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嫉妬とか承認欲求とか、そういうの全部捨てて田舎にひきこもる所存  作者: エイ


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ここから先、五話ほどストレスフルな展開が続きます。

読むのが負担に感じるようでしたら、サブタイトル42まで更新されてからお読みいただくことをお勧めします。

 


「そういうことだったのね…………ようやく全部納得がいったわ……最低ね、父さんも、母さんも……レーラも……」


「だってしょうがないじゃない。あのままじゃジェイさんに売られるところだったし、ほかにどうしようもなかったんだもん。お姉ちゃんだって、わたしが困ってたのに全然気づいてくれなかったから、相談のしようもなかったじゃない。わたしばっかり悪者にしないでよ」


「相談って……その、ジェイさんて人のこと?そういえば、一度はその人と結婚させるって父さんが約束したのよね?父親宣言をしたくらいだから、そちらとはちゃんとお断りしないまま、ラウと関係に及んだの?」


「んー……父さんがちゃんとジェイさんにはお断りしたらしいんだけど……あの人ちょっと変だから、全然話にならなかったらしくて……結納金は分割で返すって言ってるのに、婚約は成立してます!とか言って何度もウチに押し掛けてきて怖かった。なんかわたしが監禁されて親に洗脳されているんだとかいって、全然話通じないし、あんな頭のおかしい人と結婚するの、わたし嫌だよ」


「一方的に婚約を破棄したうえに、結納金を返していなかったの?いくらなんでもそれは……」




 実の親が娘を陥れることもそうだが、周囲の人に対しても両親はあまりにも非常識すぎる。ジェイさんがどんな人か良く知らないが、レーラの話を聞くかぎり、ウチの親の方がどう考えてもおかしい。親としては普通じゃないと思ってはいたが、世間体をものすごく気にする人たちだったので、仕事など対外的な部分ではごく真っ当なふるまいをしていたように見えたのに。いつのまにこんな非常識な真似を平気でする人間になってしまったのか。

 それとも、なりふり構っていられないような状況に陥ったのか。

 受け取った結納金がいくらなのか知らないが、今すぐには返せないというのなら商売で大きな損失でも出したのかもしれない。

 でも家の様子をみるかぎり、羽振りがいいように思っていたので不自然に感じた。




 レーラは両親の言い分を鵜呑みにしているのか、悪びれる様子もない。開き直っているわけでもなく、本当に悪いと思っていないようだ。世間知らずだとは思っていたが、この歳でこんなにも常識外れなことに疑問を持たないレーラに驚きを隠せない。




 何と言ったものか考えあぐねていると、突然、家の扉が『ダンダンダンダンッ!』と激しく叩かれる音がして、皆一斉にそちらを振り返った。



 まるで扉を破壊しようしているかのような乱暴な叩き方に、ジローさんが私を部屋の奥へ追いやり、自分が扉のほうへと向かった。

 そして叩かれる扉に対して『ガンッ!』と一発叩き返し、どすの効いた声で叫んだ。


「誰だか知らんが、ウチの扉を壊す気かァ?!用があるなら名乗りやがれ!」


 と、ジローさんが怒鳴りながら勢いよく扉を開けると……そこにいたのは、今私が一番会いたくない人々だった。



 ……そう、私とレーラの両親が、すごい形相で家の前に立っていたのだ。






 予想できたことだったが、レーラを追いかけてここまで来たのだ。

 村の誰かが、レーラがここに居ることを教えたのだろう。事情を知らなかったのかもしれないが、できれば誰か足止めして欲しかった……。いや、来ることを想定してもっと根回ししておくべきだったと後悔する。



 レーラが家出なんかしたら、あの両親が放っておくはずがない。必ず探しに来るだろうとは思っていたが、まさかこんなに時間差なく現れるとは思っていなかった。こんなに追いついていたのなら、もっと手前の町とかでレーラを捕獲して欲しかった。


 両親は、ジローさんの恫喝に一瞬たじろいだ様子を見せたが、部屋のなかにレーラとラウ、挙句に私までもがいるのを発見して目を丸くしている。


 父の後ろに立っていた母が、部屋のなかにレーラがいるのを見つけると、ジローさんを押しのけレーラの元へ駆け寄った。


「ああ!レーラ!よかったわ無事で!突然いなくなるから心配したのよ!レーラがラウ君の行き先を知って町を飛びだしたらしいって教えてもらったから、お父さんと慌てて追いかけてきたのよ……えっ?ねえ、なんで……ディアがここにいるの?これはどういうこと?まさかディアがレーラを町から連れ出したの?」


 あり得ない組合せの人物たちがそろっていることに母は戸惑った様子で私とラウを見比べている。


 なんと言ったものかと思っていると、入り口に立っていた父がツカツカと私に歩み寄り、なにも言葉を発しないまま右手を振り上げた。


 殴られる!と思い、ぎゅっと目を瞑って身構えたが、痛みは来なかった。


 顔をあげると、ジローさんが父の振り上げた手をつかんで押さえてくれていた。


「いきなりズカズカとひとんちに上がり込んできて、挙句ウチのディアさんに殴りかかろうするたぁ一体どういう了見だァ?入っていいとも言ってねえんだ。招かれざる客は出ていきやがれ」


「っ……放せ!私はこの娘の親だ!勝手に家を飛び出して、皆に迷惑をかけた不良娘を親が叱るのは当然だ!誰だか知らんが、家族の問題に口をはさむな!……ん?お前……まさか……ウチで雇ってやっていた馬丁か……?貴様がなぜウチの娘たちと一緒にいるんだ……?」


「まァそんな仕事をしていた時もあったがなァ。今は関係ねえし、ここは俺の家だ。ディアさんももう子どもじゃねえし、そもそもアンタらは、ディアさんを虐待してきたくせに、よく親だなんて名乗れるよなァ。子どもを差別して虐待するクズ親って、使用人にも近所の人にも知れ渡っているくらい有名な話だったぜ?」


 いつもと雰囲気が違って、怖い表情のジローさんが父の腕をつかみながらそう言った。

 私が虐待されていると近所の人までもが知っていたと聞いて、私は驚きが隠せなかった。でもうちで働いてくれている人たちには、時々私が殴られている姿を見られていたし、レーラとの格差は歴然だったから気付いていたとは思う。


「親が子どもを躾けて何が悪い。お前ら使用人が勝手に仕事を放棄した挙句、虐待だなどと悪評を立てたせいで我が家はめちゃくちゃにされたんだぞ?!どうしてくれるんだ!ディアがどこを探しても見つからないと思ったら……お前が逃亡の手引きをしていたのか。そういえば我が家の馬も盗まれていたな……。盗人が、うちの娘までかどわかしたうえにこんな暴力まで振るうなど、絶対に許されないからな?自警団に突き出してやる!」


「へー?そーかよ。俺の給金、ずいぶん滞納されていたからなァ。支払われそうにないから馬一頭で手を打ってやったのよ。滞納分全部払うってんなら馬は今すぐにでもお返しするぜぇ?

 それに仕事を勝手に放棄したって言うけどなァ、アンタ使用人たちの給金、あの騒ぎの前あたりからちゃんと支払ってなかっただろォ?みんな辞めて当然だよなァ。

 辞めるまでは勤め先の内情を喋ったらいけないってみんな口をつぐんでいたけど、辞めたらそんな義理はねえからな、『事実』を話しただけだろうよ。

 自警団に訴えてもらってもいいぜぇ?成人した女性が親元を離れたってだけで動いてくれるかしらんけどな。それに、ディアさんの置かれていた状況を話せば、逮捕されんのはアンタら親のほうかもしらんけどなァ」


 ジローさんは父を見下げながら、父の言葉に全て言い返している。

 出奔する前に、給金がしばらく払われていない話をしていたことを思い出すが、他の使用人たちの給金も滞っていたなんて知らなかった。

 使用人のひとたちは私には何も言ってこなかったが、私の置かれている状況を知っていたみたいだから、給金のことなど言えなかったのかもしれない。


 ジローさんに言い返された父は、ぐっと言葉に詰まっていた。だがジローさんと言い合っても分が悪いと思ったのか、私のほうへ矛先を変えてきた。


「もういい!……こんな破落戸に付き合ってられん!……ディア!帰るぞ! お前がいきなり家出なんぞするから、父さんたちは謂れのない中傷をうけて仕事も激減して大打撃だ!お前の無責任な行動でたくさんの人に迷惑をかけたということを分かっているのか?!

 お前が成人した大人だと主張するならなあ、町に戻って迷惑をかけた人たちにまずは謝りなさい。それくらいの責任も果たせない子どもだというのなら、ちゃんと親の言うことに従うんだ。

 アチラの女将さんも、お前が引継ぎもせず居なくなるから困っておられるぞ。ラウ君との結婚がなくなったとはいえ、従業員として最低限引継ぎくらいするのが当然だろう。一先ず帰るからな、すぐ用意をしろ」


 いつも通り父は、自分たちの非を認めず、町での誹謗中傷も全て私のせいにして私に責任をとらせようとしてきた。だがもう私は家を出たのだから、父の言うことに諾々と従う理由は無い。怒りを湛える父に反論するのは恐ろしいが、ここで黙るわけにいかない。


「父さん……私はもう家族とは縁を切るつもりで、家を出たんです……。もう、町には帰らないです。申し訳ないですが店にも……」


 ここまで言ったところで父の怒りが爆発した。突然大声で『なんだと!』と叫んだので、そこで何も言えなくなってしまった。


「親の!言うことにッ!お前は逆らうのか!育ててやった恩も忘れて『縁を切る』だ?!どの口が言っているんだ!そういう生意気な口は、一人前になってお前の養育にかけた金を全部返してみせてから言うんだな!いいからつべこべ言わずに早く支度しろッ!」


 父は鬼のような形相で、声を張り上げて私を叱責する。あまりの怒声にビリビリと鼓膜が震え、それだけで私は動けなくなってしまった。


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― 新着の感想 ―
[一言] >自警団に突き出してやる よし、突き出してもらって裁判しよう。 皆の前で言いたい事を全部言えば、話も進むだろ。
[良い点] ジローさんが「ウチのディアさん」って言うのに毎度きゅんとします(^^) [一言] ついに来たかあ〜…ここまでもストレスフルだったけど更にか… こっから毒親が身勝手な言い分をネチネチダラダラ…
[一言] やっぱり焼いておくべきだった…
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