55・ストーカー捕獲作戦
月美の学友である佐々木茜に付き纏っているストーカー犯を捕獲するために、秘密結社異能者会が行動を開始した。
わざわざ異能者会が件のストーカーに関わろうと決めたのは、ストーカー犯が異能者である可能性が高まったからである。
異能者会の目的は二つであった。
未確認な異能者の確認と、異能者同士のいざこざの解決だ。
変態の異能者が、異能者の女子高生に対してのストーカー行為を行っている可能性が高い。
それを、辞めさせることにある。
件のストーカーを確保。
これが当面の目標となった。
しかし、件のストーカー犯は警察の職務質問から巧みにもあっさりと逃れているといった実績がある。
それも、走って逃げている。
なんともシンプルな手段でだ。
数人の警察官に前後を挟まれていても逃げ切っているところからして、何らかの超能力を利用しての逃走と予想されていた。
どのような超能力を有しているかは分からないが、兎に角ストーカー犯との接触から試みることになった。
まずは穏便に話し合いを望んでいるのだ。
ストーキングを繰り返しているが、ターゲットの茜には指一本触れていないことから、ストーカー犯が完全なる悪人と考えられなかったからである。
話し合いのよちがあると思えた。
作戦を立てるは異能者会のリーダーでブレーン的存在、三日月堂。
彼が立てた作戦の内容は、超能力『模倣女体化』を有する陰徳時の跡取り息子である三国武氏を囮に使っての接触だった。
三国武氏に模倣女体化を使って佐々木茜に化けてもらい、ストーカーを特定の場所に誘導するといった作戦内容である。
作戦の結構は次の日からである。
早々に実行されることになった。
ストーカー犯は茜の通学時を狙ってストーキングしてくる。
行き帰り関係なしにだ。
ほぼほぼ毎日である。
怯えて悩んでいる少女の思いを汲んで、作戦は次の日の朝から直ぐに行われることになったのだ。
身代わりを務める三国武氏は乗り気ではなかったが、朝富士氏に脅されるような勢いで押し切られ、しぶしぶ承諾した。
ただし、暴力的展開に進んださいには一切の協力を断るとのことであった。
お坊さんは、暴力が苦手のようだ。
職業柄当然かも知れない。
朝から決行の作戦には、学生である龍一たちは参加できなかった。
異能者会の大人たち曰く、「学生の本文は勉学である」だそうな。
学校を休んでまで異能者会の活動に参加することを禁じられた。
まあ、当然の判断だと龍一と月美は納得している。
そして、朝から作戦が実行された。
被害者である佐々木茜は、まだストーカーが現れていないのを確認したうえで模倣女体化した三国武氏とすり替わった。
本物の茜は花巻が運転するワゴン車に乗り込み、素度夢女子校まで送られた。
女の子と花巻を二人っきりにするのは不味いだろうと、秋穂も車内に同行している。
偽物である三国武が代わりに電車に乗り込み普通どおりに通学することになった。
通学する三国武氏を密かに護衛するのは、仕事を休んだ三日月堂と朝富士に加えて、十勝四姉妹の春菜と冬樹の四人が投入された。
千田は本部で連絡役として残り、鯨波は喫茶店キャッツアイの営業があるからとのことで欠席となった。
鯨波が勤める喫茶店キャッツアイは、モーニングサービスで朝からサラリーマンたちのお客さんにより、ごった返す。
だから休めないとのことである。
お客様を大切にしているらしい。
だが、お客さんの大半が、看板娘の春菜と冬樹を目当てで来店してくる。
禿げでマッチョな鯨波が一人残っても喜びはしないだろう。
寧ろ、ハズレ日だ。
そして、十勝四姉妹の次女である夏子も警察の仕事を休めないとのことで欠席であった。
流石は公務員だ。ほいほいと有給すら使えないらしい。
カヲルに関しては連絡が取れなかったとのことで無視された。
ちなみに三国武が茜に化けるさいに必要となった素度夢女子の制服は、昨晩の内に花巻がブルセラショップで購入して来た物である。
どうやら花巻は、普段からちょくちょくと、そういう如何わしい店に出入りしているらしい。
女子校の制服を難無く入手してきたのである。
そんなこんなで作戦は龍一が月美といつもどおりのほのぼのとした通学を行っている時間帯に決行されていた。
龍一と月美に出来ることは、作戦の成功を祈るだけである。




