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架空十字軍  作者: 明宏訊
21/61

 ブリュメールのミサ6



 ポーラは、マリー、アニエス、そして男爵を除いて退出を命じた。

 「よい儀式であっただろう。主もきっと心地よくご照覧あったであろうな」

 マリーが口火を切った。

「何を愚かなことを仰っているのです?」

 アニエスが続く。

「閣下、私が退出を命じられなかった理由がわかりかねます」

「そなたは我が大剣だ。常に戦場にいてもらわねば困る」

「ならば、閣下にはもう危ない局面において突出することはないと、臣も、そして、太后さまも安心してよいのですな?」

ここでそれを出してくるとは悪意の丸出しとしか思えない。

 ポーラは内心で舌打ちした。母上に大きな口を叩いてしてやったと思ったが、もしかして母上の最も鬱陶しい部分を切り分けて戦場にもっていく。そんな愚策に走ったのではないか。

アニエス、私は先走ってしまっただろうか?

そう直に質問したくはなるが、ポーラは口を閉ざす。あえてしなくてもアニエスはさらに続けたからだ。

「閣下が何についてそれを仰っているのかわかりかねます」

 マリーとは違った意味で彼女は冷徹なのだ。それは人間の背景について妹の場合は知りすぎているからか。どれほど耳に痛い進言があったとしても、その夜に寝具で彼女は感情を露わにしてくれる。

 アニエスと寝たら、彼女に対する見方も変わるだろうか。

 まずいと、舌打ちするが、すぐに杞憂だと自分に言い聞かせる。なんとなれば、こんな年増に欲情する自分ではない。だから隣にいる妻の嫉妬も惹起し得ないということだ。彼女は鋭い。自らの瘴気を押さえ込んだ時点でさいきんでは乱暴にも浮気したと見なすようになった。

 いま、マリーの顔を直視する勇気はない。

 バブーフ男爵こと、ドリアーヌが真面目な話を振ったので助かった。しかしこの顛末は今夜に寝具できっと最終的な追及を受けるかたちで終わるだろう。

 ドリアーヌは言った。

「私も意外でした、彼の身体にぴったりとくるとは全く持って天の配剤というよりほかにありません」

 ポーラは持ち前の好奇心を抑えきれなくなっている。

「誰かの身体に憑依すると、その心や記憶も手中に収められるのか?」

「相手によります。太后さま・・は全く無理でした。しかし・・・」

「しかし?」

 ドリアーヌは言いよどむ。

「ご本人が許可すれば、お心を感じることができます」

 ポーラは、意識してか、しないでか、横顔を三人に見せると言った。

「それでは瘴気によるメッセージのやりとりと変わらないではないか?」

 マリーはまずいと思った。妹は、この二人の確執について詳細を知らない。しかしある程度、考えたうえでこの態度なのか?それならばまだ自分の方が勝る。

 ドリアーヌの急成長は姉としてうれしいのだが、それはそれで複雑な感情を喚起する。その対象は、母上さまだったり、姉上さまだったりする・・・。

 マリーは、今はこれからのことに意識を集中させるべきだと自分に言い聞かせた。こんなことはしなくてもかつては自動的にそうなったものだ。いったい、パリ宴会で何が自分の中で変わってしまったのか。

 ナント王?

 どうして彼が脳裏に現れるのだ。

 想像のなかで少女は王を醜い髭面の王に仕立てようとしていた。

 しかしそれでも見目の良い竜騎士になってしまうから腹が立つ。

 あの男に対する感情はいったい何だろう?

 そんなものはすぐに答えが出る。公爵家にとって天敵であるモンタニアールを足下に跪かせる。それに理由などあるはずがない、きっとそうなのだ。それが以外にはありえない。

 こともあろうに、少女は自分の考えに溺れるあまり話を聞いていなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 姉上さまの声が響く。

「聴いているのか?マリー、どうした深謀遠慮があるのか?」

 男爵の顔がたまたま目の前にあった。どうして彼がここにいるのか?

 ふいに斬りかかられた竜騎士のように少女は混乱している。いったい、どうしたというのだ。つい、姉上さまに責任を転嫁しにかかる。

「姉上さまが、話の腰を折られるから混乱するのです」

 適当にこう言っておけば、すぐ話に乗っていけるはずだ。脈絡を早く読まねばならない。

 ところが、ドリアーヌは姉の白昼夢を見抜いていた。

「姉上さま、どうなさったのですか?ルバイヤートの魔法源泉、ニネベのことです、しっかりなさってください」

 何だと?そんなところまで話が進んでいたのか?私は・・・・。そうだ、ドリアーヌの魂は男爵の身体に憑依している。見ればわかることではないか。

 しかし源泉という単語が即座に少女を、いわゆる脈絡に戻した。いや、それ以上の頭の回転を促した。

「ニネベの在りかがわかったのか?ドリアーヌ、ならばその根拠は?」

「マリー、やはり、聴いていなかっただな?この子は魂をはるか滝の向こうまで飛ばしたというのだ」

 古代ミラノ人の共通語であり、教会における公用語、そしても今もなお政治の世界では普通に通用する、ケントゥリア語でただ、滝と表記した場合世界共通で特定のそれを指し示す。

 ルバイヤートまで?そんなことをして大丈夫なのか?それ以前にそんなことが可能なのか?

 海の彼方には巨大な滝があってそこに落ちれば辺土から永遠に脱することはできない。地獄に落ちるわけではないが、主のしもべからすればむしろそれよりも恐ろしい。なんとなれば、主の威令が届かないからだ。

 主の威令は世界にあまねいている。それがないゆえに辺土は世界ではない。ルバイヤートと同様である。

 「略奪」という口実のもとにルバイヤートと事実上の交易をおこなっていることをマリーは知っている。ゆえに本当に滝に落ちることを恐れているわけではない。問題は距離である。魔法源泉との距離を考えれば、だれでもわかることだ。世界の端っこにあるのは、モーパッサンである。仮にポーラやナント王がいたとしてもニネベという魔法源泉を利用することは不可能だろう。そんな遠距離に魂を飛ばした。本当に戻れるのか。それを恐れないことはありえない。

「ドリアーヌ、私はそんな相談を受けた覚えはないが?」

 傍で聞いていて。アニエスはおかしかった。なんとなれば、ポーラがマリー対するやり方にそっくりだった。大剣の使い手は、二人を幼いころから見つめ続けてきたのだ。

 ドリアーヌの返し方も、かつてのマリーがポーラに対するやり方にそっくりだから面白い。

「私も、姉上さまに申し上げた覚えはありません」

 ただ、男爵の外見は、アニエスとそれほど年齢が変わらないはずだ。視覚的な違和感はぬぐえない。しかしそれも瘴気をみるための専用の視力を使えば済むはなしだ。それは、人間ならばだれしも備えている。ちょうど、身体に青い血が人間ならば流れているという言い方が当たり前なのと同義だ。

 ただし、昨今の流行は公爵が忌避する女性趣味にみられるように、どうしても視覚的な傾向に走ってしまう。ルイ・ド・モンタニアールがアラス城を訪れると聴いて、その事実をじっさいに報らされたのはごく少数にすぎないが、最初は不快感をことさら表明していたのに、実物を目にしたとたんに態度を変えるものが特に若い者の中に多い。 

 確かにルイは、ポーラとは別の種類の美しさを讃えている。主君の場合は誇っていると表現した方が適当だ。深みは娘とは比較にならないが太后さまもそれに属する、というよりかは、後者が前者に準ずると言った方が適当だ。

 若い方が人口に膾炙しやすい。まさに視覚文化の到来というところだろうか。

 アニエスは嘆く。

 しかしルバイヤートに魔法源泉があるというのは、彼女にとっては初耳だった。このことによって字義通りに夢でしかなかったような計画が実現するかもしれない。

 そのことに思いを寄せたマリーだが、ひとつの疑問が鎌首をもたげた。

「海、広大な海のことですが、航行には何が必要でしょうか?特に天使さまのご命令どおりにことを実行しなければならないとすれば・・・」

 マリーの条件づけは、逆に言えば応えを最初から出しやすくしている。要するにそちらに誘導しているのだろう。

「魔法源泉は海にあるのか?という命題だろう。風向きだけで、あと一か月足らずではルバイヤートに一太刀も当てることはむりだな」

 ドリアーヌがすぐに答えを用意した。

「陸地と同じように海洋にも遍く源泉はあるようです。しかし私の能力は魔法とは関係ないのかもしれません」

「そなたの能力にもっと汎用性が広がれば、戦という概念が根底から覆るかもしれない」

 アニエスが言う。

「ドリアーヌさま、魔法による航行に問題はないのですね、詳細は私は知りませんが」

 海洋における戦いなど中世にあっては、ナント文化圏にあっては、ドレスデン文化圏においても陸戦が主であり、北方におけるイルクーツク人との戦いを例外とすればほぼ皆無だった。彼らはルバイヤート人と微妙に違うが世界の外の存在であって、あくまでも人間同士の戦いとはわけが違うのだ。

 島としては巨大な地域は、ようやく人間界に組み込まれつつあった、主の思し召しによれば、本来は世界に入れてもらえなかった。それが当時の預言者による誤認識で片付けられ、ようやっと主の思し召しに預かったのは、ナント文化圏でいえば王位戦争のころであり、ポーラ一世が王位を狙って戦っていたころのことだ。

リヴァプールがリヴァプールであるゆえんが、国家という妄想はまだ実をつけるどころか、まだ影も形もない。民族というものは土地に纏わる妄想にすぎない。が、たとえ。リヴァプールという西方に位置する島があったところで、その固有名詞を縁にする民がいなけば妄想とさえ言えない。しかし王位戦争時代の教皇は、強引にその島を主の知ろしめす土地だと決めつけたのである。時は巡りめくってポーラが即位するころには妄想としてそれなりのかたちを為すようにはなってきた。ゆえにリヴァプール王に天使さまは、エイラート奪還軍の宣下を行ったはずである。

話がずれたが、西方の島は中世において人間にとって旨味の少ない辺境にすぎなかった。後世におけるナント皇帝、シャルル・モンテスキューやモーツアルト総統のようにわざわざ上陸作戦を企図する価値すらなかったのである。それに、魔法源泉が海に実在するなどと誰も想像すらしなかった。

世界とルバイヤートの間に横たわる海に魔法源泉があるというのだ。

 ドリアーヌはかすかに頬に紅を染めて言った。

「源泉がある限り世界ではないでしょうか?私はどこまでも行ってみたいと思います」

 やれやれという風にマリーは茶を濁す。

「姉上さまみたいなことは言わないの」

 ポーラが憮然とした表情を取る。

「そのことはいい。ドリアーヌ、滝はあったのか、なかったのか?そなたの様子だとなかったようだが?」

「はい、ありませんでした」

「問題は、魔法源泉や航行についてではなく、別にあります」

「というと?」

「エイラート奪還軍なるものが、それらについて全く知識がないにもかかわらず、強行されようとしていることです」

「天使さまから命じられた王や諸侯のうち、それに辿り着いているのは、おそらく我々だけだろう、他に例外があるとすれば・・」

 そのとき絶妙のタイミングで、ルイ・ド・モンタニアールの瘴気を感じたのだ。

「姉上さま、殿下をお呼びしたのですか?」

 マリーは怪訝な顔を隠そうとしない。

 すぐに聖母のような容貌と相対しないといけない。それを思うと憂鬱になる。

 しかし到着としたとしても、男爵の到来のときのような儀式めいた門番の口上はない。だから、ポーラが直接に出向かねばならない。

 姉の動きを察した妹は白い顔をかすかに紅を讃えた。

「何を、お考えなのです?姉上さま?」

「そなたの思うとおりだ、賢い妹よ」

「芝居をやっている場合ではない。モンタニアールがこの城にいることはごく少数の内密事項なのだ。そなたがわからないはずがなかろう」

 そうだ。門番が事実を知るはずがない。

 しかしルイは気を利かせて、魔法を使ったようだ。激しい瘴気の出し入れをみなが感じ取った。

「アミアンで謁見した殿下ですね」とは、ドリアーヌ。

「これほど瘴気を抑えて位相の魔法を使えるとは、さすがだな」

 これはポーラである。

 彼女の言葉が終わるか、終わらないか、その中途でルイが姿を見せた。

「閣下、お召しにより参上いたしました。ルイ・ド、モンタニアールにございます。瘴気の密度が高すぎる戦場で使うのは無理です。この城でもかなり厳しいところでしょう」

「良いところにやってきた、ルイ、彼女とは初めてではないな。ドリアーヌ・ド、タンヴィル、我が妹だ」

 ポーラはルイの視線が気になった。

つい「殿下」と呼んでしまった。

「単刀直入にお尋ねしましょう、どう見えますか?」

 ポーラは、自らの顔をルイに近づけた。

 マリーは気が変になりそうだったが、理性を総動員して普段の自分を演出しにかかる。

 ルイは、ポーラの企図を察したのか、事実をそのまま口にした。

「美しく光る少女がおられます。サンジュスト伯にそっくりです」

 ポーラにだけ聴こえるようにメッセージが送信されたのである。

 ブリュメールのミサの後が怖くてたまらなくなった。エイラート奪還軍に参加する前に、今夜を無事に過ごせるだろうか。それにしても霊が見える、見えないには如何なる理由が隠されているのであろうか。少なくとも親密は関係なさそうである。魔法能力とも違うことは、あのマリーが感知できないことからも明確だ。ルイとのメッセージの受送信は危険だ。マリーが気づかないはずがないのだ。具体的な中身までは摑ませないことは可能だが、それと知られるだけで要らぬ嫌疑をかける。

とにかく話を本筋に戻すことが肝要だ。それがきっと妹を正気に戻すことになる。少なくともそう信じたい。

「とにかく、ドリアーヌにはアラス城にいてもらう。太妃さまがおられれば大丈夫だ。本来ならばモーパッサンに来させるつもりだったが…」

「母上さまが納得されたでしょうか?」

「仮定の話はしてもしょうがない。それにアラスからでも十分にドリアーヌは行動できるとわかったのだから、それ以上は考える必要はない。それよりもニネベの源泉のことだ。とにかくそれを奪取することが第一目標になりそうだ」

アニエスが言った。

「いったい、誰から奪うのですか?ルバイヤートには人間はいないというお話でしたが」

「…」

思わずポーラは言い淀む。

「モンスターが源泉を守るのか?。そういえば、彼奴等については何かわかったのか?」

「ですから、彼らは瘴気を発します」

「それをどうして最初に言わない?それが事実ならば対処の方法はある。しかし彼らとはどんな存在なのだ?」

「私の正体を看破されることを恐れるあまり、行動が慎重になり過ぎました。たしかなことは目が二つあって、頭が一つあって、腕、足が、それぞれ二つづつ…」

「で、胴体が三つあるのか、聞きしに及ぶひどい化け物だな」

「姉上さま?」

蚊の鳴くような声だがそれとは裏腹に衝撃力に満ちていた。きっとこれで多少は落ち着いてくれるだろう。

「それは人間のようだ。しかし賤民のように赤い血が体内を巡っているとも考えられるが、瘴気の点が気になる。気になることはそれだけではない。そなたのことだが、魂だけになると何が見方に変化は起きるのか?人間は眼でものを見ているが、魂にはそれがないだろう?違って見えてもおかしくない」

「姉上さま、それは主へのお疑いになりませんか?」とマリー

 ポーラは全く意に介さない。

「聖伝には、そもそも肉体から魂が抜け出るなどと一言も書いていない」

「そもそも、私の肉体には眼がありませんが、男爵の目を借りれば、それが肉眼であると仮定すれば、かなり違いはあるような気はします。有り体に言って生物と非生物がくっきりと分かれます」

「人や竜は見えるが、城は見えぬと?」

「いえ、城は生物です。主がお創りになろうと、人が作ろうと何らかの構築物に魂というものは宿るようです」

マリーが口を開いた。

「ならば、そなたはアラス城と会話ができるのか?姉上でも仰らそうにないことだが?」

「いえ精神らしきものが存在しますが、ほとんどコミュニケションは不可能です、わかるのはあることだけです」

「で、ルバイヤートとの交信は試みたのか?主の創造物ではない彼奴等にも精神は宿るのか?」

「危険を感じました」

ポーラはここまでだまっているルイの視線が気になった。

「ルイ、陛下はどこまで知っておられるのか?」

ややあって硬い口を開いた。

「私たちはそこまで摑んでおりません。ただ、金の価値を理解し、交易が可能ならばそれ以上を追求する必要を感じなかったまでのことです。しかし納得することがあります。ゆえに兄が…いえ…」

「どうした?」

「かつて私たちカペー家がナルヴォンヌだけに住んでいたころ、私たちは外にモンスターが徘徊していたと考えていたと思われるのです」

アニエスが疑問を提供する。

「世界は主が恩恵を遍く。これは定理です」

「少年のころ旧い書庫を漁っていたところ興味深い文章を見つけました。先祖が書いたと思しきエッセイのようなものですが、どれも古いケントゥリア語で大変に読みにくいものですが・・・・・パリの蛮人たちを今年こそ放伐する、という内容でした。パリは我が国土ですが、当時はパリを手に入れたいと書き記すほどだったのでしょう」

 ポーラは、パリという地名にかすかに眉をひそめたが、ルイの手前、すぐに表情を元に戻す。

「ロベスビエールだけに住んでいた先祖も同じことを考えていたかもしれない。が、それをルバイヤートもまた同様だと言うのか?」

「なりません、閣下、主のご意向を何と心得ますか?どこにでも主の目は光っております」

「アニエス、私はこれから自分が戦おうとする相手のことを知らねばならん。それだけだ。それが主の御心に反するのか?」

 主君の一喝もアニエスという壁には全く傷をつけられない。それが何処かの誰かを彷彿とさせてポーラは憮然となった。ルイに向かって言葉を続ける。つい後を引いて口調が乱暴になってしまう。

「しかし、カペー、カペーとタブーを連発されるとな」

「本当を見ないのは我が家が盲目であることを意味します。我々はどうなろうとも、カペー家です。モンタニアールなどと大層な名前を戴いたところで本質は変わりようがありません。たとえ発祥の地に賤民を住まわせて不浄の土地と為そうと・・・」

ポーラは目を剥いた。

「あの噂は本当だったのか…」

マリーの殊更青い目が光った。

「殿下の考えは陛下も共有なさっていると思ってよろしいのですか?」

「兄には兄の考えがあるようです」

「ごまかさないでもらいたい。殿下のお言葉によって我々はモンタニアールについて誤解しかねない。そういう種を巻かれたのではないですか?それによって油断を誘うと…」

「マリー、エイラート奪還を我々は目の前にしているのだぞ」

「姉上さまは、牙を抜かれたのですか?モンタニアールを信頼なさるのですか?一体、何のために私たちは膨大な損害を乗り越えて・・・・」

 マリーは自分の発言に虚しさを感じた。そして、自分の言葉にポーラが誰を思い出すのかわからないはずがなかった。

 外を臨めばすでにオレンジ色の光が余計に滞留しはじめている。これが朝なれば、より良きその日の青天を予想できるのだが、夕なればそういうわけにはいかない。

 ポーラはその場の空気を何とかしたいと彼女なりに考えたのか口を開いた。

「黄昏にしては明るすぎるな、よりよい夜を占うものならばよいのだが・・・」

 


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