不惑の男はいまだに惑う1
更新がすごく久しぶりになってしまい申し訳ないです。
今度こそ終わりまで投稿していきます。
おっさんの独り言から始まります。
「あ~……いい天気だなァ……」
長椅子に寝転がり、雲の形をぼんやり眺めているだけで一日が終わってしまいそうだ。
村長にアレやれコレやれと言われていることは山ほどあるけど、気が乗らなくて一旦休憩~と外に置いてある長椅子に寝転がったらもう起きられなくなってしまった。
そのうち村長が帰ってくるから、その時になんもできていないとまたどやされる。それは分かっているけど、あとちょっとだけ……の繰り返しで結局半時ずっとこうしている。
「なーんもやる気が起きねえなァ……」
もし、ここにディアさんが居たら、『また昼寝していたんですか?』とか言って呆れつつも、夕飯の希望とか聞いてくれちゃうんだろうな。あの子本当にお人よしだからな。
「おいコラァ!ジロー!お前またサボってやがる!クラトの代わりに働くって言ったのはどの口だ!」
帰ってきた村長が、戻るなり怒鳴り声をあげた。
「そのクラトが出て行ってもう二年だぜェ?もう廃村の手続きもとっくに済んで、ジジババどもの移住もほぼ終わっちまったし、もうそんなやることないでしょォ?村長もいい歳なんだから、もっとのんびり余生をすごしゃあいいでしょ。つか引っ越せば?」
「そういうわけにいかねえだろうよ。残っている人がまだいるんだしよ」
廃村が決まって散々ごねて騒いでいたジジババたちも、騒ぎ疲れて諦めた奴から村を出て行った。別の土地に住む子供や親せきを頼って移住していく奴が大半で、頼る先がない者は、ほとんどが統合先の隣村へ引っ越していった。ここに残っても、廃村になったこの村には行商も立ち寄らないので、年寄りが住み続けるのは困難だと分かっているからだ。
それでも、住み慣れた家から離れたくないと駄々をこねて未だにここに残っている老害もわずかだがいる。村長はもう職を降りているけれど、責任感かなんか知らんが、残った年寄りを見捨てられずに自分もここに残っている。
「廃村になった土地に残るって自分で決めたんだからさァ、面倒見てやることねーでしょ。ホンット、村長は損な性分だよなァ。わざわざ面倒事しょい込みたがるんだからよ」
「無駄口叩いてねえで働けジロー。水汲み場の滑車が壊れてるから直しにいけっていっただろ。あれ壊れたままだと困るんだ。まったく……クラトだったらあっという間に終わらせているのによ……ホントにお前はどうしようもねえなあ」
「へーへー。今やりますよ。水なんか川から汲んでくりゃいーじゃねえか。無給だっつうのにやってらんねえなあ」
「謝礼は出してんだろが!このアホ!はよいけえ!」
しぶしぶ起き上がって仕事をしに向かう。
いい加減、俺も村を出てどっか住みやすい土地に行こうかと何度も思うが、クラトに自分がいない間を頼むと言われているから、仕方なくアイツが戻るのを待っている。
でもあれから二年だぞ?どう考えても帰ってこないだろ。
アイツ、帰ってくるから家の管理とか頼むって言って言ったくせに、手紙ひとつよこさないでホント薄情な奴だよ。
いや……報告できないことになってたりな。ディアさんとデキちゃったとかうっかり孕ませたとかさ。いや、それはないか。あの生真面目野郎がうっかりとかないわ。ディアさんも……ない……こともないか?あの子騙されやすいからな。
「どーしてんのかなーディアさん」
幸せになっていてほしいけどな。あんないい子なんだからよ。
いや、俺も大概勝手なこと言ってんな。最初はどうでもいいと思っていたくせに、なにを今更いい人ぶってんだよなって話だ。
最初にディアさんを見た時のことを思い出す。
俺が本当にいい人だったら、あの時になにか行動を起こしていたはずだ。俺はあの子が置かれている状況が多分他の奴らよりもよく見えていた。それをわかった上で、あの頃は他人事として傍観していた。




