトに関しては姿がヴァシトである以上判定しようがない。ウルコットが言っていたヴァシトの発言からして、十中八九ヴァシト本人ではない。姿を化けさせる『魔族』または『蛮族』の代表的なものと言えば“ダブル”と呼ばれる魔神と“ノーフェイス”と呼ばれる蛮族だ。“ダブル”は言うなればドッペルゲンガーで、対象の情報を読み取ることでそのものの存在になり替わることができる。“ノーフェイス”は対象の身体直接食べることでその姿に扮することができる存在だ。


 “ダブル”はLv12の魔神であり、“ノーフェイス”はLv9の蛮族だ。バフォメットを含めても大した敵ではない。だがしかし――



『ウルコット、もう一度確認するぞ。黒い靄はヴァシトに従っていた(・・・・・)んだな?』


『あぁ、間違いない。明らかに上位者に対して傅いていたよ』


『ミィエル、もう一度解析を頼めるか。今度は俺も手伝うから』



 〈ライダー〉技能を持つミィエルは魔物に対する解析判定に〈セージ〉同様ボーナスがつく。レベル的にも俺より高いため、チャレンジするならミィエルの方が成功確率が高い。さらに俺は雑囊から白属性を含む一級魔石を取り出し、アルケミストグローブを通して術式――〈エンサイクロペディア〉を発動する。魔石は俺の手の中で砕け散り、白い光がミィエルの頭上へと舞い、降り注ぐ。これにより判定にさらに固定値で+4の修正が加わる。直接姿を見ていない状態でのマイナス修正値より高いプラス修正になったはずだ。



『どうだ?』


『黒い靄は~、”ダブル”だと思います~』


『やはりか』



 と言うことはLv12の魔神が従う相手となると最低でもLv8〈デーモンサモナー〉か――最悪……Lv13以上の魔神ってことか。どちらにしろ厄介だ。前者の方がまだマシか?

 ふむ……

 少し考えているとミィエルが俺の顔を覗き込んできた。



「どうします~? カイルく~ん」



 表情には出さず、瞳でミィエルは問うてくる。ここで引き戻すのか、このまま行くのか。この娘は賢い。恐らく俺と同じ結論には至っているだろう。



「引き返すなら今ではあるんだよな」


『待ってくれ!』



 俺の言葉に反応したのは当然ウルコットだ。姿勢を正し、失った腕と頭を地面につけて叫ぶ。



『頼む! 俺なら何でもする! 俺の持つ全てを報酬にするっ! だから! だから村を――姉さんを助けてくれっ!!』



 『頼む! カイル・ランツェーベル!』と何度も頼むウルコットに俺は思わず頭を掻く。何やら勘違いをしているようだ。俺は一息を吐くと、ウルコットの肩を叩いて面を上げさせる。



『ウルコット、お前勘違いしてるぞ』


『な、何を……』


『ミィエルが話しているのはお前をどうするかって話だ』



 俺もミィエルも元々フレグト村の救出に向かっていたのだ。問題は、ウルコットを連れて村へ行くかどうかが問題なのだ。



『状況はウルコットのおかげで多少解った。敵戦力を多少なりとも収穫できたしな。問題はお前をどうすかだけなんだよ』


『俺……を……?』



 頷きミィエルを見れば、ミィエルもニコニコと微笑んでいる。場合によっては足手まといが増えるだけなんだけどな。まぁどちらだとしてもなんとかできるとは思っている。だから俺はウルコットに問う。



『ウルコット、自分で決めろ。ザード・ロゥへ向かうか。それとも命を懸けて俺達と村へ行くのか』


『そんなもんは決まってる! 俺も行くぞ! たとえ両腕が無くとも、敵を食い千切ってでも姉さんを助け出す!』


『……オーケー。なら、まずは少しでも動けるようになってもらわないとな。ミィエル、ウルコットに食事を。まずは体調の回復だ』


『はい~!』


『それとウルコット。その食い千切られた腕をまず治すぞ』



 俺の言葉に目を丸くし、自身の両腕を眺めるウルコットを尻目に俺は巾着バッグから目的のアイテムを取り出す。それはユグドラシルと呼ばれる世界樹の枝を削って作った人間の腕を模した部品。TRPG時代にもしもの時のために買っておいた部位欠損を補強するための魔法のアイテム。



『お前、何を……』


『腕を出せ。今からお前の腕を作る』



 俺が持つ〈ドールマスター〉の魔法の一つ、欠損した部位を補修する魔法――〈アーティフィカル・ギミック〉。欠損した部位に対応した魔法素材が必要となるが、それさえあれば多少のマイナス補正はつくが本来の肉体と同じように扱うことができる。しかも1週間程馴染ませればマイナス補正もかからなくなるはずだ。

 さすが魔法の世界だな、と思いながらウルコットの腕に素材を合わせ、魔法を行使する。



「大地と生命の聖霊よ。治癒の法要と再生の運命を彼の者へと施したまえ――〈アーティフィカル・ギミック〉」



 MP20点を消費して素材に魔力を流し込んでいく。素材は魔力の光を宿してウルコットの傷口へと添えられ、じっくりと癒着していく。木目を表していた腕は徐々に肌色に近づいていき、魔力を流し終える頃には彼の意志で腕を動かせるようになっていた。

 うわー。まじ魔法すげー。



『す、すげぇ……』


『問題なく動かせるみたいだな』


『あ、あぁ……』



 じっくり見ればうっすらと腕に木目が残っているが、ぱっと見ではわからないだろう。後は武器か。俺が持っているもんでウルコットが使える武器は……丁度良いのがこれしかないか。


 俺は腰に差していた剣――ルナライトソード+1を取り出して渡す。この件なら通常時から命中判定にプラス修正を受けられるから義手によるマイナス補正を打ち消せるはずだ。



『これを使え。お前の筋力なら十分に扱えるだろ』


『あ、あぁ』


『よし。じゃあ手の調子を確かめる意味でもまずは胃に何かいれとけ。ミィエル、頼む』


『はい~。お待たせしました~』



 パンに肉と野菜を挟んだサンドイッチ――どちらかと言えばハンバーガーか――をミィエルが配ってくれる。俺の分もついでに作ってくれたらしい。

 俺も受け取り、味わうように食べ、ウルコットの様子を確認して視線をミィエルへ。彼女も、うんと頷き、



『じゃ、腹が膨れたら作戦会議と洒落込もうか』



 リルを含む村人の救出作戦を立てるとしましょうか。


次回は16日更新予定です。

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