表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 柴原 椿
21/40

第20話:アダム(2・孤独)

 盆休みに、実家でだらだらとし過ぎてしまいました。。。

 執筆の方も大分遅れてしまったので、これからは気合い入れていきたいと思う所存です。

 アダムは自由を満喫していた。

 時間に囚われず、食料に困らず、仕事をすることもない。

 もしかするとアダムの生活は、現代の人々が心の底で渇望して止まない、一種の夢と言っても過言ではないのかも知れない。

 だが、その己1人の自由が、やがてアダムの心に影を差した。

 初めは、ほんの些細な事。今となっては当たり前の話だった。

 ある日、エデンに鳥が訪れた。鳥は手頃な樹を見付けると、そこに枯れ草や小枝を器用に使い巣を作った。

 この行動自体は別段珍しい事ではなく、アダムも度々目撃していた。

 やがて、巣に来る鳥は二羽になった。鳥達は、アダムには理解出来ない言語でさえずり、美しいメロディの様なそれを日々歌っていた。

 アダムがエデンの外に赴くと、他の動物達も二匹、もしくは子を連れて数匹で暮らしているのがよく目についた。

 彼等は、それぞれがそれぞれの言語を持って意思を伝え合い、平穏に暮らしていた。

 アダムには、それが寂しかった。

 知能においてアダムに敵う者は、この地球上には居ない。しかし、他の動物達には心を通わせる仲間や、愛する家族が居る。

 アダムには気持ちや時間を共有する存在が居ない。

 アダムは自由だった。だが、それ以上に孤独だった。

 孤独と言う名の毒は、アダムの心を静かに蝕んでいった。

 この頃から、アダムはエデンに隠りきる様になっていった。



       *



 アダムが孤独に身を焦がし、心を毒に犯されて、幾年の月日が流れたが、彼の理解者は現れなかった。

 時を同じくして、現代で言う人間の子孫に当たる者達が進化をしてきたが、彼等の知能がアダムに追いつくのは、まだ先の事である。

 しかし、この世に止まない雨はない。

 アダムを孤独の淵から救うべく、神がアダムの下を訪れたのだ。

 その時、神は言った。

 「私が、お前を助けるのは、これが最後だ。後は、己で道を開いて行くがよい」

 そう言った神は、アダムの胸から肋骨を一本抜き取り、それに命を吹き込んだ。

 「お前が道を外れぬ様に、この者にも力を与えた。そうだ、名を付けよう」

 神はアダムの肋骨から造りだした、美しいブロンドの女性に眼を向けた。

 「イヴ、と言うのはどうだろう?」

 『イヴ』と名付けられた女性は、目映い程の笑みをアダムに向けた。

 アダムもつられて、少しはにかんだ笑顔になった。

 アダムは忘れていたが、彼が笑ったのは実に数十年ぶりの事だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ