第3話:神との会合
今更ながら作者です。いつも読んで下さって、有り難うございます。
私の作品ですが、更新は2・3日に一度行いますので、何卒ご容赦下さい。
それでは、本編をどうぞ。
太陽も天へと昇りきり、今日も今日とて立っているだけで体力を削られる炎天下だった。
俺は今、民宿の入口の前にて、総理大臣・高山が来るのを待っている。 先程、もうすぐ到着する旨の連絡が入ったので、そろそろ来る筈だ。しかし、この炎天下の下でただ待つだけと言うのは、非常に辛い。なんだが、意識が朦朧としてきた…
そうこう考えている内に、民宿へと向かう道を黒塗りのセダンが、太陽光を反射させ登って来た。軽トラばかり走ってる田舎では、かなり浮いている様に感じた。
車は民宿の入口に止まり、運転手が降りて後部座席のドアを開け、開かれたドアから、高山は颯爽と降り、俺と目線を合わせた。
俺は一礼してから、再び高山を見る。高山は背が高く、体はスポーツマンの様にガッチリとしていて、それなりに歳は取っている筈だが、実年齢よりも遥かに若く見える。
発言も積極的で、真剣に政治活動に臨む姿から、国民からの支持率も高い。
「それで、柊。蒼の居所は分かったか?」
「はい。ここの民宿の方に地図を頂きました。ここからなら車で10分程の所です」
民宿の人達はと言うと、民宿の中から初めて間近で見る総理大臣を、芸能人を見る様な眼差しで見つめていた。
「よし。蒼の居場所が分かったとなれば急」
「その必要はねぇよ」 高山の声を遮る声に驚いた俺達2人は、同時に声の主を見やる。そこには紫のキャップを被り、白いポロシャツにダメージジーンズを履いた、どこから見ても普通の若者にしか見えない、この町の神が居た。
蒼はゆっくりと歩み寄って来て、高山の前で立ち止まった。蒼の目からは、相変わらず只ならぬ威圧感が出ていた。
「何呆けてんだよ。俺がわざわざ出向いてやったんじゃねぇかよ」
蒼に言われ、俺と高山は慌てて頭を下げた。
「つうか、お前マジで来たのかよ?仕事ほっぽって来れるなんて、余程暇なのな」
暇なら、別に俺いらねぇじゃん…などと、ブツブツと喋っている蒼に、高山が咳払いを一つして話し掛ける。
「我々が頼みたい仕事は、蒼にしか出来ないものなのです。話を聞いて頂けますか?」
「ふ〜ん……ま、取り敢えず中行くぞ。ここじゃ暑すぎるわ」
「しかし、蒼。なぜ私が来たことが分かったのですか?」
高山の問いに、蒼はさもつまらなそう顔をして一言、「風に聞いた」とだけ答えると民宿の中へと向かった。
俺達も蒼の後へと続いた。
「よぉ、奈穂ちゃん。元気してた?」
中に入った蒼は、民宿の娘さんに親しげに声を掛けた。そうか、あの娘さんの名前、『奈穂』って言うんだ。
「はい。元気ですよ。それより蒼がここに来るなんて本当に久しぶりですね」
「いやな、奈穂ちゃんが東京から来たこの小僧に色目使われてないか心配でよ」
それを聞いて奈穂は大袈裟に笑ってみせた。
「大丈夫ですよ。慣れてますから」
奈穂は舌を出して、おどけた。こんな表情も可愛いなぁ…
俺の横に居た高山が、
「顔が弛んでるぞ」と小さく耳打ちしてきた。俺は慌てて顔を引き締める。
それにしても奈穂さんと話してる時の蒼には、俺達と話す時の様な威圧感が感じられない。
やはり蒼自身も、俺達を警戒しているのか、はたまた只の女好きか…
奈穂さんと話し終えた蒼は、一階の奥の和室に入って行った。
広い和室には、中央に大きなテーブルと座椅子が3脚用意されていた。 蒼は上座の座椅子に座ると、煙草に火を付け、勢いよく煙を吐いた。
俺達は下座に並べて置いてある座椅子に座る。 「では、早速ですが、話しに入らせて頂きます」
高山の凛とした声が響く。
この後、まさか俺が貧乏くじを引くはめになるとは、夢にも思っていなかった…