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第133話 Weve1

気づいたら1月過ぎていました。なんたることか……。本当すみません


前回までの内容。

カイルが前線部隊指揮官となり、大氾濫とついに激突。口調も荒くなっております。

 ……っと、拙いな。冷静に冷静に。



 昂る気持ち(テンション)のまま荒い言葉遣いで号令。一番槍で突撃し、首を刎ねたことを内心で反省する。まぁ言い訳をさせてもらえるのであれば、アマゾンなどで動物たちの大移動をテレビで目にすることはあれど、こうして現実に目の前でそれ以上の規模の光景、臨場感を体験しているうえ、勝手に向こうからやって来る(・・・・・・・・・・)経験点(・・・)。心が躍るのも仕方がないのではなかろうか。否、踊って当然ではなかろうか!



 ……って、冷静に考えて普通そんな現場に居合わせたら逃げるよな? 俺ってこんなに好戦的だったか?



 なんて思いつつも、この世界において(・・・・・・・・)悪いことではない(・・・・・・・・)ので問題なし、と言い訳も完了ってことで。んで、よく見える視界(・・・・・・・)――恐らく〈コマンダー上位(ウォーリーダー)〉技能のおかげだろう視点で――戦場を鳥瞰するかのように状況を把握する。


 既に接敵した俺を除けば、1ターン内に接敵する敵個体数は18体――“ラプトル”が8体に“ウルフ”が10体。対するこちらの盾役(タンク)は12名、火力役(アタッカー)が26名。盾1名につき火力を2名つけた、3名体制で行動している。現状はこちらの人数より敵の人数が少ないため、突破されることはまずない。言うなれば最も軽いWave1と言ったところか。ただ、



 ……計算上こちらの近接火力を考えると、“ウルフ”はともかく“ラプトル”の1ターン処理は厳しいかな。



 このぐらいは現状の前衛戦力だけで片付けたいところだが、試しているうちにWeve2、Weve3ときて追い詰められでもしたら笑えない。であれば、楽なうちに後衛との連携を形作るまでだな。

 【ブロードソード】を一旦鞘へと戻し、背中の【ウェポンホルダーⅡ】から【戦旗槍】を手に取って構える。



「2~7班は3体のラプトルを抑え、後衛と協力して撃破。8~12班はウルフ中心に処理しつつ、2体のラプトルを抑えよ! 残りは我らが狩りに行く! 恐れるな! 戦神の加護と勝利の未来は我らが手にある!」



 サブアクションで〈ウォークライⅡ〉を起動。自身を除く、俺が認めた対象――前衛陣と後衛射撃部隊を対象として物理ダメージ「2」点上昇を付与。さらに自身に〈ヴォーパルサイト〉で1度限りのクリティカル上昇を付与し、〈挑発攻撃Ⅱ〉をのせた【戦旗槍】で正面の“ラプトル”に一撃。クリティカル(良い手応え)が掌から伝わるも、【戦旗槍】の性能を考えても仕留めるまでは至らない。

 さすがにレベル差「9」あろうと体力トカゲ(HPバカ)を【戦旗槍(これ)】で仕留めるのは厳しいか!


 なんせ槍にこれ見よがしに余計な旗が付いた武器だ。相手を殺傷するうえで邪魔でしかない飾りがあるのだから、威力は(ついでに命中も)当然低下する。しかし〈コマンダー〉系技能である【鼓舞】を使う上で、必要かつ効率的なのだから文句など言いようがないんだけども。


 槍そのものを威力の高いものに変更することで強化することも可能ではあるが、〈フェンサー〉系は装備できる武器の必要筋力に制限があるため難しい。こう言う所が〈ファイター〉系を本当に羨ましく思うと、現実になった今では殊更に思うようになるね! 【戦旗剣】とかできねぇかな。無理か……



 だが俺1人で全てを片付ける必要はないのだ。先程攻撃対象にした“ラプトル”を一瞥し、〈イニシアティブアクション〉の恩恵で加速した俺はさらにもう一体の“ラプトル”へ取り回した【戦旗槍】にて攻撃を見舞う。


 目を血走らせ気持ちよく激走していた“ラプトル”の眼に俺への敵愾心が強く灯る。と同時に同一戦域内にいたもう一体の瞳にも敵意が宿る。

 知能レベルが「動物並み」である“ラプトル”は、TRPG(ゲーム)時代であれば最も近づいたPCへ攻撃を開始する。ただ“大氾濫(スタンピード)”により狂化状態であるため、〈ヘイトリーダー(最も敵意を煽る)〉スキルを所持する俺を無視する可能性もあったのだが……杞憂で何より。



「はぁっ!!」


「やぁっ!」



 攻撃役(アタッカー)である冒険者が、ダメージを与えていた “ラプトル”へと追撃。問題なく1体の息の根を止める。


 三人一組であるため、俺にも攻撃役(アタッカー)2名が追随している。本当ならウルコットを引っ張ってきたかったところだが、残念ながら別のチームに宛がわれてしまっている。一応“アーミー・ドール”とセットで行動させられているうえ、俺も常に彼の位置を把握できているから万が一の危険はない思うが――現状の敵勢力なら心配はないし、各々で頑張ってもらうとしよう。あまり過保護でもしゃあないしな。



 瑠璃の庭園(パーティーメンバー)の位置を頭の片隅で把握しつつ、Wave1への対処状況を確認する。

 “ラプトル”を3体任せた2~7班チームは、後衛射撃部隊の援護もあって全ての“ラプトル”を片付けられている。引き付けるに留まらせた残りのチームも、正確無比とも言えるセツナの頭部狙撃(ヘッドショット)に加え、リルの援護射撃にて全て沈黙。実に頼もしい戦果だ。俺も負けちゃいられないな、っと!



 2体の“ラプトル”の攻撃を躱しながら、【マジックベルト・マナブレイダー】の効果で回避と同時に反撃の斬撃を見舞う。攻撃を加えていた“ラプトル”はほぼ死に体となり、〈挑発攻撃Ⅱ〉がのった反撃により残りのヘイトも完全に俺に固定される。TRPG(ゲーム)であれば、このままヘイトを稼ぎ続けて敵に攻撃させ続ければ、俺は回避しつづけるだけで雑魚の処理は終わる。だが今必要なのは殲滅速度であり、さらに来る増援への対処だ。



 次ターンに追加の“ラプトル”が7。“グレートウルフ”が10の“ゴブリンライダー”が8か。布陣として前者2つより背後にライダーが位置どってるのがやらしいな。



 レベルはどれも大したことはない。が、“ゴブリンライダー”が厭らしい存在だ。

 “ゴブリン”そのものは大した強さではない。騎乗スキルを手にしたライダーと言えどレベルは「4」。だが奴らは“ラプトル”と違い、タフではないが多少の知恵が回る。どこかのスレイヤーさんも言っているが、馬鹿だが間抜けじゃないってやつだ。


 奴らの優先標的対象は基本的に後衛だ。鎧などで身を固めた(殺りづらそうな)奴ではなく、布を纏ったひ弱(殺りやす)そうな奴を狙う。それが女性ならなお良し、だ。

 その上厄介なことに“ライダー”である。騎乗することによる移動速度を得ることは勿論、単純に個体サイズ――TRPGでは部位数と言っていたが――が増えることにより、戦闘区域が突破される可能性が高まる弊害も発生する。


 部位数とはキャラクター1体に付き、HPが設定されている箇所の数を示す。今回の“ゴブリンライダー”で言えば騎乗する「ゴブリン」と騎獣である「ウルフ」の2カ所となる。

 ヘイト管理可能なスキルやアビリティでもない限り、凡そ部位1つにつき移動妨害を行えるのは2倍まで。当然「冒険者」は1部位なため、2体までだ。それ以上の妨害は出来ないとされている。故に盾役(タンク)が“ラプトル”を1体でも請け負ってしまえば、“ゴブリンライダー”は盾役(堅そうなの)を無視して別の対象を攻撃することが可能と言うことだ。


 盾役が盾をやらせてもらえないストレスは半端ないからな。俺も良くGMの時に使ってたっけ。数は本当に力だわな。



 数字だけ見ればまだこちらの方が上ではあるが、俺に追随する2人の冒険者同様、火力役(アタッカー)達は補助盾(サブタンク)としては心許ない。であれば――



「攻撃こそ最大の防御也ってね。お前ら、お待ちかねの第二陣(おかわり)だ! 優先は“ライダー”! 盾がトカゲを抑える間に切り捨てろぉ!」



 〈ウォークライⅢ〉へと鼓舞の質を上げることでさらに攻撃力の上昇値を「3」点、命中力も「1」点上昇させ、



「理を担う蒼き精霊よ。我が魔力を喰らい、その力を我らが剣へと顕現せよ――〈アイス・エンチャント〉!」



 鼓舞に連動する形で後衛補助部隊からほど近い前衛部隊に支援魔法が掛けられる。だが射程外に位置する最前線の攻撃役はそうもいかないし、補助部隊が前線に出るわけにはいかない。だから俺が足りない分を支援する。MPの消費は激しいが、範囲内の冒険者全てを対象として補助魔法を発動する。


 “ゴブリン”と“ラプトル”の弱点属性である、「水・氷」属性。〈アイス・エンチャント〉は属性の付与に加え、物理ダメージ「3」点上昇も担ってくれる。これだけで鼓舞と支援魔法、弱点属性によりダメージは「8」点上昇。加えて競合しない〈アルケミスト〉や〈エンチャンター〉の支援もある。これだけの火力アップがあれば、



「盾は受けるだけが能じゃないぞ! しっかり得物をぶん回せ!」



 盾役だって十分な火力が出るってもんだ。

 淡く蒼い光に包まれた【戦旗槍】を取り回して、鬱陶しく牙を向ける“ラプトル”を殴り、怯ませた所を追随する2人がそれぞれ止めを刺す。〈アイス・エンチャント〉の効果で攻撃箇所が凍り、動きを阻害するのだが、命が尽きているのだから関係ないか。しっかし、軽く振った時に地面が少し凍り付いたのを鑑みるに、もしかして地面を攻撃し続けたら、地面を凍結させて移動を阻害することもできるのでは?



「地面に攻撃……なんて考えたこともなかったな。もっぱら最強の武器としてしか考えてなかったし」



 こと飛行ユニットに対する、最高の固定ダメージを与えてくれる存在こそが地面、としか思ってなかっただけに、本当想像力が足りていないよね俺は。



「本当、色々学べそうだ」


「? 指揮官、何か言ったか?」


「いや、良い連携だったと思ってね。2人にはまだまだ厳しい場所についてきてもらうけど、頼むよ?」



 「任せろ」と頷く2人に頷き返し、鳥瞰で状況を把握しながら現在の陣形で最も穴となる部分へ突き進む。



「3班、無理に抱え込むな! 1班で無理なら周囲と連携を取れ! 5班は回復に下がれ! 7班はそのまま踏ん張れ、サポートする!」



 〈ヘイトリーダー〉の効果を確かめつつ、時には回復魔法を使い、魔石を砕いてサポートをし、剣を抜いては敵を両断する。

 厄介な“ライダー”の処理も直に終わる。ペースは上場。Wave3が視界の端に捉えられるも、士気は高い。



「補助魔法は切らすなよ! 次はトロくさい“オーク()”共だ! 迷わず今日の夕飯にしてやれ!!」



 「応っ!」と応じる雄たけびに口角が上がる。いいね! と思わず内心も踊る。だがまたまだ戦は始まったばかり。スタミナ配分だけは間違えないよう、丁寧に、全力で対応してみせようか。


いつもお読みいただきありがとうございます!

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