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スクラップ・チェア  作者: 鐘鳴タカカズ
一章 ゴミ島編
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三日目 危機

 うーん……特別幸せってことはなかったかな。

 そうだね。何が悪いかって言われれると……

 運が悪かったんだろうね。君は。



 七日目の朝だ。景色は変わり映えしないし、新しく刺激的なものが捨てられたわけでもない。いや、もう十分に刺激的なものは転がっているのだが、それは見てはいけないものだから駄目なのだ。

 あれから一度もコンテナを覗いていない。のぞく緊急性もないからだ。それに、今は別の問題が浮上してきた。

 六日目の夜、一瞬意識が途切れたのだ。僕はいままで眠ることすらできなかったこの体で、ついに睡眠を会得したと思った。だが、おそらく違うだろう。

 この現象、最も単純に理由付けするなら『燃料切れ』だ。

 僕の意識と、この思考がどんな未知のエネルギーを消費しているのかはわからないが、このガラクタを動かすのには、他のエネルギーではまからない、単純なリソースが必要なはずだ。

 現状、それが切れかけている。むしろ今まで切れなかったのが不思議なほどこの体は持ってくれた。子供用の魔人ゴーレムとはいえ、七日間起動しっぱなしでまだ動けるというのが驚きだ。

 さて、肝心なリソースについてだが、実はだいたい見当がついている。

 それというのも、僕はこのガラクタを以前に見たことがあるからだ。

 小さいころ、母にねだって買ってもらったヴァイツ社製の自動式魔導人形(当時はまだ魔人ゴーレムという呼び名は一般的ではなかった)と同じ製品だからだ。

 この魔人ゴーレムは名前の通り魔素を消費して動く人形だ。

 内部にタンクを持つものや、小型の魔素発生装置を備えているもの。はたまた液状にした魔素を注入して内部で気化させるものなどなど……一口に魔人といってもその形態は多岐にわたる。

 ヴァイツ社は元が小さい会社、それに安価な子供向け製品ということもあって、誰でも手に入れやすい魔包マナパケをリソースに選んだ。まぁ他に選択肢がなかった、というのが正直なところなのだろうが。

 少し話が脱線したが、つまりこの体は充填された魔包を取り付ければ、また動くようになるということだ。

 魔包は長方形の黒いケースで、大人の人差し指ほどの長さがある。ものの良し悪しもあるが、光に透かしてみれば、中の容量は見当がつく。中が透けて見えれば見えるほど、内部の魔素は少なく、透けないほど内部の魔素の量は多い。それだけだ。

 上部にアダプターがあり、そこから常に一定量の魔素を放出する。その性質上、瞬発力はあまりないが、持続力は高い。コンパクトな形も相まって、身の回りの小物によく使われている。

 割れた鏡を見ながらロックを外して、自らの腹を開く。

 鏡に映った自分の腹には、魔包が二つ収まっている。どちらも鏡越しでもわかるほどに色見が薄い。残りが少ないのだ。

 幸いなことに、まだ中身のある魔包をいくつか拾うことができている。これに交換してやれば、また動けるようになるだろう。

 早速外して交換……というわけにもいかない。

 例えばの話ではあるが、もし片方の魔包が空で、もう片方の魔包のみでこの体を動かしていた場合、その片方を外した瞬間、この体はもう二度と動けなくなるだろう。そして、未知のエネルギーで思考している僕の意識だけは残る。光も音もない暗闇で、死ぬこともなくずっと考え続けるのだ。ぞっとしない。

 だがしかし、このまま動かなければ、確実にその暗闇に落ちるだけだ。


――……覚悟を決めろ!


 心の中でありったけ叫んだ。独りぼっちを一週間もやっていれば独り言が多くなる。

 三本ある指の一つで、右側の魔包を外す。途端に、呼吸を布で遮られたような感覚に襲われる。白黒の視界はかわらないが、何やらノイズのようなものが表示されるようになった。

 続いて、別の魔包を腹にはめ込む。しかしなかなかはまらない。焦っていることもあるが、指が三本しかないのも厳しい。

 両手を使って慎重にはめ込む。アダプターが体とつながった瞬間、僕は大きく安堵の息を吐いた。ああもちろん比喩だが。

 もう片方の魔包も、別の魔包に付け替える。今日はまだ船を見ていないが、いつこの魔素が尽きるかわからないのだ。少しでも多くの魔包を見つけておかなくてはならない。



 この体になってから一週間。

 残りの魔素量は甘めに見て8日分。厳しく見れば6日分ほどだ。

 ここがどこなのか、いまだに手がかりはない。

 ……ついでに、死体はまだ腐っていなかった。

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