第20話:アダム(2・孤独)
盆休みに、実家でだらだらとし過ぎてしまいました。。。
執筆の方も大分遅れてしまったので、これからは気合い入れていきたいと思う所存です。
アダムは自由を満喫していた。
時間に囚われず、食料に困らず、仕事をすることもない。
もしかするとアダムの生活は、現代の人々が心の底で渇望して止まない、一種の夢と言っても過言ではないのかも知れない。
だが、その己1人の自由が、やがてアダムの心に影を差した。
初めは、ほんの些細な事。今となっては当たり前の話だった。
ある日、エデンに鳥が訪れた。鳥は手頃な樹を見付けると、そこに枯れ草や小枝を器用に使い巣を作った。
この行動自体は別段珍しい事ではなく、アダムも度々目撃していた。
やがて、巣に来る鳥は二羽になった。鳥達は、アダムには理解出来ない言語でさえずり、美しいメロディの様なそれを日々歌っていた。
アダムがエデンの外に赴くと、他の動物達も二匹、もしくは子を連れて数匹で暮らしているのがよく目についた。
彼等は、それぞれがそれぞれの言語を持って意思を伝え合い、平穏に暮らしていた。
アダムには、それが寂しかった。
知能においてアダムに敵う者は、この地球上には居ない。しかし、他の動物達には心を通わせる仲間や、愛する家族が居る。
アダムには気持ちや時間を共有する存在が居ない。
アダムは自由だった。だが、それ以上に孤独だった。
孤独と言う名の毒は、アダムの心を静かに蝕んでいった。
この頃から、アダムはエデンに隠りきる様になっていった。
*
アダムが孤独に身を焦がし、心を毒に犯されて、幾年の月日が流れたが、彼の理解者は現れなかった。
時を同じくして、現代で言う人間の子孫に当たる者達が進化をしてきたが、彼等の知能がアダムに追いつくのは、まだ先の事である。
しかし、この世に止まない雨はない。
アダムを孤独の淵から救うべく、神がアダムの下を訪れたのだ。
その時、神は言った。
「私が、お前を助けるのは、これが最後だ。後は、己で道を開いて行くがよい」
そう言った神は、アダムの胸から肋骨を一本抜き取り、それに命を吹き込んだ。
「お前が道を外れぬ様に、この者にも力を与えた。そうだ、名を付けよう」
神はアダムの肋骨から造りだした、美しいブロンドの女性に眼を向けた。
「イヴ、と言うのはどうだろう?」
『イヴ』と名付けられた女性は、目映い程の笑みをアダムに向けた。
アダムもつられて、少しはにかんだ笑顔になった。
アダムは忘れていたが、彼が笑ったのは実に数十年ぶりの事だった。