襲撃
洞穴に戻って、1日。
俺はまた人間の村に行く事を決めていた。
襲撃だ。
といっても全滅させるようなものではない。
何人か女を奪いに行くだけだ。
女を取りに行くと言えば他のゴブリンもついてくるだろう。
だが俺の目的は女じゃない。人間の持っていた武器だ。
人間たちに存在がバレればいずれ討伐者が来るだろう。
だがそれで良い。襲撃より防衛の方が実はやりやすい。
何故なら人間は守るのが上手いからだ。
人間は村や街を作る時、防衛を考える。
地理的に有利を作り、防壁を作り、集団で戦う。
村や町そのものが一つの生物のようなものだと思えばその脅威がわかるだろう。
だが、攻撃に出た時、奴らはただの人となる。
確かに数は力となる。
単純に考えて多ければ多いほど足し算的に戦力は増えていく。
しかし、時に数は弊害となる。
例えば食料問題。
次に仲間割れ、女の奪い合いや中途半端な自己愛が集団をただの烏合の衆に変える。
それさえ出来ればあとは成長した俺が暴れるだけだ。
まだ俺一人では多を圧倒することはできない。
だから受けに回る。
武器を奪い、女を奪い仲間を増やし、罠を張り、一人ずつ確実に仕留める。
俺は自作の槍の手入れを念入りにしていた。
◆◇◆
襲撃は成功した。
成ゴブリンが一体だけ死んだが、損害はそれだけ。
それに対してこちらは女を3人も奪うことが出来た。
女の扱いは出来る限り丁寧にするように伝えてある。
まぁあいつらの丁寧なんか高が知れているが、早死にさせなきゃなんでも良い。
これで安定して家族を増やすことができる。
俺も人間の武器を奪うことができた。
長剣と短剣、そして盾だ。
これはかなり大きい。
盾はまぁ今のところまともに使えるやつがいないが、俺も使わないし、長剣は俺が、短剣はまぁ適当な奴に持たせれば良いだろう。解体にも使えるしな。
襲撃した際、俺は人間の男を3人も殺すことができた。
ただこれは戦える人間ではなく、一般人だ。
一般人であれば俺なら無傷で3人ぐらい殺せる事が分かった。
そして、これが一番大きな成果なのだが、人間の男3人から得られた経験値で俺は大きく成長することが出来た。
俺はもうホブゴブリンといって問題ないだろう。
身長は2メートル近くなり、長剣の丁度良い身長となった。
成長したのは身長だけではない。
俺はこの成長で、ある感覚を得た。
魔視の感覚だ。
視界で魔力を捉えられるようになった。
それで分かった事なのだが、俺は成ゴブリンの10倍ほどの魔力を有していることがわかった。
おそらく有している魔力の多い生物ほど殺した時に得られる経験値も大きくなるのだろう。
今の俺なら土竜とも良い勝負ができるだろう。
さて、これから来る討伐者を歓迎する準備を進めるとしよう。